~Interlude 7~ 『一方その頃』
『イベンチュアル・フォーチュン』号に乗っていた人間の殆どは、人間以外の知的生命体が数多く同乗している事に、全く気付かなかった。
それら人間以外の知的生命体は――超対称生物であった。
超対称生物は超対称性粒子によって構成されている。
超対称性粒子で構成されたものは普通の人間には見る事も触る事もできない。
ゆえに、超対称生物は普通の人間には見る事も触る事もできない。
パーティー会場の至る所で大小様々な超対称生物が陣取っているにも関わらず、パーティーを楽しむ人間達は超対称生物達を見る事ができないどころか、超対称生物達にぶつかっても何の抵抗も無くすり抜けた。
――そう、普通の人間にとっての超対称生物は、古くから伝承で語り継がれてきた『霊』そのもののごとき存在である。
船には、悪意に満ちた幾百幾千もの超対称生物どもが乗っていた。
それら悪意の超対称生物は、その中でも特に強大無比な悪意を持つ個体を『御頭様』と呼んで、服従していた。
『御頭様』――それは、太古の昔から人間が『悪霊のかしら』あるいは『悪霊の王』と呼んで語り継いできた存在そのものだった。
その御頭様の下僕どもは、三つの命令を受けていた。
一つ目は、依耶 瑁人が今宵の宴の終わりを告げる合図を出すまで、船の最上甲板とその上空および最上甲板が占める空間から半径5m以内に、御頭様が許可した者以外を侵入させない事。
二つ目は、一つ目の命令に反しない限り、脳や身体の機能を不可逆的に損ねない穏便なやり方で人間どもを最上甲板から遠ざけつつ、人間どものパーティーを続けさせる事。
三つ目は、二つ目以前の命令に反しない限り、御頭様への奇襲を企てる者全てを見つけ次第殲滅する事を、自身の存続よりも優先する事。
これら三つの命令は、御頭様が今宵所望する生贄を喰らうまでの間、下僕どもにおあずけをくらわせるためのものであり、御頭様に生贄を捧げる儀式を邪魔する者を下僕どもに排除させるためのものだった。
下僕どもは、大いに不満を感じていた。
いたぶりがいの有る獲物がそこらじゅうを歩いているというのに、迂闊に手を出せないからだ。
迂闊に手を出した結果が儀式の妨げになろうものなら、下僕どもを待っているものはただ死ぬだけよりも恐ろしい運命だ。
今宵の宴の終わり――即ち、儀式の終わり――を告げる合図を出す者が依耶 瑁人である事も、下僕どもにとっては多いに不満であった。
御頭様と契約を結んだ請負人であるとは言え、「たかが人間」の依耶 瑁人の指図に従わなければいけない事が、下僕どもにとって大いに気に入らなかった。
だが命令に背いた結果が御頭様のご機嫌を損ねる事になるのは、下僕どもにとってとても恐ろしかった。
おまけに、御頭様への奇襲を企てる者が今夜やって来たとしたら、その者の殲滅を自身の存続よりも優先しなければならない。
その場合も二つ目の命令により、極力、人間どものパーティーの邪魔にならないようにしなければならない。――少なくとも、儀式が終わるまでは。
目下の所、御頭様の敵である超対称生命体が奇襲を企てるための『隠れ蓑』となっている事が疑われる人間は、船内に4名いた。
今宵生贄として捧げられる人間も含めれば5名だが、生贄となる人間に敵の超対称生命体が重なり合って隠れていない事は、御頭様が請負人に貸し与えた能力によって確かめられていた。
従って、敵の超対称生命体の隠れ蓑候補として疑われる船内の人間は、やはり4名だ。
敵の超対称生命体が人間に重なり合っている時、その姿を見る事は超対称生物であっても能わない。
敵の超対称生命体が人間に重なり合っているかどうかを下僕どもが確かめる手っ取り早い方法は、その人間のいる空間に体の一部あるいは全部を突っ込んでみる事だった。
これなら、最下級の下僕でも実行できる。
突っ込んでみた結果素通りしたならば、敵はその人間に重なり合って隠れてはいない。
突っ込もうとしても何かにぶつかって突っ込めないなら、その「何か」――この状況では敵以外にあり得ない――が確かにその人間と重なり合って隠れている。
実際、下僕どもは船の乗船口から入って来た人間どもに対して「ボディチェック」を実施していた。
方法は単純。単に、乗船口から入って来た人間のいる空間に体の一部あるいは全部を突っ込んでみるだけである。
その結果、乗船した人間のうち4名に対しては、下僕どもが体のごく一部たりとも突っ込む事はできなかった。
その4名のうち1番目の人間に対してボディチェックを試みた下僕は――その人間に接触した瞬間、断末魔の叫びを上げ、その直後に塵となり、そして消滅した。
乗船口付近の下僕どもは総毛立った。御頭様の三つの命令の三つ目に従い、下僕どもは自らが消滅する結果になろうとも、敵の殲滅に努めなければならない。
下僕どものうち最下級の雑兵数体がその人間に対して突進したが、ボディチェックを試みた下僕と同じく、接触するや否や、断末魔の叫びを上げながら瞬く間に消滅した。
さらに多くの雑兵が突進するも、結果は同じ。
結局、乗船口付近の現場主任として働いていたやや上位の個体が攻撃の一時中止を命じるまでの間に、数十体の雑兵が消滅した。
御頭様は敵を見つけ次第殲滅する事を命じはしたが、だからと言って徒に兵力を損耗させてしまったなら、それはそれで御頭様から後で罰せられる事になる。
数十体の雑兵が消滅した事に、乗船口付近の人間どもは気付いてもいない。
先程ボディチェックの対象となった人間は素知らぬ顔をしている。――その気になれば、その人間に重なり合っているはずの超対称生命体を通じて、先程の事件を認識できるはずであるが。
乗船口付近の現場主任――便宜上、その個体を「曹長」と呼ぶ――は、御頭様の三つの命令の二つ目以前を拡大解釈し、さきほど数十体の雑兵が消滅する原因となった人間を追撃しない事にした。
「このまま兵力を投入し続けて船内の全兵力を要する様な総力戦につながってしまうと、二つ目以前の優先命令を遂行できなくなってしまうから」と、自己正当化して。
曹長は下位の下僕どもに態勢を立て直す事を命じ、ボディチェックを再開させた。
今度は雑兵ども数体を乗船口に配置し、その雑兵どもが動けない様に、伍長級の下僕どもが羽交い締めにした。
当然、羽交い締めにされた雑兵どもは逃げ出そうとして精一杯暴れたが、逃れる術は無かった。
しばらくして、厳つい顔と体格の男性牧師が乗船口にやって来た。
見るからに悪霊退散の力を持っていそうなその牧師が近づくにつれ、羽交い締めにされた雑兵どもは「いやいや」の動作をしながら絶望の表情を浮かべた。
果たせる哉、牧師が乗船口を通過した瞬間、雑兵どもは絶叫を上げながら消滅した。
牧師は何食わぬ顔で船の中に入って行く。
今度は誰も追撃しない。曹長は直ちに代わりの雑兵を乗船口に配置させ、伍長級の下僕どもに拘束させた。
その後、全ての乗客が乗船するまでの間、ボディチェックに引っかかった人間はいなかった。
――だいぶ後になって判明したのだが、実は雑兵数十体が消滅した際の騒ぎに乗じて、更に2名の『隠れ蓑』役と思しき人間が、ボディチェックを受ける事無く乗船していた。
やがて、船は出港した。
下僕どもは、乗船前のボディチェックに引っかかったものの何の困難も無く乗船した人間2名のそれぞれを、遠巻きに観察していた。
御頭様と請負人の依耶、そして下僕の中でも上位の個体ならば、人間に重なり合って隠れている敵に対して、わざわざ接触せずとも少しばかり離れて検知し得る能力を持っているし、雑兵と違って瞬時に滅ぼされる事は無い。
しかしその様に強力な上級個体の数は限られており、御頭様が御座す最上甲板とその周囲を警備するのに手一杯であった。
観察対象の2名がすぐにでも最上甲板に向かう様であれば、下僕どもは総力を上げてそれを阻止する事になる。
だが今のところ、その2名は周囲の超対称生物の存在に気付いているであろうにも関わらず、知らないふりをしてパーティーを楽しんでいる。
あまつさえ、もうすぐ生贄となる予定の人間と楽しげに会話までしている。
周囲の下僕どもは苛立ったが、どうする事もできない。
あの2名に挑みかかったところであっけなく返り討ちに遭う事は目に見えてるし、生贄に手を出す事は下僕どもにとって許されない事である。
結局のところ、乗船口の曹長と同様に「下手に手を出して徒に損耗を増やすと、二つ目以前の優先命令を遂行できなくなってしまうから」という自己正当化を行い、積極的な行動を何もしなかった。
苛立ちのあまり、下僕どものうち中級以上の個体は、下級の個体に見張りを押し付けてサボタージュを始めた。
下僕どもの個体差は大きく、御頭様には及ばずとも普通の人間を遥かに上回る知恵と力を持つ高位の個体もいれば、普通の人間と比べて勝っているのは「超対称生物である」という1点のみであるという低級な個体もいる。
その様な低級個体は、上位の個体とは違って人間に対する物理的干渉をあまり行えないし、知能も普通の人間の4歳児程度でしかない。
ただし、上位の個体の命令には絶対服従する様に調教されていた。
見張りを押し付けられた下級の個体どもは、「あのおっかない2人が最上甲板に行こうとしたらすぐに知らせろ」という大雑把な命令だけを与えられた。
あまり高度な命令を出しても、下級の個体は理解できないからだ。
見張りの下級個体は、生贄が差し出した紙切れに対して2名のうちの1名がペンダントを差し出した時も、ただ見てるだけだった。
御頭様が御座す最上甲板とその周囲を警備する上級個体と、観察対象の2人を見張っている下級個体を除いて、残りの多くの下僕どもはたちまち退屈な時間を持て余し始めた。
儀式が終わるまで、人間どもに直接的な危害を加えていたぶる事もできない。
そこで多くの下僕どもは、退屈しのぎのために、パーティーに参加している人間どもに間接的な方法で嫌がらせを始めた。
人間どもの脳や身体の機能を不可逆的に損ねる様な行動は、御頭様の三つの命令の二つ目によって禁じられている。
だが、それに抵触さえしなければ、人間どもに嫌がらせをするのは命令違反に当たらない。
例えば、給仕ロボットの電子回路に少しばかりノイズを走らせて、近くの人間にコップの中身をぶちまけたり、カラオケ会の場で設備に干渉してハウリングを起こし、参加者の気分をぶちこわしにしたり。
あるいは演奏会で楽譜を隠したり、映画鑑賞会のうちホラー系の作品が上映されている所で、一瞬だけ普通の人間にも見える様に姿をあらわしたり。
コスプレパーティーには「あのおっかない2人」がいたので、何もできなかったが。
あまり大っぴらにやると依耶の関知する所となり、御頭様に「御注進」されかねないから、パーティー全体が台無しにならない程度に、下僕どもは人間どもへの嫌がらせを楽しんだ。
嫌がらせの標的となった人間は脳や身体の機能を不可逆的に損ねる事こそ無かったものの、大恥をかかされたり、哀れにも困惑させられたり、予期せぬ恐怖に慄いたりした。
その様子を見て多くの下僕どもが笑い転げ、退屈をまぎらわせた。
船内の多くの場所で、嘲笑う下僕どもの姿と声を認識できる人間はいなかった。
そしてダンスパーティーの会場。
そこには、華麗に舞う一組の若い男女がいた。
黒いモーニングスーツを来た色白の美青年と、白いチャイナドレス風の礼服を着た小麦色の肌の美女。
周囲の人間には、その男女の華麗な舞いに見とれている者も、少なからずいる。
あのカップルの舞いを台無しにさせたら……さぞかし面白そうだ。
そう思った数体の下僕が、邪な笑みを浮かべ、そのカップルに近付いた。
その次の瞬間。
下卑た笑みを浮かべながらそのカップルに近付いた下僕ども数体が、その顔に下卑た笑みを貼りつかせたまま、全身をバラバラに切り裂かれた。
その下僕どもは叫びを上げる間も無く塵と化し、消滅した。
周囲の下僕どもは、なぜ眼前の惨劇が起こったのか、全く理解できなかった。
下卑た笑みが、たちまち戦慄の表情へと変わる。
その次の瞬間。
カップルの周囲にいた数体の下僕に、ごく細い針の様なものが無数に突き刺さっていた。
無数の針は発火し、一瞬のうちに下僕どもを青白い炎に包んだ。
針と炎の餌食となった下僕どもは絶叫を上げながら灼き尽くされ、消滅した。
カップルの周囲に、切り裂かれたり灼き尽くされたりした下僕どもの断末魔を認識できる人間はいなかった。
カップルが舞う度に、その動きに呼応する様にして、下僕どもが十数体ずつまとめて滅ぼされていく。
まだ生き残っている周囲の下僕のうち、特に動体視力に優れた者だけが、味方に滅びを齎したものの動きを辛うじて捉える事ができた。
女と片手をつないだまま踊る男が虚空に向かってもう片方の手を振ると、茨の蔓の様なものが一瞬だけ表れ、それが再び消えた時には既に下僕ども数体がバラバラになっている。
男と片手をつないだまま踊る女がもう片方の手の掌を天に向けると、男女がいる方向を除く全方向に向かってごく細い針の様なものが無数に飛び出したかと思うと、次の瞬間には下僕ども数体がそれの餌食となっており、なす術無く灼き尽くされる。
1分も経たないうちに、ダンスパーティーの会場にいた百体を優に超える下僕どもが殲滅されていった。
残るは1体のみ。
その個体はたまたま優れた動体視力を持っており、茨の蔓の様なものとごく細い針の様なものの動きをその眼で辛うじて捉えていたが、動体視力に比して回避能力は優れているとは言えなかった。
今まで生き残れたのは悪運が強かっただけに過ぎない。
だが、その悪運も尽きた。予測可能回避不可能。
最後まで生き残ったその1体は、顔面を絶望の表情で硬直させたまま切り刻まれ、無数の針のようなもので刺され、そして灼き尽くされ、滅んだ。
その時、華麗な男女の踊りもフィナーレを迎えた。
万雷の拍手。
男女の周囲にいた人間の誰一人として、この男女がダンスしながらやってのけた殲滅戦を認識していなかった。
「……ねえ、グレイ」
「何だい? キョウコ」
万雷の拍手の中心にいた男女は、お互いにしか聞こえない声で囁き合った。
「人が楽しく踊っているのを邪魔しに来る下衆な輩って、嫌ね」
「ああ、全くだ」
男女――グレイとキョウコ――の周囲の人間のうち、踊りに魅せられた何人かが歩み寄って話しかけてくる。
グレイとキョウコはそれに応じて当たり障りの無い会話をしつつ、内心ちょっとやり過ぎたと思っていた。
単に踊りに魅せられただけの人達の気分を悪くする事無く、さりげなくこの場を後にするのは少しばかり難しい。
しかし、まあ、何とか上手い口実をでっちあげてこの場を抜け出せない事も無いだろう。
グレイが上手い口実をでっちあげようと考えてながら喋っている間、キョウコは自らに重なり合っている存在と、声を出さずに会話していた。
〈あ、そうそう、マカミ。グレイが口実を思いつくまでの間、この会場にいる人間を守ってちょうだい。
敵の増援が人間を人質に取ろうとしたら未然に防ぎ、敵を容赦無く殲滅してね〉
実際の所は、御頭様の三つの命令の二つ目により、下僕どもが人質を取ったとしても、人質に対しておいそれと危害を加える事ができなかった。
「言う事を聞かないと人質を殺すぞ!」とブラフをかける事はできたかもしれないが。
だが、それはキョウコの与り知らぬ事。
〈承知〉
そう言って、キョウコに重なり合う『マカミ』と呼ばれる存在は、直ちに彼女の要望に応えた。
キョウコの体から蒼く光る靄の様なものが湧き出てくる。
それは彼女から数歩分ほど離れ、明瞭な輪郭を取り始めた。
数瞬の後、蒼く光る靄の様なものは蒼い狼の姿を取った。
標準的な狼よりも一回り以上大きい、蒼い狼。
しかしながら、グレイとキョウコ以外のダンスパーティー参加者は、蒼く光る靄も蒼い狼の姿も見る事ができなかった。
キョウコはその狼を、古代日本の神格化されたニホンオオカミに因んで『真神』と呼んでいた。
マカミもまた超対称生命体であり、地球由来であるが、御頭様の敵と組んで古代から抵抗活動を続けて来た個体のうち1体である。
〈オオォーーンッ!!〉
マカミが、普通の人間には聞こえない声で一声吠えると、体毛の一部を針の様な形状にして、上空に飛ばした。
針の様な体毛――毛針――の群れは拡散し、ダンスパーティー参加者を取り囲む様にして、周回し始めた。
弾丸よりも速く動く、ごく細い針。
たとえ超対称生物と言えども、それを眼で捉えきれる者は、中級以下の下僕どもの中には殆どいなかった。
高速で周回するごく細い針の存在に気付かずにやって来た増援の下僕どもが、たちまち針の餌食になる。
下僕どもの阿鼻叫喚は、普通の人間には聞こえない。
それが聞こえているはずのグレイとキョウコ、そしてマカミは、まるで動じる事無く、ダンスパーティー会場をさりげなく抜け出す機会を待った。
そして、下僕どもの阿鼻叫喚を聞いた人間は、グレイとキョウコの他に二人いた。
ダンスパーティー会場から150mほど離れた、最上甲板から2階層下の、映画鑑賞会場近くの通路。
そこを歩いていた白いローブの若い女性と黒い牧師服の壮年男性は、立ち止まって耳を澄ませた。
「……始まったみたいですわね」
「……だいぶ、派手にやっておるようじゃな」
二人は、通路の先を見る。50mほど先の、一つ上の階層に続く階段。
普通の人間には誰もいない様に見えるが、二人の眼はそこに陣取っている存在の姿をはっきり捉えていた。
階段の前に立ちふさがっている、全く同じ姿に見える存在が、2体。
身の丈3mほど。体つきは人間に近く、筋骨隆々としている。
肌は青銅色で、金属の様な質感。武器や防具や衣服の類は一切装備していない。
生殖器らしきものは見当たらず、その代わり、大型爬虫類のそれに似た太くて長い尻尾が有る。
手足には鋭い鉤爪。大蝙蝠のそれに似た一対の翼。
鉤鼻と一体化したかのような嘴と、その内側にずらりと並ぶ小さい牙。
耳介は尖っている。頭髪が無い代わりに、後方に向かって湾曲したゴツゴツした質感の角が、側頭部から生えている。
そしてそいつらの眼は……通路で立ち止まった二人の姿を凝視していた。
明らかに警戒している。
「こっちも、派手にやりますわよ」
「手加減無用ぞ」
二人がそう言った途端、階段で陣取っている2体と同じ姿をした怪物が数十体、天井や壁や床から涌き出るかの様にして現れた。
この怪物どもは御頭様の下僕の中では中の上くらいの階級に属し、御頭様によって戦闘能力と索敵および検査能力を増強された超対称生物であった。
また、この下僕どもは通常物質との相互作用率を自らの意思である程度自由に制御できた。
当然、天井や壁や床を何の抵抗も受けずにすり抜ける事も、通常物質で構成された生物を牙や鉤爪で傷つける事も、自在にできた。
下僕どもは上下前後左右のあらゆる方向から二人に襲いかかり、八つ裂きにしようとした。
しかし、下僕どもの牙や爪が二人に届く前に、眩く輝く黄金色の光球が二人を包んだかと思うと、光球が爆ぜ、青銅色の下僕ども数十体は悉く灰燼と化して消滅した。




