プロローグ
たぶん2013か2014らへん(曖昧)
なぜか急に三人称になりますが本当に気にしないでほしいです
「ああ……臭い、のデス」
ふらり、ひらりと。
女は歩く。
真白の肌に振りかかる長い長い髪も真白。
高い位置でひとつに括られたそれは腰にまで届き、また、それによって晒されたうなじも白く、細い。
白い睫毛に縁取られた怜悧な瞳もまた白で、身に纏う装束の黒さがそれらを更に際立たせた。
「『生』の匂い……これは上物の予感デス」
鼻を鳴らして上機嫌になった女は、足取り軽く『どこか』へと向かう。
辺りはひたすらに黒く、ぼやけた黒い霞が空間を満たしていた。
そこに点々と浮かぶ『扉」だけが淡い光と色を放ち、しかしそれ以外はひたすらに黒い。
そんな黒い世界の中で、女の黒い装束は周りに溶け込むようだった。
髪を括っている緋色の髪紐がまるで蝶のように、モノクロの女の頭上で揺れている。
また、腰に提げた長い日本刀の鞘と柄には繊細な金細工が施されており、それだけは色彩を持って漆黒の世界の中で鮮やかに煌めいていた。
「これは正真正銘のお迎えデスねぇ……さて」
歌うように独り言を零す女はひょいと飛びあがると、そのままふわりと浮かんで黒の世界を駆け抜ける。
歩いていたときよりも数倍速いスピードで、黒い靄は切り裂かれていく。
自らが起こした風に目を細めながら、女はぼそりと呟くのだった。
「誰かに盗られてしまう前に、貰ってあげないと、デス」




