82話 新たな漂着者ですわ!⑤
「海賊、はやくこないかなー」
「ついこの間出発したばかりですわ。次に島に来るのはまだまだ先でしょう」
先日、ロドス海賊団に好物のヘビ肉の仕入れを頼んだチャンドラ。
待ちきれないのか、毎日のように浜辺エリアまでやってきては水平線の向こうを眺めてソワソワしている。
「ぎゃおっ」
「ぎゃおぎゃお~」
「リョク、スイ。あまり海の方に行くと溺れちゃうから気を付けるんですのよ」
エメラルドドラゴンのリョクとスイは生まれてから驚異的なスピードで成長を続け、ひと月も経たないうちに若干危なげながらも飛べるようになり、今は海で泳ぎを練習中だ。
最近の悩みとしては、ご飯を食べた後とか鼻がくすぐったい時に、げっぷやくしゃみをしながら炎を吐き出したりしちゃうこと。
この辺も成長すればコントロールできるようになるのかしら。
「キュイキーイ!」
「あっオオルカだ。アーシア、オオルカが遊びにきたぞ」
「あの子たちも毎日飽きずに良く来ますわね」
巨大な白黒のサメのような魔物、オオルカの子供たちも相変わらず頻繁に遊びに来てくれる。
最近はスイとリョクとも仲良くなって、背中に乗せて泳いだり、思いっきり上に打ち上げて遊んだりしている。
見てると少しやりすぎないかヒヤヒヤしちゃうけど、みんな楽しそうなので問題はなさそうだ。
「ん~? アーシア、あのオオルカ、背中になにか乗せてる」
「背中に……? あっ本当ですわ!」
こちらに向かって泳いでくるオオルカの中に1匹、背びれに何かを引っかけている子を発見する。
なんだろう、服の袖のような……
「って、人ですわ! 誰か乗ってますわ!」
―― ――
「キュイキュイ!」
「ありがとうオオルカちゃん」
「ご褒美に魚をやるぞ」
「キュイッ!」
オオルカの背中に乗っていた人を降ろして砂浜に寝かせる。
背丈は低く、幼くも整った顔立ち、白い肌に輝くような金色の髪。そして特徴的な長い耳……
「この方は……エルフ族の、女の子?」
「うーん、息してない。身体も冷たい」
顔色は非常に悪く、青白いくらいだ。
手首を触っても、脈動が感じられない。そしてとても冷たい。
「もしかして、もう……」
「……『地上ヘノ漂着ヲ確認。起動シマス』」
「わぁっ!?」
「あ、生き返った」
口元……というよりは首の後ろ辺りから謎の機械音がして、彼女の身体が徐々に温かくなってくる。
ど、どういうことかしら? あまり状況が飲み込めないのだけれど。
「うーん……パッチリ。お、ここはどこじゃ?」
「こ、ここはマージンス島ですわ」
「マージンス島? 聞いたことないのう。最近隆起して出来た島か?」
「チャンドラ、昔から住んでるぞ」
女の子がゆっくりと起き上がり、頭の横で結んだツインテールがピョコピョコと触角のように動いて周囲の状況を確認している。
さっきの機械音も含め、一体どういう仕組みになっているのだろう。
「ふむふむ……今の太陽の位置、星の位置、潮の流れ……ここはもしや、魔物島か?」
「そうですわ。今はマージンス島と呼ばれていると言いますか、わたくしたちが呼んでいると言いますか」
「そうじゃったかそうじゃったか。それで、お主たちが吾輩を助けてくれたのだな?」
「わがはい、チャンドラとアーシアが助けた」
どこか古めかしい言葉遣いをするエルフ族っぽい女の子。
エルフ族は長命種なので、こう見えてかなりお年を召しているのかもしれない。
「おっと、自己紹介が遅れたのじゃ。吾輩は魔装エルフのシュリー。元ギリス王国の魔装武器開発部、特別顧問じゃ」
———— ――――
読了いただき、ありがとうございます!
面白かったら下の評価から★を付けていただけると執筆の励みになります!
———— ――――




