45 告白
「ち、ちょっと!!テオドール!!!」
死の神アドニレスが去った後、私は表情を見せないテオドールに、強く腕を掴まれ何処かへ連れて行かれている。どれだけ叫んでもテオドールは顔を向けずに只真っ直ぐ進んで、地下牢にマギーも置いて、一体どうしたのだろうか。
ようやく着いた場所が、施設で割り当てられた私達の部屋だと気づいた。
そのままテオドールは部屋の中へ入り、私をドアに強く叩きつける。鈍い衝撃と痛みで、私は呼吸をうまく出来ずに咳き込んだ。
「テメェは、どうしてそうも死にたがるんだ」
顔を下に向けたまま、テオドールは静かに告げる。壁に叩きつけられた私に覆いかぶさり、変わらず腕を強く掴んでいるが、その掴む腕が震えている事に気づいた。私は呆然として、彼の名前を呼ぶ。
「……テオドール」
「あの獣人がそんなにも大切か?」
獣人とは、アレンの事だろう。掴む反対の手が、私の首筋を触れる。
アレンに噛まれた傷は癒えているのに、何故か鈍い痛みが襲った。そのまま頬に移動するその手は、小さく震えていて、私は心臓の音が早くなる。……本当に、どうしてしまったんだ彼は?昨日から、彼はまるで、私を……。
「俺は役に立たないってか?」
「ち、違う待って!テオ」
聞き捨てならない言葉が聞こえて、反論するために言葉を告げる前に、彼の唇がそれを塞ぐ。息継ぎをしようにも、それを拒まれるようにされる長い口付けは、今までのものと全く違った。思わず目を大きく開けると、ようやくテオドールの表情が見えて、私は驚いた。……まるで、泣きそうな程に苦しそうな表情だった。
ようやく離れた時、私は肺の中に空気を入れるために大きく咳き込んでしまう。それを口付けている時と同じ表情で見ていたテオドールは、暫くすると頬に当てていた手を再び首を掴むものに変えて、顔をこちらへ向けてもう一度唇を当てる。無理矢理される口付けは、そのまま何度も何度も続いた。
何度口付けをしたのか分からない程に、酸欠もあり朦朧とした意識になった。私は、何度目かに足の力がなくなり、テオドールの体へ体重を預けてしまっている。それを見たテオドールは、小さく舌打ちをした。
……目の前のテオドールが怒っているのは分かる。仲間が何度も命の危険を顧みなかったのだ。私だってテオドールが同じ事をしたら怒る。……ただ、何故こんな行動を取るのか分からなかった。
もう何度か口付けた後で、ゆっくりと彼は口を開く。
「俺が、アンタを今までどう見てたと思う?」
力が入らない私は、頬に当てられたテオドールの手に頭を預ける。その手の親指で唇を拭われるが、私はそれを止める事ができない。……彼の表情は、変わらず泣きそうだった。
「……アンタが、俺だけに笑ってほしい、俺だけを見てほしい」
呟かれる様に語るそれは、まるで魔法を唱えている様だった。
「アンタと何度もこうしたい、抱きたい」
そんな泣きそうな顔で言わないでほしいんだが、それ。そう言いたいが、口が言うことを効かない。だから私は、呆然と彼を見つめる事しかできない。
彼の碧眼から、涙が溢れている。そのまま頬に伝うその涙は、本当に美しい。
彼はそのまま、もう一度私に顔を近づけて、 まるで、懺悔する様に最後の言葉を告げた。
「…………アンタが、どうしようもなく好きだ」
私は、その言葉に言い返す前に、優しい口付けに溺れた。




