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48 辻褄




目を覚めた時、最初に考えたのはマヨイの事だった。

俺の実家で最後の認識阻害魔法をかけてもらう直前に、焼けるような胸の痛みで俺は意識を飛ばした。……その後の事は、曖昧で何も覚えていない。


目が覚めた俺の元へマギー宰相が現れて、意識を飛ばした後の出来事を話してくれた。俺は、よりにもよってマヨイを殺しかけた事が信じれなかった。宰相は魔物化したので致し方ないと言ってくれているが、それでも俺は自分が許せなかった。しかも、俺を魔物化から戻したのも彼女で、その為に再び対価として死にかけた事も聞いて、俺は彼女に合わせる顔がなかった。


「君がどう思おうと、あの子は元に戻った君と会いたいはずだよ」


宰相に諭されて、俺は一度だけマヨイに会う事を望んだ。……これっきりで、もう会わないつもりで。彼女が会いたいと思ってくれていても、実際に会ってしまえばあの出来事を思い出して、きっと怖がるだろうと思ったからだ。


……けれど、それは俺の間違いだった。彼女は息を荒くして部屋のドアを開けて、泣きそうになりながら俺を抱きしめた。抱きしめる彼女から、鼻水を啜る音が聞こえて、俺はどうしようもなく彼女に愛おしさが溢れて、少し笑いながら腕を強くした。


「よ、よかった……元に戻った……」

「全部マギー宰相から聞いた。……助けてくれて、有難う」


彼女の暖かさが心地いい。

俺は彼女が、マヨイが好きだ。

…………まぁ、まさかジィさんとくっついてるのは予想外だったが。想うのは問題ないだろう。




その後、マヨイ達を追い出しながら騎士団長が部屋に入ってきた。俺の耳と尻尾を見ても、何も変わらず笑顔を向けてくれた。そのまま団長は、俺の頭を乱暴に撫でる。


「お前は化けてたかもしれねぇけどな、騎士団全員、お前が獣人だって知ってたぞ」

「は!?」

「何年も家族当然に飯食って寝てるんだ。気づかねぇ方が可笑しいだろ」


驚いて団長を見るが、彼は変わらずに笑顔を向けた。


「だから、気にしなくていい。………そのままで、帰ってこいよ」


その優しい笑顔に、その優しい言葉に。……俺は、もういい大人の癖に涙が出そうになって、見られない様に下を向いた。そんな俺に、団長は暫く頭を撫で続けた。






◆◆◆







目の前の中二、じゃないマギーは真剣に、テオドールが神だと告げた。私は横にいる本人を見るが、物凄い面倒臭そうな表情をしている。言いたい事はわかる、だがその顔は彼を傷つけるのでやめろ。


「今、40過ぎの男が何言ってるのかな?……とか思っただろ?」


図星なので私もテオドールも何も言わなかった。大きくため息を吐いたマギーは、差し出したタブレットを向かいから動かして、私の名前のついたデータを見せる。


「まずはマヨイさんだけど、君は一般的な人と何ら変わりない。多少筋力が強いけど、それでも一般人が鍛えればその位は到達できる程だ。そして魔法を使うと体の酷使が激しい。恐らく加護持ちとして完全体じゃないから、魔法を唱えると一般人と変わらない君は体がついていけないんだろう。体は一般人、中身は加護持ちっていう感じかな」


画面の情報だけでは分からないので、説明してもらってようやく理解した。マギーは次に先ほどのテオドールのデータを見る。……確かに、私のと比べると、全ての数値が二倍では済まされない程に高い。


「師匠は逆に、一般人よりも遥かに高い。魔法を使っても体の変化も何もない。もはやカンストしてそこからバク使ってチート化させた様だ」

「……坊主、年寄りに分かる様に言え」


言っている意味がわからない様で、テオドールは眉間に皺を寄せている。マギーは少し間を置いて、深呼吸をしてからテオドールを見る。


「魔法を使っても体の変化がない。……それが例え、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って事」


私も、テオドールもその言葉に動揺した。……大魔法は、確か加護持ちでも一度しか実行できない魔法だ。二度目をした場合、命の補償はないほどの強力な魔法。……それをテオドールは、何度でも実行できると言っているのだ。


「……師匠は、他の加護持ちと違って不老不死だ。時の神の加護を持っているからだと、今まで何の疑問もなく思っていたけれど……可笑しくない?この世界の神々は、それぞれ司るものがあるけど、加護持ちは誰もその司る力を持っていない」

「……それは」

「死の神は今まで一度も、加護持ちが発見されなかった謎が多い存在だからってなら分かる。けど時の神は違う、師匠の前の加護持ちもかなり古いけど文献で記載されているし、亡くなっている」


マギーはタブレットを触り、古い文献の画像を見せる。確かにそこには時の神の加護を授かった人物の名前があり、没年も記載されている。一人ではなく何人も書かれているが、150年前のテオドールの名前きり、それ以降は何も記載がなかった。


「僕は天候の加護を持っているけど、天候を操れない。戦いも、豊穣も、予言の加護持ちも同じだ。なのに何故師匠だけ、不老不死……違う意味で言えば、時間を止められているんだ?」


テオドールは答えを出せないのか、眉間に皺を寄せてマギーをただ見つめる。


マギーは、ようやく辿り着いた答えを伝えるために、口を開く。




「……もしも、時の神での加護じゃなくて、師匠が()()()()()()()だったら…………全ての辻褄が合うんだ」



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