第36話 騎士団
本日は休日ということを忘れていました。
休日のときはその前後に投稿日をずらすということをしていたのですが、もう面倒なので、いっそのこと月金投稿に固定しようと思います。
倉庫を後にし、弓矢の練習場に向かう。
ダミアンとエラの弓矢の腕はフェリシアのおかげでみるみる上達し、最近では動く的に当てる練習をしている。
じゃあその動く的はどうやって用意しているかと言うと、俺が的となって走り回っている。
俺に矢が命中したら大変だが、そこは安心してほしい。
常に張っている鉄の鏃の矢だろうと弾けるバリアのおかげで俺に刺さることはない。
そのおかげか、最初は遠慮がちだった二匹とも、今では不意を突くように射ってくることもある。
……あいつら実は俺のこと殺したいの?
『おいコーマ!準備できたなら早く走ってくれ!』
『ああ!』
走る前だから一応していた準備運動を終え、一気に駆け出す。
走る場所は村の中ではなく森の中だ。
木々の間を駆け抜けたり地面から大きく出た根をジャンプで飛び越えたりと、森の中を縦横無尽に駆け回る。
前世ではこんなに運動できなかったが、今世ではこんなにも快適に動き回れる。
サッカー部のやつらとかこんな感覚だったんだろうな。
俺の近くをヒュンヒュンと矢が通り過ぎていく。
俺が真っ直ぐ走らないおかげで矢が当たる気配は一切無い。
ダミアンも真剣な表情で取り組んでいるが、こんな矢で俺に当てるなんて百年早い。
ダミアンの方を見ながら走っていると、目の前の木に気付くのが遅れた。
ブレーキをして急いで回り込もうとしたとき、ギィンと大きな音がした。
矢が当たった!?
『コーマ!今の音、当たったってことだろ!』
俺の足が止まったときを狙われた。
……くそっ、悔しいがあんな音が出たんだから、当たってないと誤魔化すのは無理だ。
足元に落ちた矢を拾い上げ、ダミアンの下へと向かう。
『初めてだな、おめでとう』
『これからはバシバシ当てていくからな!』
『ふっ、やってみろ』
もう油断なんてしてやらない。
全力で走り回ってやる。
『今回は当たったんだからコーマも矢を拾うの手伝えよ!』
いつもは走り回って疲れたとか適当なこと言って矢を拾うのサボってたからな。
今回くらい手伝ってやるか。
『仕方ないな』
鏃と矢羽をつなぐ矢柄の部分は折れて回収できないことがあるが、鏃は村では作れないため絶対に回収しなくてはならない。
ダミアンが矢を飛ばした場所をダミアン、エラ、俺の3人で探していく。
◇◆◇◆◇
何時間か練習し、太陽が中天に昇った頃、練習を中断し村へと戻った。
一度俺に矢が当たった後、コツを掴んだのかダミアンは2回、エラは1回俺に矢を当てた。
全く油断しなかったんだけどな。
『フェリシアが狩りのときは周囲の環境や獲物の行動を観察しろって言ってたことの意味がようやく分かったよー』
『うん、やっぱりフェリシアが教えてくれたことって正しいよね!』
そのアドバイスはフェリシアが農家の生まれだからじゃなくて、ベルハイムでお前たちゴブリンを狩るときに培った経験則なんだけどな。
『もうコーマなら何回でも当てられる気がするぞ』
『やってみろ。次こそは1回も当たらないで避けまくってやる』
『ああ!次も勝負だな!』
村に入り全体を見渡すが、フェリシアの姿は見えない。
まだ寝てるのかな。
弓のメンテナンスや折れた矢柄の入れ替えをしていると、狩猟組のゴブリンのデニスが村に駆け込んで来た。
『コーマ!ダミアン!人間が来た!しかも大人数だ!!』
人間が……!?
フェリシア以来、この森に人間が入ってくることは無く本当に久しぶりに人間が来た。
しかも大人数って、冒険者が狩りに来たってわけじゃないのか?
『デニス!大人数ってどのくらいだ!?』
『分かんない!とにかくいっぱいだ!』
いっぱいってことは絶対に5人や10人じゃないってことだ。
何をしにこの森に入ってきたんだ?
『カミルのところに行くぞ』
ダミアンとエラに声を掛けてカミルがいる村の中央に向かう。
カミルは騒ぎを察知していたようで中央の広場に立っていた。
『コーマ、何事だ?』
『人間が大勢森に入ってきたらしい』
『人間が!?なんだって急に……』
ここ数ヶ月人間が来ることは全く無かったのに、いきなり大人数で森に来るなんて絶対におかしい。
昨日はアインやルシアって人が晒し首になってたし、エストーラでは今何が起きてるんだ?
『そんなに大人数ならコーマに出て戦ってもらってる間に、他のやつがこの村に来ることもあるか……』
『そうだな。俺たちは村の近くで待機していた方が良いだろ。ダミアンとエラも良いな?』
『分かった』
『うん』
『カミル、フェリシアを起こしておいてもらえるか?』
『そうだな、こんな事態だ。後で起こしておく』
ダミアンとエラと共にエストーラがある方向に移動していると、突然周囲の森から村の家に向かって火が飛んでいった。
それは一筋や二筋なんてものじゃない。
村の周囲を覆うように何筋もの火が家に向かって飛んでいった。
それぞれの火は全ての家へと命中し、家へと引火する。
その中にはフェリシアが寝ている倉庫も……。
「フェリシア!!」
助けに行きたい気持ちと火矢を放った犯人をなんとかしなきゃいけない気持ちの間で葛藤していると、火が周り始めた倉庫からフェリシアが慌てて飛び出してきた。
良かった、フェリシアは無事だ。
フェリシアと目が合い、フェリシアがこちらに走ってきてくれた。
「コーマ、何が起こったの!?」
「分からない。だけど大量の人間が森に入ってきたって報告が」
「大量の人間って、騎士団!?……まさか、もう!?」
騎士団って、朝にフェリシアが殺してくれって言ったあの王立騎士団か?
それに、「もう」ってフェリシアは騎士団がここに来ることを知ってたのか?
考えを巡らせていると、森の中から金属製の鎧がガチャガチャと動く音が聞こえてきた。
「まさか本当にゴブリンの村にいるとはな。
しかし……2人?
片方はコーマで間違いないようだが、もう1人は誰だ?」
森から3人の金属製の鎧を着た男が3人出てきた。
そのうちの1人は羊皮紙と俺の顔を見比べている。
あれは教会に提出した魔法を使って犯罪を犯さないと誓った誓約書か?
誓約書には簡易だが似顔絵が描かれていたから、それと見比べているんだろう。
「お前らは王立騎士団なのか?」
「そうだ」
ゆっくり1人ずつ殺していくつもりだったが、まさかこんなにも早くに何人もの騎士に出会うことになるとは。
目の前にいるのは3人だが、火矢は村の周囲から放たれていた。
こいつらの他にも沢山仲間がいるんだろ。
「何をしにここへ来たんだ?」
「コーマ、お前を処分するためだ。
本来なら冒険者ギルドの仕事だが、その冒険者ギルドの解体が決定した今、その仕事は我々王立騎士団に引き継がれた」
「ギルドが解体!?」
なんで解体になったんだ?
もしかして、昨日アインだけでなくルシアまで晒し首になっていたのは解体が原因だったのか?
「その引き金を引いたのは貴様だと言うのに、何を今更」
俺が解体の引き金?
何の話だ?
「まあいい。ゴブリンもろとも処分することは決定している。
そっちの女もついでに処分しておくか」
「待て、フェリシアは関係ないんだろ」
「だが冒険者ギルドの関係者だろう?
それなら多少なりとも魔法を使えるはずだ。
魔法を使える平民は全員処分。
これも決定事項だ」
魔法を使える平民は殺すって、そんなの理不尽過ぎるだろ。
冒険者ギルドで魔法講習を受けたことがあるやつは全員殺害対象じゃねえか。
……フェリシアだけでも逃がしたかったが、難しいか。
なら、ここで全員殺せばいいだけのことだ。
体力は十分回復した。
魔臓も全く消耗していない。
俺ならやれる。
「フェリシア、離れていろ。こいつらを全員殺す」
「うん」
フェリシアが村の中央のゴブリン達が集まっているところへ向かっていった。
『ダミアンとエラも行け。
こいつらの鎧じゃ弓矢は効果が薄い』
『わ、分かった!』
『頑張ってね』
ダミアンとエラも村の中央へと行き、ここには俺と騎士の3人だけとなった。
「私たちを殺すと言ったが、そんな濃いウィンドバリアをずっと張っていて、私たちに勝つつもりなのか?」
ウィンドバリアって、この魔素のバリアのことを言っているのか?
変な名前だな。
「あいにく、この程度じゃ魔臓は消耗しないんでな」
「ほう……。流石レアンドロを倒しただけある」
いや、レアンドロを倒したのは俺じゃないんだが。
ゴブリン達に助けてもらってなんとか勝てただけだ。
まあこの勘違いを利用させてもらうか。
「俺との格の違いが分かっただろ?
ならさっさと撤退したらどうだ?
今なら追いかけないでやる」
流石に何人いるか分からないほとの大群相手じゃ無事じゃ済まないかもしれないし、他の騎士がどう動くかが分からない。
村の中央で集まっていれば多少は抵抗できるだろうが、それもいつまで耐えられるか分からない。
「貴様を倒せば、私がレアンドロよりも上だったということが証明できる。
撤退する理由なんて無い」
「そうかよ……」
やっぱり全員殺すしか無いし、その上一人ひとりに時間をかけられない。
フェリシア、無事でいてくれよ。
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次回の更新は2026年3月23日の予定です。




