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サイドストーリー第八話 計画(フェリシア視点)

【フェリシア視点】


 外から元気なゴブリンの声が聞こえる。

 そっか、もう朝になったんだ。


 昨晩からずっと考えてた。

 もっと早くコーマを連れ出せてたんじゃないか、もっと強引に連れて行こうとしていたら従ったんじゃないかって。

 でも、どんなに考えても、もうアインさんは……。

 それにルシアさんまで。

 アインさんはともかく、ルシアさんを殺したのは私だ。

 私がコーマを連れ出せるなんて言うからルシアさんが……。


 ルシアさんとアインさんはギルドにとって必要な人たちだった。

 私なんか生きていてもギルドの役には立たない。

 せいぜい受付ができる人間が1人増える程度。

 でもルシアさんとアインさんは違う。

 2人はギルドの支部を率いる人達だ。

 私とは比べ物にならないほど、必要とされている人間だ。


 これからベルハイムに帰るにしても、どんな顔して帰ればいいんだろう。

 みんな必死に王立騎士団と戦う訓練をしているのに、私は訓練をせず、私に唯一できる受付すらしないで、ただ3か月、別のところで暮らしていただけ。

 そんな人間、ベルハイムのみんなにとっても要らない。

 私がベルハイムに帰るためには、なにか、成果が必要だ。


 倉庫の扉が開いた。

 入ってきたのは、コーマ。

 タイミングが良いね。

 私もコーマに用があったんだ。


「全部食べてくれたんだね。朝ご飯持ってきたからこれも食べてね」


 コーマがパンとスープが入った皿を置き、昨晩の食器を持って出ていこうとした。


「ねえ、コーマ」


 私が声を掛けると、コーマは止まってこっちに振り返った。

 そんな嬉しそうな顔しないでよ。

 私はこれから酷いことを言うんだから。


「コーマってずっと魔法の訓練をしてたんだよね。

 どのくらい強くなったの?」

「そうだな……。レアンドロにも多分勝てるくらいだ」

「……そう」


 レアンドロさん……ルシアさんの恋人。

 そう言えば、レアンドロさんも、コーマが殺したんだよね。


 ……やっぱり、コーマに対してすることに私が罪悪感を感じる必要なんてない。

 それに、もし本当にギルド最強のレアンドロさんに勝てるほどコーマが強くなったのなら、これほど好都合なことはない。


「もし、私が殺してほしい人たちがいるって言ったら、コーマは殺してくれる?」

「当たり前だ」


 うん、そうでなきゃ。

 もしコーマが迷うなら、私のこの3か月は本当に無意味なものになってしまう。


 ありがとう、コーマ。

 私に惚れてくれて。


「なら、この国の貴族を殺して。王立騎士団も、全部」

「王立騎士団?」

「王立騎士団は昨日の鎧を纏っていた人たち。

 貴族の次男以降で構成されてる」

「……俺に敵討ちをしてほしいのか?」


 敵討ちなら、真っ先に自分を殺してもらうことになるよ。

 でも、そうじゃない。

 コーマには沢山の貴族を殺して、それで最後は相打ちになって死んでもらわないといけない。


「それもあるけど、殺してほしいのは昨日の人たちだけじゃない。

 この国の、貴族全員」

「全員!?なんでそんなに恨んで……」

「……私、他の街からベルハイムに来たって言ったよね」

「ああ、最初に会ったときにそう言ってたな」

「私以外に他の街から冒険者になりに来たって人、見たことある?」


 コーマは覚えてないって顔をしてる。

 もしコーマの体感時間が私たちの10倍なんだとしたら、私にとっての3か月はコーマにとっては2年半。

 それだけ時間が経ってたら覚えてないのは無理無いのかも。


「街を移動するには騎士か冒険者に護衛してもらうのが当たり前。

 でも、そんなにお金を持っている人なら冒険者になんかならない。

 だから普通の人は生まれてから死ぬまで街から出ないのが当たり前。

 私は……ううん、私たちは貴族が課した重税が払えなくて街を追い出されたの。

 でも、ベルハイムに辿り着けたのは私だけ。

 ベルハイムの壁の外に着いたときにたまたまアインさんに出会って、その後はコーマの知っての通り」


 私の家族は全員ゴブリンに殺された。

 今でもゴブリンを恨んでるけど……でも、それもゴブリンに事情があったからだと思う。

 でも、貴族は違う。

 税を上げる、それだけならまだいい。

 ……良くないけど。

 でも、税を払えない人を街から追い出すのはおかしい。

 税が払えない人なら死んでも良いって言うの?

 人の命をなんだと思ってるんだ。


「あのとき、貴族が税を上げていなければ私たちは今でもあの街で暮らせてた。

 だから貴族を殺してほしいの」


 貴族は死んでいい。

 貴族なんていなくなればいいんだ。


「だからって、いくらなんでも貴族全員は……。

 その貴族だけじゃダメなのか!?」

「……貴族全員。コーマは殺してくれるの?」

「全員……」


 その貴族だけだったら、コーマなら殺せる。

 でも、私はコーマにも死んでほしい。

 だから貴族全員。


 コーマも貴族全員を殺すことの無謀さを分かってるみたいで、中々首を縦に振らない。


「そう。なら私はここを出ていく」

「出ていくって、どこへ!?」

「ベルハイム」


 コーマが貴族全員を殺すって言わなくても出ていくけどね。


「一日考えさせてくれ」

「うん」


 そう言ってコーマは倉庫から出て行った。


 コーマが承諾してくれなかったらどうしよう。

 私にはもうコーマと交渉できる材料が無い。

 もし承諾してくれなかったら、ここを出て行って、でも行くところなんて……。


 ◇◆◇◆◇


 それから一日が経った。

 コーマは私の横でぐっすり寝てる。

 私がこれだけ考えてる横で。


 恨めしくコーマを見ていると、瞼が動いた。


「おはよう、コーマ」

「おはよう、フェリシアは眠れた?」

「ううん、それより決めた?」


 一日経ったんだから、まだ決めてないなんて言わせないよ。


「貴族とは戦う。だからベルハイムには帰らないでくれ」

「……うん」

「だけど、すぐに貴族全員は厳しい。

 少し時間が掛かってもいいか?」

「……貴族全員を殺してくれるなら」

「ああ、それは約束する」

「うん。信じてる」


 良かった、コーマは貴族を殺してくれる。

 これならベルハイムに帰れる。


「ふわぁ……。なんだかコーマが貴族を殺してくれるって安心したからか、眠くなっちゃった」

「本当にずっと眠ってなかったの?」

「うん、これからどうするかずっと考えてて」

「そっか。朝ご飯を貰ってくるよ。それ食べたら少しは寝てね」

「うん、ありがとう」


 コーマが倉庫の外へと出て行った。


 いつこの村から脱出しようかな。

 エストーラの王立騎士団がどう動くか分からないし、早目にここを離れた方が良いよね。

 もう2日も寝てないから、起きてるのも辛い。

 寝て起きて、夜になって全員寝たら、そのうちに……。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


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次回の更新は2026年5月8日の予定です。

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