独占欲
『白兎の涙』のお話を楽しみにしていただいてる閲覧者の皆様、お久しぶりです。長らく更新をせずに申し訳ありません。これからも精進して書いていこうと思いますので、よろしくお願いします。
刹那が納得してくれたことに安心した華夜は、視線を感じて、ふと顔を上げた。すると、明がじーっと華夜のことを見ていた。その視線に戸惑って、華夜は明に尋ねた。
「明先輩、私の顔に何かついてますか?」
「ううん、なんで?」
「すごく視線を感じるので、疑問に思いましたので」
「刹那のお気に入りの子がどんなの子なのかすごく興味があるからかな」
「お、お気に入りって、そんなんじゃ、っえ、な、なに!?」
華夜は明と話している途中で、いきなり手を引っ張られ気づいたら、刹那に後ろから抱き締められ手で目隠しをされてしまった。
「見るな。減る」
「刹那、今からそんなに独占欲丸出しでどうするのさ?華夜ちゃんに嫌われるよ?」
「別に。華夜が俺から離れることなんてないから無用な心配だ」
「でもその割に余裕ないみたいだけど?」
「…煩い」
「まぁ、いいや。華夜ちゃん、刹那と仲良くなるなら俺たちのこともよろしくね?ほら、康之も挨拶しないと。やっぱり、挨拶はコミュニケーションの第一歩だからね」
「明が騒がしいだけだろう。だが、一理あるか・・・。華夜、よろしく頼む」
刹那の手を目元から無理矢理外して、刹那の腕の中からどうやって抜け出そうか考えていた華夜は、明と康之の言葉にぺこり、と頭を下げた。
「(仲良く…、)あ、はい。よろしくお願いします」
「よろしくしなくていい」
「また、刹那は…。刹那と付き合うのは色々と大変だと思うけど頑張ってね」
「へ?そ、それはどういう」
「じゃあ、俺たちはそろそろホームルームが終わるころだろうから、先に教室に戻ってるよ。康之行こう。刹那、一時間目には間に合うようにね?」
「あぁ。刹那、程ほどにな」
「…わかった」
「それじゃあ華夜ちゃん、またね」
「えっ?ちょっと待って!(この状態の私を放って行っちゃうの?)」
刹那が自分の言葉と康之の忠告に渋々頷いたのを見た明は華夜の焦る態度も気にせず、二人へにっこり笑って手を振りながら、康之と一緒に空き教室を出て行った。そして、教室の扉が閉まるのを呆然とした様子で華夜は見送った。そんな華夜を見ていた、刹那は少し不機嫌そうに言った。
「いい加減、他の男を見るな。俺だけ見てろ」
華夜は刹那の不機嫌な様子に刹那から体を離して刹那と向かい合い、戸惑い気味に反論した。
「ベ、別に誰のことも見てなんかない」
「今、明のことを見ていただろう」
「そ、それは明先輩と話してたからで」
「もういい、他の男のことなんて聞きたくない」
「そんな、明先輩はあなたの友人でしょ?」
「それでも、だ」
そう言いながら、ますます刹那は不機嫌になっていく。その原因が先ほどの刹那と明の会話でなんとなく理解した華夜は恐る恐る尋ねた。
「もしかして、やきもちですか?」
「もしかしなくてもそうだ。悪いか?そんなことよりも敬語は使うなといった。それに『あなた』ではなく名前で呼べ」
「ご、ごめんなさい、刹、くん」
「いい子だ」
そう言うと刹那は先ほどまでの不機嫌は様子から一変して嬉しそうに華夜の頭を撫でた。そんな刹那の様子に華夜は思った。
(この人意外と単純なのかも)
その心の声が聞こえたかのように刹那はいきなり、華夜の両頬を引っ張った。地味に痛かったので手を外そうとしたが、いくらやっても刹那の手は華夜の頬から外れなかった。
「らにふるんれふか~?!」
「お前、今絶対に失礼なこと考えただろう」
「ほんなことないれす」
「顔にそう書いてあった」
(えっ?!)
びっくりして刹那の顔を見ると、呆れた表情をして華夜を見下していた。
「はぁ、お前、分かりやす過ぎだ。思ったこと全部顔に出てるぞ」
「ほんなころらいもん」
「そんなことある。無自覚なのは始末におえないな」
(なんかムカつく!こんな人タメ口で充分だよ!!)
華夜の刹那に対する警戒した態度を軟化させるための作戦に掛かっていることに気づかずに、華夜は自分をからかう相手に対する反抗心を燃やしていた。もちろん、そんな華夜の思惑に気づかない刹那ではなく、華夜の頬から手を離し、様子を観察して楽しんでいた。
「隠し事できないタイプか。俺としては面白いからそのままでもいいがな。それにしても、お前といると退屈しないな」
「それ、褒めてるの?」
「当前だ」
華夜がムッとしながら聞くと、刹那は口角を僅かに上げて不敵に笑った。その顔があまりにカッコ良く見えて、華夜は不覚にも見惚れてしまった。
「どうかしたか?」
「な、なんでもないっ」
慌てて誤魔化す華夜の様子を訝し気に見ていた刹那が再度、問い掛けるために口を開いた瞬間に校内に始業の予鈴が鳴り響いた。それを聞いた刹那は不機嫌な様子で舌打ちをした。刹那の急変した態度に戸惑っていた華夜は、刹那が自分に向かって手を伸ばしてきたので思わず後退しようとしたが、刹那の手が届く方が僅かに早かった。そして、刹那の手は動けずに固まる華夜の頭を撫でていた。
「悪い。別に華夜に怒ったわけじゃない。そんなに怖がるな」
「ほ、本当に?」
「あぁ、気にするな。もう少し華夜と話していたかったが、そろそろ教室に行かないとな」
刹那の不機嫌な様子が自分ではなかったことに、ほっとしていた華夜は刹那の思わぬ言葉に顔が赤くなり俯いた。そんな華夜の目の前に手が差し出されたのを見て、不思議そうに顔を上げた。
「行くぞ」
「えっ?」
「早く行かないと遅れるぞ」
そう言うと刹那は華夜の手を取って空き教室の出入り口に向かって歩き出した。華夜は刹那に手を引かれながら、刹那の横顔と刹那と繋いでる手を交互に見て少しビックリしていた。
(もっと手を引っ張って無理やり歩かされると思ったのに、全然そんな感じじゃないんだ。むしろ歩く速さを合わせてくれてるみたい。普段は強引で意地悪なのにたまに優しくするなんて、ズルい…)
だが、華夜の口元は思っていることとは裏腹に本人も知らぬ間に僅かに緩んでいた。
いかがでしたでしょうか?少しは刹那と華夜の距離も短くなったのではないかと思います。これからも刹那の程ほどの頑張りに期待して見守っていてくださいね。




