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ザ・サプリーム・ファシスト ~傍迷惑な召喚の儀式  作者: 鶴鴇屋徳明
最終章:齎されたもの(もたらされたもの)
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終戦

 薄れていった意識が再び(あつ)まったその時。

 俺は奴の剣を弾き飛ばし、奴の喉に剣を深々と突き立てていた。


「〈ク……〉」


 奴は声を発しようとしたが、そこから先の言葉を続ける事ができなかった。

 奴の表情は――苦笑している様に見えた。


 奴は急速に石化し始めた。今度は途中で止まらなかった。


 俺は剣を引き抜く。すると、奴の体が崩壊し始め、あっという間に砂のようになった。

 砂のようになった奴の残骸は更に形を失い、見る見るうちに薄れて行く。


 弾き飛ばした奴の剣の方を見ると、それもまた、崩れ去っていった。


 奴の残骸が消滅すると……奴の胴体が有った空間には、闇の真球が遺された。

 奴が中から闇の剣を引きずり出したものと、同じものだ。

 全き闇にして完全なる真球を、深紅の稲妻が紋様のように取り巻いている。

 それを見て、俺の頭の中に『闇皇(やみのすめらぎ)』という言葉が浮かび上がった。


「これは……一体?」


〈奴の構成要素でもあった、固有領界です。但し、抜け殻のようなものですが〉


「固有領界?」


〈実の所、私も奴も、あなた方が観測している宇宙とは独立した、一つの小宇宙とも言える存在なのです。

 ……『ベビーユニバース』理論はご存知ですね?〉


「ああ。まがりなりにも、物理学徒だからな」


 この宇宙は『ビッグバン』によって始まり、『宇宙のインフレーション』によって急激に膨張し、現在の形になった。

 『宇宙のインフレーション』のような急激な時空の膨張が起こると、泡が複数に分裂するように、別個の小さな宇宙が生まれる可能性が有る。

 その別個の小さな宇宙が『ベビーユニバース』だ。


〈私も奴も、進化の過程で『ベビーユニバース』を取り込み、自らの構成要素としました。

 それが、『固有領界』です〉


「いわゆる『四次元ポケット』のようなものか?」


〈そう考えていただいても差し支え有りません〉


「「抜け殻のようなもの」と言ったが……あの中から、まだ何か出て来ないだろうな?」


〈その可能性は有ります。ですが、あの固有領界が消滅するのも時間の問題です。

 万が一の場合は、私があれを封印します〉


「頼むよ」


〈はい〉


 メルリンと会話していると、味方が俺の背後に集まって来た。

 但し、みんなまだ同調状態なので、ヴァクトゥールの翼によって巨大化変身したままである。

 そして、ついさっきまで繰り広げていた剣戟の序盤でメルリンと会話した時と同様に、味方との会話は思考の超高速応答によって行われた。


〈何がどうなっている? 俺達も時間加速状態だったが、それでも事態の把握が追いつかなかったぞ?〉


〈まだ気懸かりなものが残っていますが、奴に致命傷を与えたのは間違い有りません〉


 グレイの問いにメルリンが答え、さらに、先程の剣戟の情報を、超高速伝達によって味方全員で共有した。


〈……なるほど。これは……文字通りの意味で「筆舌に尽くし難い」な〉


 グレイが困惑気味につぶやく。


〈後は、あの中から何が出てくるかでござるな〉


 ゴズモフ先生が闇の真球を注意深く凝視していると、それを取り巻く深紅の稲妻の光度が複雑なパターンを伴って変動した。

 それと共に、広い周波数領域に渡る電磁波と、大量の素粒子――通常粒子・超対称性粒子の別を問わず――が撒き散らされた。

 放射エネルギーの総量はかなりのものであったが、ヴァクトゥールの力によって巨大化変身している俺達を傷つけ得るほどの大きさではない。

 もちろん、地球に被害が及ぶほどのものでもない。


 闇の真球が撒き散らしたものは、依耶(よりや) 瑁人(まいと)とガーデスの融合体が遺したメッセージであった。

 電磁波は、闇の真球と面している側であれば、地球のどこからでも明瞭に受信可能であった。

 闇の真球と面して無い側であっても、波長によっては電離層で屈折し、受信可能な所も多いだろう。

 融合体の奴がさんざんやってくれやがった、『全世界生放送』だ。

 ……今から話されるであろう内容を考えると、今回の場合、厳密には『生』放送とは呼べないだろうが。


 開口一番、聴く者に不快感を(もたら)す、奴の哄笑でメッセージは始まった。


「〈アーハッハッハッハッ! 大したもんだよ!!

 このメッセージが公開されているという事は、派手に()り合った結果、俺様が滅んだ時以外に有り得ない。

 この俺が全力を出してなお滅んだ時、生き残ってこのメッセージを聴ける奴がいるかどうかは知らねぇけどな! ハハハハハッ!〉」


 俺の背後にいる味方から、奴に対する不快感を示す感情が伝わって来る。


「〈このメッセージが公開されているからには、俺の負けだが、俺には後悔は無縁だ。

 このメッセージが公開されている以上、俺はやりたい放題、思い通りに暴れまくったという事に他ならないからな!

 俺の構成要素となった依耶 瑁人と同じく、俺も『俺にとっての面白さ』が全てだ。

 さぞかし俺様好みの刺激的(エキサイティング)勝負(ゲーム)になっただろうな! ハーッハッハッハッハ!!〉」


「……貴様っ!!」


 グレイは攻撃の構えを取ったが、まるでそれを見越したかのように、闇の真球からのメッセージが放たれた。


「〈お~っと、もし生き残ってる奴がこのメッセージの発生源を破壊しようとしているんなら、止めといた方が良いぞ?

 聴きそびれたメッセージに含まれる情報が無かったばかりに窮地に陥る、なんて事になりかねないからなぁ?

 話の腰を折らずに、忠告は最後まで聞いた方が無難だぞ? アハハハハッ!〉」


 グレイはギリギリの所で攻撃を思いとどまり、構えを解いた。


「〈――さて、俺様としては考えられる限りのエキサイティングなゲームを楽しむのが、至上の目的だったわけだが、「それに準じる優先度の目的」というものも、当然有った。

 ――ある疑問に対する、好奇心を満たすという目的がな。

 俺様が滅んだ場合、そっちの方の目的は果たせないわけだが、俺様を滅ぼした奴に対するプレゼントとして、その疑問をくれてやるよ〉」


 そこで一旦言葉を切り、闇の真球は俺達に「その疑問」を投げつけて来た。


「〈もしもこの世界が自我を持つ何者かの創造物なのだとしたら、この世界をどこまでぶっ壊せばその造物主を目の前に引きずり出せるんだろうなぁ?〉」

※あとがき:

 ――この物語もあと3話か4話ですが、ブックマーク登録や評価ポイント投入を頂ければ幸いです。

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