87話 イカの恩返しですわ!
「アーシア、大変だ!」
「海岸にアイツがやってきたんだ!」
少し肌寒さが増してきたとある日。
森林エリアの拠点でマヨルカと一緒に冬支度をしていたわたくしの元へ慌てた様子のレンとゼンがやって来る。
「あらあら、そんなに慌ててどうしたのかしらあ?」
「アイツってなんですの?」
「クラーケンだよ! クラーケンがやってきたんだ!」
「へ? ク、クラーケンですの?」
クラーケンといえば、わたくしがこの島に来たときに、わたくしひとりを島に置き去りにして帰ろうとしていた軍艦を襲った巨大なイカの魔物だ。
この間、オオルカたちに食材として捕まって島に連れて来られてたけど、今回も似たようなことが起きたのだろうか。
「またオオルカたちが連れて来たんですの?」
「違うよ!」
「宝箱を持ってきたんだ!」
た、宝箱……?
―― ――
「キュッ……キュッ……」
「きゅ? きゅっきゅー」
レンとゼンに連れられて浜辺エリアに向かうと、1匹で浜辺を覆ってしまうくらい巨大なクラーケンがチャンドラとなにか話していた。
チャンドラの足元には海藻まみれの古びた宝箱のようなものが。あれをクラーケンが持ってきたのだろうか。
「キュッ、キュ」
「きゅっきゅっきゅー」
「チャンドラ、クラーケンが何て言っているか分かるんですの?」
「んー、なんとなくな」
さすがアルラウネ族。
ハンマーヒヒともコミュニケーションが取れていたし、この辺りに生息する魔物とある程度話すことができる能力を持っているのだろうか。
「チャンドラ姉ちゃん、クラーケンはなんて言ってるんだ?」
「クラーケンが、この前のお礼にこの箱をやる、って言ってる」
「この前のお礼って、オオルカから助けたことかしら?」
「キュッ……キュ」
「そうだと言っている」
なるほど、オオルカたちから助けて海に帰した時のお礼としてこの宝箱を持ってきてくれたのですね。
「それにしても、どこからこんな宝箱を持ってきたのかしら」
「島の周りにいっぱいあるって言ってたぞ」
「この辺に宝箱がいっぱいあるの!? すげー!」
「おれ、もっと素潜り練習しようかな」
宝箱……もしかして、この辺りで沈没した船などが沈んでいるのかしら。
童話に出てくるような、大昔の海賊船とかもあったりして。
「アーシア! この宝箱、開けてみようぜ」
「そうですわね……でも、もしかしたらトラップが仕掛けられているかもしれません。開けたら爆発したり、中から刃物が飛んできたり、魔物が潜んでるかも」
「そ、それは嫌だな……」
「じゃあどうするんだ? 宝箱の安全な開け方とか知らないぞ」
「あの人をお呼びしましょう」
……。
…………。
「というわけで、岩山エリアからシュリーを連れてきましたわ」
「なんじゃなんじゃ、今忙しいんじゃが……」
「「シュリー先生! 宝箱開けてくれ!」」
「なにっ宝箱じゃと!? よーし、吾輩に任せるのじゃ!」
レンたちがシュリーを宝箱の所まで案内して、開錠を頼む。
その間、わたくしとチャンドラはクラーケンと遊んでいた。
クラーケンの大きな触手の根元から先に向かってスライダーのように滑っていき、そのまま海にドボン。
これ、とってもエキサイティングで楽しいですわ。
「アーシア、チャンドラ! 宝箱が開いたぞ~!」
「来ましたわ!」
「カニ、入ってるかな」
カニは入ってないと思いますの。
「ふ~む、これは……」
「シュリー、宝箱の中身は何が入っていましたの?」
「これじゃ」
シュリーから1枚の紙を渡される。
もしかして、宝の地図とかだったり……!?
「これは……似顔絵ですの?」
「ここに『パパ、せんちょのおしごとがんばって』って書いてある」
「子供からのプレゼントかあ」
……なるほど、これはたしかに宝物ですわね。
「チャンドラがカニの絵を足してあげる」
「やめなさい」
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