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追放剣士とお気楽魔王~自由な奴らが世界を変える~  作者: 幸・彦
第三章 メグラン王国騒乱記
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襲撃に至った事情

逆光になっていたとは言え、襲撃者は別に顔を隠していた訳でもない。

ルクトの呼びかけに素直に応じた点から鑑みても、最初から本気で戦う

気がなかったのは明らかだった。

しかし、この場の緊張が払拭されたというわけではない。


しばしの沈黙ののち。


「まあ立ち話も何だし、とりあえず座ろうよ。」


気楽な口調でそう言い放ったのは、やっぱりガンダルクだった。

答えない襲撃者たちの顔をゆっくり見回し、最後にひと言付け足す。


「ね?」


明らかに示威を含んだこの言葉に、トッピナーに突き飛ばされた女性が

ビクッと肩をすくめる。明らかに、ガンダルクの声に気圧されていた。


「あーあー、お酒が…」


嘆きの言葉を呟きながら、さっさとトッピナーが腰を下ろす。続いて、

ルクトもゆっくりその場に座った。ある意味豪胆と言えるその行動に、

襲撃者たちも順に腰を下ろす。最後に座ったのは、ガンダルクだった。


「おっと。」


焚火の火が心許なくなっている事に気づいたルクトが、傍らの枝を拾い

ポンと放り込む。


場に満ちていた殺気が、ようやく少し解けたような感じだった。


================================


しかし、和気あいあいには程遠い。

「気まずい」なる形容が、これほど相応しい局面も大概に珍しい。

襲撃者たちは皆、何を口にすべきか決めかねている雰囲気だった。


「ええーっと、それで。」


しかし、やはりガンダルクは遠慮がなかった。


「見た感じ、人間は一人も所属していないパーティーみたいね。」

「……」

「そこのデロウゼさん。」


名指しされた先ほどの女性が、再びビクッと肩をすくませる。


「多分あなたが最年長でしょ。」

「…ええ。」


低い声で答えたその女性は、そっとガンダルクに視線を向けて続ける。


「デロウゼなんて古い種族名、よくご存知ね。あなたも魔人なの?」

「まあそうとも言えるし、違うとも言える。どっちつかずの存在よ。」


「デロウゼ」というのは、どうやら魔人の種族名だったらしい。

初耳のルクトとトッピナーが、興味深げな視線を彼女に向ける。一方、

彼女以外の者たちは何も話そうとはしなかった。どうやらガンダルクの

指摘どおり、デロウゼの女性が本当にこのパーティーの最年長らしい。


「…あたしの名は、スランナグ。」


ガンダルクから視線を外し、女性は誰にともなくそう名乗った。


「いきなり襲った事は謝罪する。」

「…すまん。」

「申し訳ない。」

「ごめんね。」


スランナグの謝罪を皮切りに、他の3人も短くそう述べる。


「ちゃんと謝れるのは立派な事よ。うん、そうこなくっちゃね!!」


あくまでも明るく気楽なガンダルクの言葉で、ようやく場は和んだ。


================================


「それで。」


ガンダルクに代わり、今度はルクトが彼らに質問の言葉を投げる。


「あんまり記憶は定かでないけど、確かあんたたち4人はノランの街の

冒険者ギルドにいたよな?」

「…ああ。」


ルクトに襲い掛かった2人のうち、若い方の男性の魔人が短く答えた。


「俺たちを襲ったのは外見が人間だからか、それともジリヌス王国から

来たからか。もしくは両方か?」


その言葉に、4人はハッとルクトに視線を向ける。


「外見がって…」


ガンダルクに襲い掛かった女性は、明らかにうろたえていた。


「もしかして、人間じゃないの?」

「ああ。こう見えて、純粋な人間は一人もいない。…で?」


短い沈黙ののち。


「…確かに君の言うとおりだ。」


答えたのは若い男性の魔人だった。


「今この時期に、ジリヌス王国からこちらに来る人間なんてどう見ても

怪しい。しかも話している内容も、明らかに不穏だったからだよ。」

「そんなに変な事言ってたっけ?」

「お偉いさんに会うとか何とか…」

「あ、それ?」


思い当たったらしいガンダルクが、再びスランナグに問いかける。


「ジリヌスの王が出したあの勅令の内容は、むろん知ってるよね?」

「言うまでもない。こちらでも大変な騒ぎになっていたよ。」

「だから、その逆張りをしてそうなあたしたちが怪しかった…と?」

「……」

「いや、それだけじゃこんな事する動機としては弱いだろう。確かに

襲い方も得物も殺傷が目的とは思えない感じだったけど、襲った事は

紛れもない事実なんだからな。」

「ああ。確かにそれだけじゃない。ジリヌスから来た事の意味は。」


吹っ切れたかのように、スランナグの口調は力強くなっていた。


「どうやら、あんまり隠し事とかは通用しない人たちみたいだからね。

失礼をした以上、話せる限りの事は話すよ。…いいねあんたたち?」

「…ああ。」

「うん。」

「承知した。」


どうやら、意思決定はスランナグが原則的にまとめているらしい。

何となく察したルクトたちは、あらためて彼女に視線を向けた。


================================


「メリゼ王女を知ってるかい?」

「一応、名前だけは。」

「この国の王家に生まれた、唯一の女性でしたっけ?」

「そう。」


答えたルクトとトッピナーに小さく頷き、スランナグは淡々と続ける。


「実はここ数日の間に、その王女が狙われているという噂が流れてる。

言うまでもなく、ジリヌスの勅令が出された直後って時期だよ。混乱に

乗じて、王女を拉致するなんて話もチラホラ漏れ聞こえてきてる。」

「あらま、物騒な話ね。」

「だけど何のために?」

「確実な事は何も言えない。」


ルクトの問いかけに、若い男性の魔人が苦々しげに答えた。


「メリゼ王女が重要な存在なのは、この国の民でなくとも分かる話だ。

もし今のこの状況下で、王女が行方不明になったり他国の手に落ちたり

あるいは殺されたりすれば、この国は間違いなく大混乱に陥るだろう。

…それで得をするのは、間違いなく北のジリヌス王国だ。」

「あらま、ますます物騒な話…。」

「なるほど。で、俺たちがジリヌスから来た刺客か何かと思ったと。」

「……正直、今もその疑いが完全に晴れてるわけじゃない。」


そこで初めて声を上げたのは、襲撃の際にルクトと対峙したもう一方の

男性の魔人だった。


「自分たちは人間ではないと名乗られても、信じるには弱い。そこは、

どうか察して欲しい。」


一瞬の間を置き。


「だってさ、アミリアス。」

『まあ無理もないですねえ。』

「「「「!?」」」」


突然そんな言葉を発した傍らの二番刀に、4人は度肝を抜かれた。

揃って口を開けているその表情が、どこか親しみさえも感じさせる。



ルクトたちは、ただ苦笑していた。

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