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魔女恋  作者: 葛葉
9/14

08.現在06

本日3話目の更新です。

説明が長いなーという方は前半読み飛ばしをお願いします。

 


 食べ終わり、いよいよ彼の家に案内する。

 アレクのおうち=侯爵家は、街の端にある。

 と言うとイメージが微妙か。


 ヌヴェール家は隣国との国境を守る辺境伯であるため、質実剛健を体現した城が侯爵家の邸宅である。

 背後に峻嶮な山をいただき、城自体も小高い丘をベースにしてそびえるように建っている。


 普段アレクは騎士団の寮にいるとのことだったが、今回は諸事情により実家に送り届けることにした。



 この辺りの地理を簡単に言うと、北側から山、城、街、街道などを含む平野、黒の魔女の森といった順に東の隣国と接している。

 そしてその地形を利用して我が国への侵略を阻んでいる。


 魔女の森は広大で、南の端は我が国の国境に接する。この森の奥深さ以外の侵入を許さない様は先程私も認識を新たにしたわけだが、城や街の守りも堅い。

 背後の山の一部かも見まごうばかりの急峻な城壁に、そこから連なる街を囲む壁。

 まさにこれぞ城郭都市と言ったお手本のようだ。


 そのため隣国は攻め込むためには平野から一択なのだが、わかっていて攻め込まれる程ボンクラではない。

 関所は騎士団の詰所も置かれ、また、いざという時には街の最南端にある騎士団の本部から人員が駆けつける手筈になっている。


 そこまでしておいて敢えて街道を街の中に取り込まないのは、それでも安全性を上げるためだ。

 隣国からの難民、あるいは商人を狙った野盗は結構な数がいて、割合高頻度で訪れるらしい。

 アレクの仕事はほとんどその対応だと以前言っていた。



 すなわち家を教えるだけならば、どうしても目に入る城を指差して「アレ」と言えばいいだけだ。

 今回着いて行くのはアレクのお礼がしたいという希望と、先代のお薬係も城に居るだろうからできれば会おうという私の思惑だ。

 それにしても…


「アナイス、どうした?」


 目を眇めて城を見上げる私に彼が声をかける。


「うん…。お城まで行くのも大変だなって思って。」


 そう、まだ城は視界にその全体像が入っている。

 直線距離としても遠いし、小高い丘の上にあるからひたすら登り坂だし、それに角度的な問題と攻め込まれる事を想定した造りから道は九十九折になっている。

 その為食事をして英気を養ってみたものの、ため息が出そうだ。


「そうだな…抱いて行こうか?」


 いたずらっぽく笑いながら問いかけられる。

 少しあの日の朝の彼の笑顔に重なって、ドキドキしてきた。赤面が止まらない。

 ローブを深く被ると、なおも下から覗き込もうとしてくる。

 悪趣味だ。


「アナイス」


「なに?」


 ややつっけんどんに答えると、もしかして以前は知っていたのかもしれないが教えてくれないだろうか、と前置きがあったのでチラと見上げる。


「そのローブはいつも羽織ってなきゃならないのか?

 その、これから気温が上がる中坂を登るには暑いんじゃないかと思うのだが。」


 たしかに。


「雨よけ風よけ虫除けの(まじな)いがかかってて、あとここまで真っ黒の髪は珍しいから目立たないように被ってる。」


 それに彼には言わないが、薬を売りに来た時に変なのに目をつけられないように影を薄くするような(まじな)いもだ。


「それならスカーフとかでの代用は?あんな風に頭に巻けば、全部は隠せなくても印象は変わるんじゃない?」


 視線の先をたどれば色とりどりのスカーフやリボン、たくさんの布製品の店先の女性が、なるほどオシャレに頭に巻いているのが見えた。


「いや?」


「嫌じゃない、けど…私には出来そうにない。」


 手先は器用な方だと思っているけど、今までやろうとしたことすらないから、何がどうなっているのかわからないものなんで無理だ。


 断るとアレクは強引に私の手を引いて店にズンズン突き進む。

 すると女の人もこちらに気付いて、


「若様!そちらの方にプレゼントですか?」


 なんて声をかけられた。

 何とかしらばっくれる方法を探しているうちに2人はまるで旧知の仲のように(いや、ホントはそうなんだけど)ポンポンと会話を弾ませていた。


「スカーフをそのように巻きたいんだが『やり方がわからない』と遠慮される。」


「あら〜買って頂けるならサービスで巻き方もお教えしますよ。」


 なんて話が進んでいる。


 道で何とか足を踏ん張るも、頭にふわりとスカーフを掛けられながら


「アナイス、きっと似合う。」


 と笑顔で言われると、私はチョロかった。


 彼が選んだスカーフを手に店先の椅子に座らされ、鏡を持たされる。巻き方を教えてもらい、その後復習に自分で巻くところを見てもらい…としてやっとうまく巻けたところで終わった。


 ローブは荷物に押し込んで道に出るも、アレクの姿が見えない。

 先に行った?まさか…と、訝しみながらちょっと上に向かって歩こうとしたところ、


「待って!置いてかないで!」


 と聞こえた。

 振り向くとアレクはいない。

 あれ?


「アナイス!」


 上から声が聞こえて見上げると、馬上から声をかけられたていた。

 うわぁ、白馬に乗った王子様だぁ。

 現実なはずなのに身の内に溢れてくる非現実感。

 驚きの声をあげそこねた。



次回アレクのお宅訪問…というところで、これであらかた書いたものを放出してしまいますた。

あとはちみちみ書いては更新になるのでペースは格段に落ちます。

今月中に終わればいいなぁ…

ここまで読んでいただきありがとうございました。ご評価・ブクマ登録も嬉しいです。

がんばりますのでこれからもよろしくお願いします。


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