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EP 7

ルナハン騎士団本部、作戦会議室。

地図が広げられた円卓を囲み、重苦しい空気が漂っていた。

「作戦を説明する」

ゼノン団長が指示棒で地図の一点を叩いた。

「ルナハン周辺、南の湿地帯付近に『リザードマン』の斥候が確認された」

「リザードマン……ですか」

副団長のアークスが眉を顰める。

リザードマンは知能が高く、武器を扱う亜人だ。ゴブリンやオークとは違い、統率された戦闘を行う厄介な相手である。

「数はどの位ですかな?」

静かに口を開いたのは、壁際に控えていたクルーガだった。

その黄金の瞳は、まるで獲物を探すかのように鋭い。

「斥候からの情報によると、4体だ。だが、斥候がいるということは、近くに本隊がいる可能性もある」

ゼノンが汗を拭きながら答える。

「分かりました。私が精鋭部隊を編成して、早急に対処致します」

アークスが即座に請け負った。市民に被害が出る前に叩く。それが彼の正義だ。

「私も参加させて下さい」

クルーガが一歩前に出る。

その言葉に、ゼノンが慌てて両手を振った。

「ク、クルーガ殿!? 近衛騎士ともあろう方が、こんな危険な最前線に出るなど……! 万が一、貴方にお怪我でもあれば、皇帝陛下からお叱りを受けて、私の首が無くなります!」

中間管理職の悲哀を全身から漂わせるゼノン。

だが、クルーガは涼しい顔で首を横に振った。

「いえ。私は現在、ルナハン騎士団所属の騎士になりました。階級などお気になさらず、一兵卒としてお使い下さい」

建前は協力。だが、その真意は明白だ。

現場で何が起きるのか。例の「謎の存在」が現れるのか。それを自分の目で確かめるつもりなのだ。

アークスはクルーガの目を真っ直ぐに見つめ、手を差し伸べた。

「……分かりました。クルーガ殿、協力に感謝致します。貴方の剣があれば百人力だ」

「いえ、当然の事です。ルナハンの平和を守るため、全力を尽くしましょう」

クルーガは薄く笑い、アークスの手を握り返した。

ガシリ、と力強い握手。

だが、その掌を通じて、互いに相手の力量と腹の内を探り合うような、ヒリつく緊張感が走った。

同時刻。シンフォニア家、子供部屋。

ベビーベッドの中で、リアン(3歳)はイヤホンを耳から外し、深く息を吐いた。

「……そうか。リザードマン4体か」

盗聴していた騎士団の会話内容を反芻する。

父さん達は「明日の朝一番」で出発するつもりだ。

リザードマンは夜目が効くため、人間側にとって不利な夜戦は避けるのが定石だからだ。

(だが、その定石が命取りになる)

リアンは冷徹に分析する。

相手は斥候だ。一晩あれば情報を持ち帰るか、あるいは夜陰に乗じて街へ侵入し、寝込みを襲う可能性もある。

それに――。

(あのクルーガって黒豹野郎が同行するとなると、動きにくい。あいつの前で父さんが怪我でもしたら最悪だし、逆に俺が手を貸してボロが出たら、あいつは絶対に見逃さない)

あいつは、現場の「違和感」を嗅ぎつける天才だ。

アークス達と一緒に現場に行かせてはならない。

(父さん達が動きだすのは朝方だろう。……なら)

リアンの瞳が、暗殺者のそれに変わる。

(今夜中に仕留めるか)

アークス達が現場に到着した頃には、既にリザードマンは消えていて、「あれ? 誤報だったかな?」で終わらせる。

それが最も安全で、最も確実な解決策だ。

「……センチネル。出番だ」

リアンは意識を切り替えた。

枕元には、先日手に入れたばかりの『玩具のリボルバー(実弾装填済み)』と、何でも食べる掃除屋『喰丸』が待機している。

「今日は新兵器のテストだ。リザードマンの硬い鱗……この『38口径』でブチ抜けるか試してやる」

最強の3歳児による、誰にも知られない夜間掃討作戦が幕を開けた。

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