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  作者: 梶島
『Fairy Tale』
9/19

前進×停滞

「怒られそうなことをわざわざ言わなくてもいいと思うけど」


……ごもっとも。

だけどもう少し言葉にオブラートを被せて伝えてくれてもいい気がする。

いや、バクにそんなものを望んじゃダメか……。


「ま、言うのは勝手。それを聞いて怒るのも怒らないのも俺の勝手。別に俺は君の親でも先生でもないしね、好きにすれば」


相変わらず素直じゃなくてまどろっこしい物言いだが、聞いてくれるつもりらしい。

それならば、と息をひとつ飲んでから、あたしは思いきって口を開く。

できるだけはっきりと、しっかりと、彼にあたしの気持ちが伝わるように。


「やっぱり、あたしはさ。なんとかして貘をやめて、人間に戻れる方法を探したい」


それだけ言うと、バクはわざとらしく鼻で笑った。

19年間プラス貘としての4年間で捻じくれた彼の性格と価値観は、そう簡単に揺らがないようだ。


「探すって、どうやって」

「う……考えてないけど。その探す方法を、まずは探すの」

「キリのない話だね」


完全に呆れられてしまった、けれど。

その程度でめげるあたしじゃない。

バクがあたしの発言に呆れてねちねち言ってくることなんていつものことなんだから。


「でも、特に目標も生きがいもなくただ淡々と悪夢を食べて過ごすよりは……なにか、目的とするものがあったほうがいいって思うんだよ。何事も目標がないとダラダラしちゃうでしょ?」

「目標、ねぇ……」


ただ惰性のまま、未来に絶望して毎日を過ごすよりは……僅かな希望を抱きながらのほうが、きっといい。

それを目標として据えることで、生きる活力も沸いてくるというわけ。

しかしバクはあまり納得がいっていないよう、というかそれほど興味なさげな様子。

そんな反応をされることぐらい、もちろん予想していた。


「バクが言ってたみたいに、その目標がだめになったときのショックってのはあると思うよ。でも、このままじゃ絶対ずるずるネガティブになって悪化するだけだと思うの」

「ふぅん?」

「だから、まずは目標に向かって頑張るの。そのほうがきっと、何もないよりは前向きに生きていけると思う」


――バクだって、貘になる前は色々目標とか据えたりしなかった?

そう尋ねようとして、やめた。

バクに、『人間だった頃』の話はご法度だから。


大概、目標を達成した場合にはご褒美を用意しておくもの。

あたし達にとっては、目標もそのご褒美も、『希望』なのだ。

希望を求めて、希望を得る。

前向きなサイクルを自ら組み立てて、それに乗っかっていくことが、一番精神的には健康に過ごしていけると思う。


「……話はそれで終わり?」

「う? うん、一応」


普段となんら変わらない口調でバクが尋ねてくる。

怒っているとも、まさか喜んでいるとも違う、ほんとにいつも通りの声。

 

「いくつか引っかかることがあるんだけど。いや、いくつも」

「な……何」


大人しく聞いてくれていたのは、単純にツッコミが追い付かなかっただけらしい。

一体どれだけ突かれるのか、と身構えながらあたしは彼の言葉を待った。


「生きがいとか言うけど、俺たちが『既に死んでる可能性』があるってこと忘れてない?」

「そ、それはあくまで可能性のひとつでしょ。ほんとに死んじゃってるかなんて誰にも分からないじゃない」

「じゃあ俺たちの体は今、意識を切り離された状態でどうなってると思う?」


どうやらバクは、出会って半年は経っているはずのあたしよりも、ぽっと出の金髪の彼のほうを信じてしまうらしい。

あの人のほうが、夢の世界で暮らしている時間は長いわけだし、その気持ちは分からない事もないけど……。

なんでもかんでも悲しいほうにばかり考えが向かってしまうのは、決して長所とは呼べない気がする。


「どうなってる、って……植物状態とかでギリギリ生きてるかもしれないじゃん」

「そんな状態ならいっそ殺してくれって思うけどな、俺は。仮に意識が戻っても、衰弱した体と、時代から切り離された頭をどうにかするのに暫くかかるよ」


……死んだらどうにもならないって。

とも、言えなかった。

死んでるのか生きてるのかも分からない上に、死んでいる説に傾きかけているバクに言ったって無駄だ。

 

「さらに言おうか。目標に据えるにしちゃ漠然としすぎてる。手探りにもほどがあるよ。学校の校庭で砂金探すより無謀」

「う、うぅ……」


こてんぱんにのめされた。

確かに漠然としてるし、バクには否定されるだろうなと思ったけど……無謀と言われてしまえばぐうの音も出ない。

でも……今は漠然としたものしかないじゃない。

それを『はっきりさせていくこと』が最初の目標じゃ、だめなの?

何でもいいから前を向ける理由が欲しいだけなのに……。


あまりにもしょげかえったあたしを見て流石に心が痛んだのか、バクはちょっとだけ優しい声でこう続ける。


「亜紀が前を向いていきたいって気持ちはわかるよ。でも、それが必ずしもプラスにならないんじゃないかって俺は思うわけ」

「どういうこと?」

「何度も言ってるよ。希望を支えにしてきた人は、それが砕けた時のダメージが大きすぎる。支えを失うからね。希望なんて抱かない方が、受け入れられるんだ」


……悲しい考え方だ。

こればかりはどうしても分かりあえないのかもしれない。

前を向きたいあたしと、常に後ろを気にしながらでないとそこにいられないバク。

どっちが本当に正しいかなんてわからない。

だけど、あたしはあたしの信じる道を、彼にも分かって欲しかった。


「砕けても、ぼろぼろになっても、命……心があれば、次立ち上がってまた前を向けるよ」

「本当にそうかな」

「ひとりじゃ、難しいかもしれない。でも……あたしはひとりじゃないもん」


バクが一緒に居てくれることで、あたしは随分精神的に助けられている。

こんな真っ暗で、悪夢を渡り歩かなければいけない世界でたった一人だなんて気が狂いそうだ。

だけどもいつもバクが傍に居てくれたから、なんとかなってるんだと思う。

素直じゃないけど、なんだかんだで優しくて、いつも助けてくれる――バクがいるから。


「ひとりじゃなくてふたりって、そういうことだと思うの」

「つまり亜紀は、目標にしていた希望を失って、支えがなくなったとき……俺に、支えを望んでるってわけ」


もう『はっきりと伝えよう』という気持ちが折れて、弱々しく伝えたあたしに対して、バクはいつも通りの淡々とした口調で聞き返してきた。

残酷なことを言っている自覚はある。

バクは、あたしが来るまでの4年間、孤独だったんだから。

それだけの間孤独と恐怖にたった一人で立ち向かってきたバクが色んな事に絶望してしまいたくなる気持ちもわかる。

貘になった最初からひとりじゃなくて、バクが傍に居てくれたあたしとは根本的に違う。


でも、それでも……。

 

「あたしだって、あたしに出来る範囲でならバクのことを支えたいって思ってるよ……」


思い上がりも甚だしい発言かもしれない。

あたしなんかが支える必要なんてないくらい、バクが強いってことも知ってる。

だけど、そんな僅かな弱みをもし見せてくれるというのなら、あたしは彼を支えてあげたいと思っている。

その気持ちは嘘じゃない。

貘としての痛みを分かりあえるのがお互いしかいないのなら、その痛みごと支え合っていけばいいんじゃないかと思うから。


ところがバクは、珍しく少し声に出してくすくすと笑う。

遂に呆れきって笑い出したのか、と思ったら、予想外にも穏やかな表情でちらりと私を見ながら言うのだった。


「まあ、現時点で確実なのは、俺と亜紀が一蓮托生ってことくらいか……」


――バクも、一応はあたしのことをきちんと仲間として認識してくれている。

いつも助けてくれるし、気にかけてくれていても、時折不安になることはあった。

あたしが一方的に信頼しているだけで、バクからはそうじゃないんじゃないかって。

でも、今の彼の顔を見ると、そういった不安はなりを潜めていく。


「しかしこれだけ一緒にいて、それでもよく俺に支えて貰おうだなんて思えたもんだね」

「……どういう意味?」

「そのまんま。よく俺なんかに頼る気が起きたなってこと」


そう言うと、バクはすっと立ち上がって近場の扉に腰かけた。

彼にとって、これは雑談するときお決まりの姿勢。

あたしから言わせてもらえばそんな不安定なところのどこがいいのか分からないんだけど、バクにとって扉の上は落ち付くらしい。

しかしいつものようにあたしを見降ろすことなく、どこか目を逸らすように空を見つめたまま。


「生憎頼られるのは慣れてないんだよね。他人に頼る人生送ってたもんで」


そしてその次に語られたのは、予想外にもバクが『人間だった頃の話』だった。

こうして彼の口から先にその話題が出たということは……尋ねても、いいんだろうか。

自分から振っておいて『話したくない』と遮られることもザラだ。


しかし、今のバクなら……聞かせてくれる。

そんな気がした。


「……そう、なの? そのことについて、もっと聞いてもいい?」


その気持ちを、あたしは恐る恐る口に出してみる。

しかしバクはこちらを見もしないまま、無表情でただ黙っていた。


やっぱり、教えてくれないか……。

そう諦めかけた時、ぽつり、と呟きが落とされる。


「周りが当たり前に出来てたことが、出来ないような人間だったんだよ」


――想像もつかない。

あたしの知ってるバクは、いつも冷静で、危ないときですらあたしのことを気にかける余裕もあって、何でもできる、いざというときには頼れる存在だったから。

 

「だから、頼ることはあっても、頼られることは絶対無かった……」


静かな独白は続いていく。

あたしというたった一人のオーディエンスのために語られる、バクが今まで隠していた事の片鱗。


「……ま、ビョージャクだったんだよ。一留もそのせい」

「え、バク……病気なの!?」


肩を竦めながら放たれた発言があまりにも予想外すぎて、あたしは大きな声をあげる。

まさか……あたし、そんな人に今までずっと守られてきたの?

無茶させちゃってたのかな……。


しかしバクはちらとあたしを見ると、無表情のままで淡々とこう告げた。


「『だった』って言ってるでしょ。過去形。今は平気」

「そ、そうなの? どこも悪くないの?」


確かに、貘になったことで体の色んなところは軽くなったし、実際バクは自由自在に飛んだりもしている。

だけど、学校にもまともに行けないほどの病気を抱えてたなんてカミングアウトをされたら……平静じゃいられなかった。

しかしバクはどこかむっとしたように眉根を寄せる。


「平気だってば。……俺の体よりも、君は自分の頭の心配したほうがいいんじゃない?」

「んなっ……!」

「一度で理解してくれれば、よろしい」


せっかく、人が心配してたのに……!

そんな酷いこと言わなくたっていいと思う。

やっぱりバクは意地悪だ……。

馬鹿にするようにそう言ったバクは、今度は声のトーンを落としてこう続ける。


「だから希望とか、将来の夢とか……そんなものの抱き方なんて知らなかった」

「それで、いつも……『最悪のパターン』ばっかり考えるのが癖なの?」

「癖、ってつもりはないけど。亜紀がそう思うのならそうなのかもね」


貘になる前から、常に絶望や不安と隣り合わせの人生を送ってきたのかもしれない。

バクが根本的にネガティブな理由は、やっぱり貘になる前の生き方にあった。

だけど……それがあたしの想像していたものの遥か外側すぎて、どうフォローしたらいいのかわからない。


「人とコミュニケーションもろくに取ってなかったしね。その矢先に『貘』だ。……正直、亜紀ともどう接したらいいのかよく分かってない」

「バク……」


――酷すぎる。


病気を抱えて、きっと沢山沢山苦労しただろうに。

その上にさらに悪夢に苦しめられて、騙されて、『貘』にされてしまっただなんて。


どうしてバクばっかりこんなに辛い思いをしなきゃいけないんだろう――!


あたしはまた眼頭が熱くなるのを感じた。

人間、一度泣いてしまうと暫くは涙腺が緩むものである。

こうして泣けるうちは、あたしは死んだなんて到底信じられない。

 

「……またそうやって泣くし。なんで泣くの?」


呆れた声が降ってきて、そしてそれは間近に。

バクは扉から降りてきて、あたしの顔を覗きこむようにして伺ってくる。


「なんでって……色々っ……」

「俺の話で亜紀が泣いてどうするの……全く」


ほんとだよね。

なんで、辛いのはバクなのにあたしが泣いてるんだか。


それでも彼は、口では呆れたように言うけれど、あたしのことを見捨てたりはしないだろう。

バクは、そういう人だから。


自分が泣いたってどうにもならないことは分かっている。

だけど……申し訳なさとか、バクが抱えてきた痛みが想像以上でびっくりしたこととかで、涙が止まらなかった。

きっと彼はあたしから離れない。

でも、それに甘えてちゃいけないんだ。


「あの、さ。バクは、どうしたいの?」

「また抽象的な……」

「だから、これから。あたしの提案に反対なら、それなら、バクは『どうしていきたい』の?」


バクがあたしの考えを否定する理由は分かった。

それならば、バク自身がどう思っているのかを知る必要があると感じたんだ。


質問に対し、バクは暫く黙っていた。

あたしは少し落ち着いて、真正面に立つ彼を見上げてみる。

やっぱり目は逸らされていて、何か考えているようだった。

 

「どう、って……」


珍しく、迷ったような声。

常に冷静でびしばしなんでも言ってくるバクにしては、珍しすぎるほど珍しい。


しかしほどなくして彼は、感情の読めない瞳を真っ直ぐ向けてきた。


「『どうにもなりたくない』って、アリ?」

「……は?」


思わず素っ頓狂な声で返すあたし。

意味がわからない。


「貘を引き継いだら、俺達は解放されるかもしれないけど、生き返るのか死ぬのかはわからない。さらに、新しい『犠牲者』が出る」


歌うようになめらかな口調で、バクは今のあたし達が置かれた状況をおさらいしていく。

それに何の意味があるのか飲みこみきれないまま、あたしはそれにうんうんと頷いて付いていった。


「幸い、俺達は『ひとりじゃない』。これは亜紀も言ってたことだよね」

「う、うん……それが、どうしたの?」

「ひとりで永遠にこのままなんて気が狂いそうだけど、二人ならなんとかなるんじゃないか、って」


――まさか。

バクが淡々と言ってのけたそれはつまり……貘として耐え続けること、だった。

気が狂うほどの無数の悪夢を、二人で乗り越えて永遠に耐え続ければいいという……なんの進展もない、提案。


あたしはそれを受け入れることができずに、少しだけ声を荒げる。


「な、なんで……方法を探すことすらダメなの?」

「不変、っていうのは一番穏やかで安定してる。闇雲に動くよりは、留まってた方がマシだと思う」


前に進みたいあたしと、留まっていたいバク。

意見は完全に割れている。


「で、でも。こんなの続けてたら絶対段々嫌になってくるよ。確かに変な事件があるよりは何も変わらない方がマシかもしれない、だけど今より酷い状況なんて、あるの?」


あたしが感情のままに向けた言葉の刃は、おそらくきっとバクを傷つけたと思う。

こんなの続けて、嫌になって――そう、バクは既に、一人で四年も耐えていた。

その矢先にあたしという『バトンタッチできる存在』が現れたのに、見ず知らずのあたしのことを想って、躊躇ってくれたんだから。

そのまま別れていれば、あたしは何も変わらない朝を迎えて、そしてバクはまた一人ぼっちの夢の世界に戻っていたことだろう。

バクが最後の最後に選ぼうとした選択は、それだった。

自分の事より、赤の他人であるあたしを優先して。


それ以上何も言えなくて、口を噤んだ。

ほんの少しだけ横たわる沈黙。

しかしそれはすぐにバクによって破られる。


「さっきも言ったように、希望を砕かれて亜紀が傷付いた時、俺じゃきっと……『足りない』」


どこか思いつめたような声だった。

バクが何を言っているのかわからなくて、あたしはただ次の言葉を待つ。


「それに、傷付いた亜紀なんて見てられない……」

「どう、して」


頭の中でぐるぐると回る言葉。

それはきちんとした形にならずに、ただひたすら渦巻いて、ぐちゃぐちゃのままで吐き出されていく。


「なんでそんな、バクっていざってとき人のことばっか考えちゃうの」


こんなときくらい意地悪でいてよ。

いつものバクでいてよ。

どうしていざってときには尻ごみして、他人のことを優先しちゃうわけ?


「もういっぱい苦労したじゃん。これ以上苦しまなくていいよ。なんで、こんな時にまで、あたしのことなんか心配して――っ!」

「亜紀」


名前を呼んで、遮られた。

それから頬に手を添えられて、ようやく……気付く。


「ほんとお願いだから、泣くのやめて」


涙はまたとめどなく溢れてきて、あたしの頬とバクの手を濡らす。

バクの手は暖かくも冷たくもない。

だけどちょっとだけ困ったような顔をした彼は、やっぱりあたしのことを心配してくれているんだろうと思う。


「俺が泣かしたみたいで嫌だから」

「バクだって、泣いていいんだよ? 辛い時は我慢しちゃだめなんだよ。もうバクはいっぱい頑張ったんだから、あたしと、次の人に押し付けてもいいよ……っ!」


貘の素質を持った人の夢に出会える可能性は高くないし、万が一めぐり合えたとしても……引き継げるのは片方だけだ。

その時は、バクが解放されてくれればいい。


あたしは心の底からそう思っていた。

だけどバクはちょっとだけ笑うと、いつものからかうような口調でこう言うのだった。


「目の前でこんだけ泣いてる人がいるのに、泣けるわけないでしょ?」

「意地っぱり……!」

「ってか、亜紀見てるとそんな気失せますから」


そのまま彼の大きな手は、あたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

まるで子供を相手にするような行為だけど、今のあたしは確かにただの非力な子供だから、怒ろうという気にはならない。


「俺は、亜紀が居てくれたらいいよ。亜紀が一緒に居てくれるなら、たぶんこの先も耐えられる」

「そんな……」

「……ごめん、ちょっと頭冷やそう。お互いに」


急にくるりと踵を返すと、そのままバクはふらりとどこかへ歩きだしてしまう。

――どうして?


バクが、わからない。

あたしがいればいいって、何?

なんにもできない、なんの力にもならない、ただの足手まといでしかないあたしに、何ができるの?


「バクっ!」


あたしは彼の名前を精一杯の声で呼んだ。

だけど、足がなぜか竦んでしまって、追いかけることはできない。

なんだかバクの姿が幻みたいなすごく不安定なものに思えて、近寄るのが怖かった。


しかし気が付いた彼は少しだけ振り返ると、あたしに向かってこう告げる。


「明日の夜までちょっと離れとこう。亜紀の気配はわかるから、夜になったらそっち行くよ」

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