07.現在05
本日更新2話目です。
よろしくお願いします。
そのまままんじりともせず夜明けを迎えた。
アレクだけ。
私はその態勢で熟睡していたみたいだ。割と太陽が明らかに昇ってから遠慮がちに起こされた。
うわぁ…森からいつ出られるかもわからないのに寝過ごした。夜明けと同時に出発するつもりだったのに。
でも一昨夜は身体を酷使され、疲れてたのに衝撃的な展開でその怠さを克服したが、そのまま心労を抱えて普段は苦労しない道をガンガン苦労しまくって歩き続けたんだもん。仕方ないよね。
とはさすがに言えなかったので粛々と準備をして可及的速やかに出発した。
残りの半分の道は、前半でしっかりと学習したのでちゃんと油断せずに密着して歩いた。かなり歩きにくかったけど、昼過ぎにはなんとか何者にも襲われずに街に着いた。
うん、イベントなければ初夏の爽やかな散歩に…思えなくもない…ような気もしないでもない…かな。
『じゃあ』と別れようとしたが、アレクはなんだかモジモジしていて、やっと何事か聞き出すとお家がどこかわからないと言う。
それはそうか。
家はすぐにわかるだろうから教えるというと、せっかくここまで来たしお礼をさせてくれと言われた。
「いや、ホントにいいから。気にしないで。」
そう言うも、これだけ大変な道のりを歩かせたのだからそんな訳にはいかない。お礼と言うと大袈裟に受け取られるが、せめて休んでほしい。などと必死に引き止められた。
まぁホントに大変だったし、確かにここから1人で帰るのは身体的には2人よりも楽だろうが、精神的には…と思い了承した。
それに一応先代のお薬係の彼にも、会えたら私から事情を説明してあげた方がいい気もしてきた。
とりあえず朝も昼も食べていないので、昼食を摂ることにした。
どの店に入ろうかと街を歩く。
お腹空いたからいっぱい食べたい、でも疲れたから重すぎるものはちょっと…と会話しながら、いい匂いが漂っている食堂に入った。中のゆったりとした座り心地の良いソファ席に通される。
注文をし、水を飲んでやっと人心地つく。
マジ命の水。
すると周りの視線がチラチラ気になり始めた。
アレクは今は旅装のような、実用性を重視した、少し森で汚れた服を着ているが、侯爵家のご子息だとバレているのだろうか?それともイケメン目立つのだろうか?
彼のキラキラと光を集めて作ったような金の髪、意志の強さを感じる眉、黄金比を体現した目・鼻・口の配置、立派な上背に筋肉質な身体。
アレクはさらされる視線をものともせずに私にお代わりの水を注いだり、メニューを見せたりしている。
その節張った男らしい手に思わず見惚れていると、注文を取りにきた店員さんもちょっとドキドキしている感じで、うわずった声で注文を繰り返して帰っていった。
イケメンは男までも虜にするのか!
と刮目して成り行きを見ようと気合いを入れながら食事をモリモリ食べる。
途中でアレクは「そっちはどんな味の料理?」「こっちも美味しいよ。はい、どうぞ。」「髪が料理につきそう。寄せるよ。」とかごちゃごちゃ言っていた。
神経太いなーと半眼で見やる。
「魔女殿、何か?」
と耳元で囁かれ、反射的にこちらも声を潜めて「なんで小声?」と聞くと。
「『魔女』って街で呼んでいいの?」
とまた耳元に返ってきた。
そっか、気遣い有難い。今あなたのせいで注目されてるしね。
「『アナイス』って呼んで。私の名前。」
「アナイス」
思わずきゅうんとした。
なんとなく、もう一昨日のことは遠い過去や夢のような気がしてたから。
また呼ばれた名前、もう何年も呼ばれてなかった名前。
うん、幸せだなぁって思った。
にこにこしていると、また口にアレクの料理を入れられた。
ちょうど食後の飲み物を持ってきたさっきの店員さんが来たので、咀嚼しながらさりげなくガン見する。
「こっち向いて。溢れるよ。」
と言うアレクこそあっち向いてあげればいいのに、と思って半眼で見ていたら
「……ですね。うらやましいです。」
と赤面しながら言われた。
おっと前半聞き逃した。でもさすがに初対面でうらやましいは…なんか不穏?な感じがして目で問うと、さらに赤面してそそくさと去っていった。




