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第40話 再会

 高野の両手から濃度の高い遷移魔法がひとつずつ放たれる。

 濃度は俺のマジックブレードくらいで、拳大くらいの太さの棒状になり迫ってくる。

 全く問題無い。

 高野の魔法の軌道上に同程度の魔素で盾を作る。


 って、高野の遷移魔法が俺の盾を避けた!?

 その遷移魔法は真っ直ぐ俺に向かってきてる。

 やばい、このままじゃあの魔法に貫かれる!


 慌てて全面にバリアを展開し、なんとか防ぐ。


「すごいね。今のを防ぐんだ」

「これくらい当たり前だ」


 あっぶねえええ。

 この世界の魔法の殺傷能力を忘れてた。

 やっぱバリアは大事だわ。


「それで、それはいつまで出し続けるの?」


 俺のバリアを分かってるってことは、高野も魔素過敏症ってことだ。


「お前の魔法が消えるまでだ」


 高野の魔法は防いだ後も消えずに俺の周りを漂っている。

 高野との距離は10mくらいあるから、魔法の長さはそれ以上だ。

 俺もマジックブレードくらいなら消さずに残しておくが、これほどの長さは魔臓の消耗が激しすぎて維持しないですぐに消す。

 高野は魔臓の消耗を気にしていないのか?


「お兄様達じゃ敵わないわけね」

「……お兄様って呼んでるのか?」


 俺の知ってる高野はお兄様なんて呼ばないんだが。


「家でそう呼ぶように躾けられたの!

 私だってこう呼びたいわけじゃない!」

「そ、そうか……」

「ここからは本気で行くから。

 今のうちに遺言を考えてて」


 高野の拳大だった魔法が徐々に細くなり、糸くらいの細さになった。

 濃度もその分上がり……って、これインビジブルワイヤーか!?

 俺のインビジブルワイヤーの射程は5m程度。

 アインだって同じくらいだ。

 それを高野は10m以上の長さを出している。

 俺もインビジブルワイヤーの射程を長くしようとしたことはあるが、どうしても5m以上先では魔素が霧散してしまう。

 高野はどうやってこの長さを維持しているんだ。


「行くよ」


 俺の今のバリアじゃインビジブルワイヤーは防げない。

 もっと濃度を上げないと。


 魔臓をフル稼働させてバリアの濃度を上げる。

 バチンッと音がして、迫ってくるインビジブルワイヤーが弾かれた。

 だが。


「くっ……」


 魔臓に鈍い痛みが走る。

 この濃度のバリアは魔臓への負荷が高過ぎる。


「苦しそうだね。いつまで保つかな」


 高野の魔法は俺の周りを旋回しながら時々俺に迫り、バチンッと音を立てている。

 高野はこの魔法を出してても余裕なのかよ。


 ……このままじゃ消耗させられて負けるだけ。

 俺の魔法はこの距離じゃ射程範囲外。

 なら近づくしかない。


 上体を倒し、高野へ向かって一気に走り出す。


「えっ、ちょっと……」


 高野は戸惑いながらも周囲をキョロキョロと見てから、左へと走り出した。


 この世界に来てまで追いかけっこかよ。

 高野は俺から逃げつつも魔法は俺に攻撃を続けている。

 早く追いつかないと魔臓が保たない……!


 高野は庭を一周し、屋敷の門から出て街中へと入った。


「あっ……!」


 高野が地面の石畳の隙間に躓き転ぶ。

 そのときに靴が片方脱げ、地面へと転がる。

 ヒールだったのかよ。

 よくここまで走って逃げられたな。


「はあ、はあ……。もう限界」

「観念したか?」

「そんなわけ。ただ距離を取れなくなっただけでしょ」


 インビジブルワイヤーの射程の5m以内には入れたが、魔素をバリアに全部使っているからインビジブルワイヤーを使えない。

 どうする……?

 っていうか、俺は高野までも殺すのか?

 高野は貴族だが、この世界の人間ってわけじゃない。

 だから殺さなくても……。


「どうしたの?攻撃してこないの?」

「……今からでも遅くはない。俺と一緒に来ないか?」

「まさか、天沢くんと一緒にこの世界の人たちを殺戮しないか誘ってるの?」

「いや……」

「そんなことは絶対にしない。

 天沢くんと一緒に行くくらいなら死んだほうがマシ」

「……そうか」


 死んだ方がマシ……。

 そんなことを言われるなんて。

 いや、元々俺は人間は全部殺すって決めていたんだ。

 高野もその中の1人。

 迷う必要が無くなっただけだ。


 魔法は攻撃には使えない。

 少し気が引けるが、俺にはこれしか攻撃手段が無いんだ。


 拳を思いっきり握り、高野へと近づく。


「えっ、天沢くんの攻撃ってそれ?」

「そうだ」


 顔は……流石にやめとこう。

 固く握った拳を思いっきり高野の腹へと振るう。


「うっ……」


 高野が魔素で盾を作ったおかげで俺のバリアと相殺されたが、衝撃は消えない。

 俺の拳の衝撃波そのまま高野へと伝わったはずだ。


 高野のインビジブルワイヤーの攻撃が止み、高野はその場にうずくまった。


 やっとバリアを……いや、高野の魔臓はまだ活発に活動している。

 いつインビジブルワイヤーの攻撃が再開されてもおかしくない。


「はあ、はあ……。私の負けね」


 高野はお腹をさすりながら地面へとお尻を付けた。


「随分と諦めが良いんだな」

「私の攻撃が効かないんじゃ、このまま殴られ続けるだけ。

 殴り合いじゃ敵うわけないし」


 そういう割には魔臓の活動が収まる気配が無いんだが。


「……ねえ、なんで天沢くんは自殺したの?」


 自殺って……ああ、前世のことか。


「あの世界に俺の居場所は無かった。それだけだ」

「天沢くんの家庭環境は知ってる。

 でも、だからって自殺まですることなかったじゃない」

「原因は家だけじゃない。学校だって……」

「学校でのことも聞いたけど……。

 もし私が天沢くんに話しかけてたら、あんなことしなかった?」


 高野が話しかけてきてくれてたら……。

 もしそうだったら、俺は学校に居場所を感じられてたのか?


「どうだろうな」

「そう……」


 そんな仮定、意味ないだろ。

 時間が巻き戻ることなんて無いし、俺はもう引き返すことはできない。


「遺言はあるか?」

「結婚、したかったなあ」

「そうか」


 インビジブルワイヤーをできるだけ太くし、高野の左胸を貫く。

 高野は短く口から音を零し、地面へと伏せた。


 フェリシアと同じところを貫いた。

 これで、いずれ高野は死ぬはずだ。

 さようなら、高野。


 高野に背を向け、屋敷へと戻ろうと振り返ろうとすると、屋敷の正反対の方向、街の入口から何かが飛んできた。

 咄嗟にバリアを展開するが……なんだこの質量は!

 バリアのおかげで貫かれることは無かったが、後ろに大きく吹き飛ばされた。


 自分に飛んできたものに目をやるが……。


「岩?なんだこれは……」


 俺のすぐ近くには岩でできた棒状のものが転がっている。

 それはとてつもなく長く、足元から街の入口まで繋がっていそうだった。

 その先を見ると何人かの人間がこちらに歩いてきている。

 いや、その中に見覚えのある人間がいる。


「ゴルド……ノエル……ブルク……」


 トラメリアでお世話になった冒険者のゴルドと、トラメリアの冒険者ギルドの受付嬢のノエル、ベルハイムで外壁工事をしていたときの上司のブルクだ。


「コーマ……。この街は、本当にお前の仕業なのか?」

「ゴルド、どうしてこんなところに……?」

「お前を止めるため、って言いたかったんだけどな。

 それよりこれはお前がやったのか!?」

「……そうだ」

「なんてこった……」


 ゴルドは信じられないというような顔をしながら周囲を見回している。


「コーマ、これがお前がしたかったことなのか?」

「こうせざるを得なかっただけだ」

「俺はお前に命を奪うことがどういうことなのかを教えたはずだ。

 なのに、なんで……」


 そういえば、初めてゴブリンの死体処理をしたのはブルクに教えてもらって時だったな。


「俺にも色々事情があったんだ」


 ゴルドとノエル、ブルクはまだいい。

 この3人はこの世界の住人だ。

 ここにいたっておかしくはない。

 だが、お前はこの世界の住人じゃないだろ!


「イリス!なんで女神であるお前がここにいる!?」


 そうだ。

 こいつは俺がこの世界に来る前、真っ白な空間で出会った女神イリスだ。


「……私は女神なんかじゃない」

「はあ!?」


 イリスが女神じゃない?

 じゃああの空間で出会ったイリスはなんだったんだ?

 あそこにいたこと自体が女神である証拠じゃないのか?

最後まで読んでいただきありがとうございます!


感想や評価、リアクションをいただけると、とても励みになります!


次回の更新は2026年4月6日の予定です。


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