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遊女の私に五匹の竜からの溺愛は重すぎますっ!!  作者: 穂村 ミシイ
第一章 光冠祭と入学編

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17 代理投票戦 1

「何が目的なの?」


 旧庭園に私を誘ったのは他でもないアイリスだ。それなのに、彼女は居らずシャオンがいた。そして私が旧庭園を出て来てすぐに状況を把握していると言う事は、ここはシャオンのお気に入りスペースだと知っていたに違いない。


「目的なんてないの。本当よ。ただ……、いつも自分より爵位が下の者を見下してるケルロッテにシャオン様まで奪われて悔しいじゃない。」

「…………それ、私は関係ないわよね?」

「関係大アリよ。シャオン様が貴方を美しいと言ったもの。」


 アイリスから笑みが消えた。

 よく見たら両手が震えている。


「彼は美しいものに目がないから、ケルロッテから貴方に乗り換えると思ったの。たった一日で婚約破棄されたら、流石にあのムカつく態度も落ち着くんじゃないかって……。」


 青い瞳いっぱいに涙を溜めて、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐアイリス。教室ではあんなに冷静で、クールに見えた彼女はどこにもいない。お姉さんなんかじゃない。


「私、私ね……、シャオン様と婚約していたのはたったの一ヶ月間なの。入学式の時に声を掛けられて、最初は貧乏な男爵家に産まれた私をからかってるんだって。そう、思ってた。」


 健気にもあの男を愛そうとしていた可愛い人。


「でもね、とても優しくしてくれたの。一生懸命勉強してAクラスに入れた事を褒めてくれたわ。だから私、爵位で見下すケルロッテみたいなクラスメイト達に酷いことを言われても頑張れた。彼は私を遊びとしか思ってなかったのかも知れないけれど。それでも、私は……、」


 私の目の前にいるのは、たった一人に恋した可憐な乙女だ。


「シャオン様のこと、ちゃんと好きだったのにな……。」


 婚約破棄の場であれだけ毒を吐いていたのは、自分を取り繕うために彼女なりに必死に頑張った結果だったんだのだろう。


 (シャオンはつくづく可哀想な人ね。こんな美しい人を自分から手放すなんて。)

 

 昼間の太陽は皆の頬を平等に照らす。

 ケルロッテにも、アイリスにも。

 それでも私には、今この瞬間だけ光はアイリスを強く照らしたように思えた。


 (恋した乙女はなによりも輝くんだから。)


 アイリスの溢した涙は床に溶けて消えていく。

 私はその涙と一緒にシャオンへの気持ちも溶けて消えてしまえばいいと思った。だって、今の彼にアイリスは勿体ないもの。


「私の小さな復讐に付き合わせてごめんなさい。もうしないし、話しかけないから安心して。」

「これ、使って?」


 床と平行になるほど深く頭を下げるアイリスにハンカチを手渡した。


「…………え?」

「私、アイリスのこと嫌いじゃないよ。性格は悪いしちょっと歪んでるけど。」

「ゆ、歪んでるは言い過ぎじゃない!?」


 顔を上げたアイリスの瞳は晴天の青よりも澄んでいた。頬をぷくっと膨らまし、赤く染めている姿は遊女の頃に面倒を見ていた妹分達を思い出させる。

 

「ふふ、可愛い。」

「わ、わわたしはっ、お淑やかで通してるの!!」

「なにそれ。」


 私達は人通りの少ない旧庭園へ繋がる廊下の隅で小さく笑い合った。太陽の光も暖かさも届かない薄暗い石造りの中、雑草のように強く逞しく強かに笑い合ったんだ。


「ねぇ、アイリス。私と友達になってくれない?」

「……私で、いいの?」

「貴方がいい。ダメ、かしら。」


 私には嘘が沢山ある。この嘘をアイリスに明かせる日は絶対にやってこない。本当は、友達なんて作らない方がいい。頭では分かっているの。でも……、


 私も一度だけでいいから〝普通の女の子〟になってみたい。そんな淡い気持ちが口から漏れてしまった。


 創造神がもし、私を見ているならお怒りになるだろうか。庶民のしかも下賎な遊女の分際でと、分不相応だと嘲笑うかも。

 

「………シャオン様とケルロッテの愚痴を聞いてくれるなら。」

「やっぱり貴方、性格が歪んでるわね。」

「んなっ!?」


 どう思ってくれても構わない。

 だからお願い。一年だけ見逃してください。


「愚痴を聞く代わりに学院の事を色々教えて欲しいな。」

「そのぐらいお友達なら当たり前よ。」


 泡沫の夢を、私にください……。


 それから私達二人は昼の休憩が終わるギリギリまで話をして、仲良く教室へと戻ったのだけど、


「やぁ、遅かったね。」

「…………誰?」


 教室にいたのはたった一人。

 明るい金髪を後ろで小さく結び、丸眼鏡をかけた生徒が教壇に頬杖をついて、こちらへ手を振ってきた。こんな生徒同じクラスにいたかしら?


「せ、生徒会長様っ、ご機嫌よう。」

「ええっ!?」


 隣にいたアイリスは慌てて挨拶を口にしたのを見て、私も大慌てで真似をした。


「僕にそんな畏まらなくて大丈夫だよ。えーっと、金髪に碧眼。君がセルティア嬢か。」


 おおらかに笑う生徒会長が私を指差した。

 

「は、はい。」


 生徒会長がなんでここに!?

 アルマとの婚約の件?

 それともさっきシャオンに取った態度のこと?


 思い当たる節が多すぎる……。


「なんのご用でしょうか?」

「ご用ってほどじゃないんだけど。今朝、そろそろ新しい生徒会役員を決めようって話になってね。今の生徒会役員に推薦者を募ったんだ。そうしたら二名の生徒の名前が上がった。」


 恐らくというか、確実にアルマが推薦した内の一人なのだろう。予想した通り、生徒会長は私を指差して「婚約者さんからのご指名だ」と言った。


「それからもう一人。シャオンがケルロッテ嬢の名前を挙げたんだ。」

「――っ!!」


 今年、生徒会へ入れるのはAクラスから一人だけ。

 その枠をまさか、彼女と取り合う事になるなんて。

 

「で、昼ごはん食べたら三人で君達を観に行こうって話だったんだけど、あの二人物凄く仲が悪くてさ。さっき二人と合流した途端、喧嘩が始まっちゃったんだ。」


 この生徒会長様はなんと言うか、のほほんとし過ぎてる。喋り方の問題なのかしら。喧嘩が始まったって、止めるのが優先しなくていいのだろうか。彼はこんなところで優雅な説明していていいの?


 そうは思っていても私も隣にいたアイリスも、生徒会長の空気感に飲まれてなにも言えない。


「なんでも、シャオンから君の匂いがしたとかなんとか……。」


 竜の子孫は皆、鼻が良いからと笑う生徒会長の言葉にアイリスと目があった。


「セルティア、どうしよう。私のせいだ……。」


 顔から血の気が引いていくアイリスの手をぎゅっと握りしめる。


「だ、大丈夫よ。喧嘩って言っても学生のする可愛いもんでしょ。」


 それに恐らく、これはアルマの演技かなにかだろう。だって彼は私にシャオンを魅了してこいっていった張本人。匂いが付いたからって怒る理由がないもの。


「いやー、それが二人ともかなり本気でね。武器を構えだしちゃったから止められなくて大変なんだ。」

「ええっ!!」


 なんでこの人はずっと他人事みたく笑っているのよ。本当に生徒会長なのよね!?

 

「だからちょうど良いやと思ってね。今丁度、生徒会が忙しくもあったから。」

「な、なにがですか!? 早く止めないといけないのでは?」


 流石のアイリスも声を上げずにはいられなかったらしい。私の心を代弁してくれた。


「ああ、だからね。武器を手から落とした方が負け。勝った方の推薦者を生徒会へ入れる事にしたんだ。」


 生徒会ってそんな決め方でいいの!?

 口から飛び出そうになった言葉をなんとか押し込んだ。そんな私達の反応を面白そうに眺めていた生徒会長は茶目っ気たっぷりに口を開いた。


「名付けて代理投票戦、なんちゃって⭐︎」

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