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遊女の私に五匹の竜からの溺愛は重すぎますっ!!  作者: 穂村 ミシイ
第二章 

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31 三つ巴は最悪な結果になりやすい

「けっこん…………。結婚っ!?」


 先に婚約じゃなのっ!?

 いや、その前に私は一応アルマと婚約しているし。

 いやいや、もっと前に目の前に立つ中性的な見た目の男はさっきまでイライゼだったじゃない。ここまで姿を変えられる魔法があるの?


 頭の中にぐるぐる回る疑問は山のよう。

 なのに、一番大きな疑問はたった一つ。


「本当に、フランシア、なの…………?」


 貴族に売りつけれらた先で死んだとばかり思っていた。この人は本当に、私が好きだった遊女なの?

 

 だとしたらどうしてマスカレードなんかにいたの?

 なんで女だと偽っていたの?


 言いたいことがいっぱいありすぎて、言葉は喉に詰まってうまく出てこない。口は餌を求めてパクパクするだけの鯉のよう。

 

「はい。本当に久しぶりですね。マスカレードが全焼したと聞いた時は胸が張り裂けそうでした。」


 私の頬を撫でる大きな手はどこまでも優しい。

 見下ろす瞳はあの頃のまま。

 憂いの奥にゆらめく野心の炎が見え隠れしている。


 ――ああ、この人は本当にフランシアなんだ……。


 懐かしさと嬉しさが一気に湧き上がってくる。それからあの頃の消失感も。


「私、てっきりあなたは死んでしまったとばかり…………」

「何も言えないまま去ってしまいすいません。出来ればこれまでの事を一緒に話しませんか?」


 握りしめられた手から伝わる熱に思わず握り返しそうになった。


「ティアっ!」


 そんな私を現実に呼び戻したのは、アルマの声だ。

 階段を駆け上がってきたアルマの姿が見えた瞬間、私は咄嗟に握りられていた手を引っ込めた。


「ゼフィリア。ティアから離れろ。」

「アルマ、待って。」


 躊躇なく腰の刀を抜いたアルマは迷いなくゼフィリアに矛先を向けた。


「匂いで分かったが、それが風竜の本来の姿か? 初めて見たぜ。でもまかさ戦闘に特化した竜二匹を相手にするなんて馬鹿な真似、お前はしないよな?」


 アルマの後ろから続いてやってきたシャオンまで、ゼフィリアに矛先を向けている。三匹の竜は一触即発状態で睨み合う。


「まさか、先輩たちのような火力を持たない風竜が勝ち目のない勝負を仕掛けるなんて真似はしません。私の得意分野はあくまで情報収集ですから。でも、セルティアを思うなら引いてくれませんか?」


 両手の手のひらを二人に振り、余裕の笑みを見せるゼフィリアの態度は余計に二人をイラつかせる。


「婚約者を連れ去られて引くはずなだろう。ティア、こっちだ!」

「キャッ!?」


 三人の中心で焦っていた私を後ろからアルマが引き寄せようと腕を掴んだ瞬間、雷に打たれたような痛みを伴う電流が体を駆け抜け、触れ合った部分から発せられた光によって私たちは物理的に引き裂かれてしまった。


「な、んだこれは……」


 私の腕に触れたアルマの左手のひらは火傷のような傷を負っている。対して私の腕は痛みはあれど傷はない。

 

「セルティアの胸に光の加護がある限り、黒竜は一生彼女に触れられませんよ。」


 トントンと自身の胸を叩いて見せるゼフィリア。

 言われて徐に自身の胸元を見ると、ヒナにつけられた紋様からうっすらとした光が漏れていた。


 ふと、シアの言っていたことを思い出す。


「光の加護は怪我や病気からセルティア様を守ってくれると同時に、ヒナ様が悪と定めたものから守ってくれるって。」


 ヒナが悪魔の血を引くアルマを悪と認識していてもおかしくはない。

 

「頼んでもいない事を……。どう言うつもりだ?」


 アルマは物凄い剣幕で睨みを効かせてから声を上げた。


「どう言うつもりもなにも、ヒナ様はもちろん私も好きな人を悪い竜から守ってあげたいだけです。」

「そりゃあ賛成だ。」


 後ろにいたシャオンは槍を下ろし、いつの間にかゼフィリアに味方して合いの手を入れ始めた。


「あと二日もすれば、セルティアにつけられた竜印は綺麗さっぱり消えるでしょう。そうなれば彼女はあなたの婚約者ではなくなる。」

「なにっ!? ゼフィリア、よくやったぞ!! セルティア、俺の婚約者になれよ。」


 そう言ってこちらに歩み寄り、私に触れようとしたシャオンの左手にもアルマ同様に光の加護がシャオンを襲った。


「はぁっ!? なんで俺まで拒絶されるんだよ。」

「ヒナ様は竜自体を嫌っていますから。特に女泣かせの火竜は黒竜より嫌っていてもおかしくないでしょう。」

「なんだとっ!?」


 そんなはずないと叫ぶシャオンには申し訳ないが、アイリスとケルロッテを見てしまっているからゼフィリアの言っていることには深く同意した。こいつはもう少し反省すべきだろう。


「セルティア、無言で頷くなよ!!」

「あ、すいません。つい……」


 耐えかねた私が声を上げるとシャオンはシュンと項垂れ、それ以上は喋らなくなった。


「ちょっと待って。竜が嫌いならさっきゼフィリアが私に触れられたのはなぜ?」

「私はヒナ様に危害を食われるつもりはありませんし、公爵家を継ぐつもりも風竜として生き、死ぬつもりもありませんから。ヒナ様が私を悪と定める理由がありません。」


 要はヒナの気分次第で加護の範囲が変わるということね。なんて面倒で強力な加護なのよ。


「くだらない。それならすぐに加護を解くように問い詰めにいけば良い。ティア、帰るぞ。」

 

 くるりと脚を翻し、正面玄関に繋がる階段へと向かうアルマの背中は怒りに満ちていた。

 

 私にはそれが演技なのか本心なのかが分からない。

 どっちにしても彼をこれ以上刺激しない方が良いのは確かだ。だって彼はシャオンとやり合った前科があるんだから。そうなったら今度こそ死人が出かねない。


「セルティア、待って下さい。私は本気です。竜印がなくなるまでのあと二日、ここで私と過ごしませんか?」

「それを俺が許すと思うのか?」


 アルマが鋭い目つきで食い気味にゼフィリアを睨んだ。

 私に向けられた言葉じゃないのに他じろいでしまうほどの圧力を感じて思わずゼフィリアを見るも、彼は真っ直ぐに私を見つめていた。


「セルティア、ここはマスカレードじゃありません。もう金にも男にも縛られることはないんです。君がここにいるのは君の意思じゃないことは分かっています。事情があるんでしょう。じゃなきゃ君が男に従うなんてあり得ない。」


 ゼフィリアの言葉にアルマがピクリと反応した。それでも尚、ぜフィリアはやめない。むしろ声量を上げてこちらに語りかける。

 

「私はどんな暗闇にいても瞳を燃やし続けていた君を知っています。セルティア、君は自由なんだ。黒竜に従うなんてしなくていいっ!!」


 彼の瞳は本気で私に自由を謳っていた。

 あの頃、見習いをしていた頃と変わらずまっすぐでいて、なにがあっても私を守ってくれた優しい瞳だ。懐かしくて、思わず涙が出てしまいそう。


「ティア、こいつはなんでマスカレードを知っている?」

「……っ!!」


 アルマの背中越しに聞こえた怖い声にハッとする。

 そうだ、マスカレードにいたなんて知れ渡ったら私がセルティア・リリースじゃないってバレてしまう。でも、


 (その話をあんたから掘り返していいの!?)

 

 アルマにゼフィリアのことを説明しようにもここには人が多すぎる。それから問題はもう一つ残っている。

 

 ゼフィリアは私がマスカレードにいた事を隠していると知らないのだ。どちらにも説明がいるこの状況。でも、大声で説明は出来ない。二人の鋭い視線が私を通して対峙している。


「マスカレード……?」


 そこにさっきまでシュンとしていたシャオンが不思議を口にし始めたではないか。


「「「セルティア、説明しろ!!」」」


 二つだった視線が三つに増えてしまった。

 

「最悪だわ……。」

 

 シャオンはひたすら邪魔だし。

 話がもっとややこしくなったじゃない。

 睨み合う三つ巴のこの場で説明なんて無理よっ!!


「…………アルマ。この屋敷にもう少しいてもいい?」


 一呼吸おいて、私なりに優先順位と効率を考えた。

 ヒナは学校終わりにここに戻ってくるし、ゼフィリアにマスカレードのことを口ドメもしないといけない。

 ここでアルマについて帰るより、私がここに残って説得する方が手っ取り早いだろう。


「フランシ、じゃなくてゼフィリア様にお話ししたいことがあるのよ。」

「はぁ? ここで殴る以外に誘拐した相手と話すことなんてないだろう。」


 光の加護のせいで近づけないからアルマの耳元で話せないのが焦ったい。なんとか目で訴えて見るも怒りを露わにする彼には届かない。

 

「なんでそんなに物騒なことになるのよ。連れてこられたことはびっくりしたけど、特に酷いことをされたわけでもないし。」

「婚約者に触れられなくなったこと以上に酷いことなんてないだろう。」

「それは、そうだけど……。」


 お願い、私のサインに気が付いて。

 

「そんなにそこの男がいいのか? お前が生徒会室から出て行ってから行方不明になったと知った俺がどれだけ慌てたと思っている。」

「アルマ、落ち着いてよ。」


 どうしよう。全然伝わってない。

 それどころかアルマの全身から黒いモヤみたいなものがユラユラと立ち込め始めた。


「どれだけ心配したと思う。どんな気持ちでここまで来たと思う。ティアの顔をした時にどれだけ安堵したと思っている。」


 まるで悪魔が顕現したみたいに別人だ。

 触れられないと分かっているはずなのにこちらに手を伸ばすアルマに思わず体を縮こめてしまう。


「セルティア、こちらへ!」

「あいつはかなりやばい。絶対に近づくな。」


 危険を察知したゼフィリアとシャオンが私とアルマの間に盾になるように割って入った。


「あの野郎、魔力が暴走しかかってやがるっ!」

 

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