73話 命を繋げる
……。
…………。
「ど、どうなりましたの?」
「わ、わからん……」
「ばっくふぁいやー」
わたくしたちが急いで洞窟の外に逃げ出した後、ものすごい勢いで洞窟内が熱くなって青緑色の炎が噴き出してきた。
どうやらエメラルドドラゴンが魔力を込めて吐き出した特殊な炎で、火が消えた後は熱さなども無く、洞窟の壁が煤だらけになっているということもなかった。
「あの場にいたキングリザードを狙い撃ちにした攻撃だったか……しかし、巻き込まれてたらオレたちも火だるまになってたかもな」
「か、間一髪ですわ……」
「…………」
「チャンドラ、どうしましたの?」
「エメラルドドラゴン、力尽きた」
「……え?」
洞窟内の状況を確かめながら、キングリザードとエメラルドドラゴンが対峙していた奥の部屋に戻ってみる。
するとそこには、黒焦げになった巨大な塊と、タマゴを抱えて息絶えたエメラルドドラゴンがいた。
「……死んでる、な」
「ど、どうしてですの? キングリザードと相打ちになったんですの?」
「キングリザードはさっきのブレスで燃え死んだが、エメラルドドラゴンにとってもあれはリスクのある攻撃だったというわけだ」
ミロスの説明によると、ドラゴンのブレスはかなり体力を使うもので、元々飲まず食わずでタマゴを守って満身創痍だったエメラルドドラゴンが突然現れたタマゴを狙う強敵に向かって最後の力を振り絞り、ブレスを撃って相手を倒し、自分も力尽きて死んでしまった、ということだった。
「そんな、そんなのって無いですわ……」
「タマゴを完全に抱えて守ることは難しい、満身創痍で動きも鈍くなっている……そんな状態を自分で分かっていて、キングリザードからタマゴを守り抜くには自分の命と引き換えにしてでもあのブレスを撃つしかなかったのかもしれない」
「父親はいませんの?」
「エメラルドドラゴン、昔から1匹だけ。他のドラゴンは見たことない」
「本来なら母親のドラゴンがタマゴを守っている間、父親が狩りをして母親の食事の世話をするんだろうが、何らかの理由で一人でタマゴを産み、育てていかなければいけないような状態だったのだろう」
ミロスが息絶えたエメラルドドラゴンを探って二つのタマゴを取り出す。
幸い、タマゴにダメージはなさそうだ。
「そのタマゴはどうしますの?」
「ここに置いていたら他の魔物に食べられてしまうかもしれんな……まあそれもまた、自然の摂理か」
「そんな、せっかく助かったのに……」
母ドラゴンが命を賭して守ったタマゴ。
どうにかして助けてあげたいという気持ちと、わたくしたち人間族が手を出してはいけないという気持ちで考えが停滞してしまう。
「エメラルドドラゴン、島の頂点。いなくなったら、危険な魔物が増える」
「島の生態系維持のためにはドラゴンがいた方が良いってことか」
「そ、それならわたくしたちが安全に暮らす為にもこの子たちを守って育てた方が良いですわ! ねえミロス!」
「わ、分かった分かった……でも生まれるかは分からんぞ」
「きっと生まれますわ!」
こうしてわたくしたちは、大きなエメラルドドラゴンのタマゴをふたつ抱えて本拠地へと戻ることにした。
「ドラゴンのお母さん、この子たちは責任もって育てますわ……わたくしとミロスが」
「子育て、がんばってなー」
「チャンドラも手伝えよ」
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