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海のかほり~謎かけ言葉は海へと消える。
「帰ってこれてよかったわねぇ。」
此処は海の宮殿、と言った場所だったとわたくしは記憶している。
「……助けに来てくれそうな方が来ませんでした。」
確かに言った。……『シルヴィ』と。
「……忘れたのでしょ。貴女が名前を呼んでいたのを確かに聞いたけれど。でも、忘れてしまったら言葉は蓮の根みたいに中はね、スッカスッカしているもの。」
それが原因よ、と祖母は言う。形骸化した言葉に本当の意味などないのだと言っているのだ。
「思い出すには、方法はあるのでしょうか?」
「そんなもの無いわね。貴女は愛されていることを自覚なさいな。……それで充分よ。」
記憶を戻す方法がそれだと言うのか。
『貴女の傍で耐え忍ぶカナリアがいる。そのためよりも、好きに生きなさい。』
水が、わたくしをさらって行く。祖母の姿はもう、見えなくなっている。何故、此処に呼ばれていったのか。それはわからなかった。




