72話 キングリザードですの!?
「……いましたわね、キングリザード」
「大人、でっかい」
「言った傍からこれか……」
山の中腹辺りで休憩をしてから調査を再開したわたくしたちは、あと少しで上層の火山地帯に入るというところで巨大な魔物を発見し、相手に見つかる前にとっさに物陰へ隠れていた。
巨大な成体のキングリザードだ。
さっき食べてしまったキングリザードの親なのかは分からないけど、ミロスに聞いていた通り、かなりの大きさだ。
「どうする? これ以上進むと向こうに気付かれるぞ」
「ここから先の調査はまた今度にしましょうか」
キングリザードがいる場所から上は草木の無い岩場になっており、その先を更に上ると頂上の火口があるはずだ。
食材とかはなさそうだし、この辺りまで調査が出来れば十分かもしれない。
「あ、トカゲがどこかに入ってく」
「あの岩場の横に洞窟があるのかもしれない」
わたくしたちの進行上にいるキングリザードが岩陰に移動して姿を消した。
どうやら洞窟のようなものがこの先にあるらしい。
もしかしたらキングリザードの棲家でもあるのだろうか。
「どうするアーシア、今のうちに頂上まで行くか? それともキングリザードが戻って来る前に下山するか?」
「そうですわねえ……」
確かに、実際に見たキングリザードの成体は大きくてかなり強そうだった。
見つからないうちに今日はもう撤退した方が良いだろう。
「ミロス、チャンドラ。本日の調査隊活動は終了して……」
『ギャオオオオオオオオオッ!!』
「なっなんですの!?」
キングリザードが消えた岩陰の先から、魔物の叫び声のようなものが聞こえてきた。
「今のはキングリザードの鳴き声ですの!?」
「いや、キングリザードはもっとこう、シュウ~っていう感じの噴気音を出しはするが、あの鳴き声は……」
「あれは、エメラルドドラゴン」
「「!?」」
「赤ちゃんが、ピンチかも」
―― ――
「い、いましたわ……!」
「トカゲと、ドラゴン」
「見ろ、ドラゴンの足元にタマゴがあるぞ」
キングリザードを追って岩場へ向かうと、そこには巨大な洞窟への入り口があった。
洞窟の中に入ってしばらく先へ進むと、先ほど見かけた巨大なキングリザードと、そのキングリザードよりもさらに巨大な美しいエメラルドグリーンのドラゴンが対峙していた。
チャンドラの言っていた通り、ドラゴンはこれまた大きなタマゴを二つ抱えていた。
おそらく、タマゴを食べに来たキングリザードから守ろうとしているのだろう。
「あれがエメラルドドラゴン……普通に考えれば、あのドラゴンが負けるとは思えませんが……」
「キングリザードは力で劣る分、小回りが利いて動きも素早い。隙をついてタマゴをかっさらおうとしているのかもしれない」
ミロスの説明を聞いて改めて状況を確認すると、たしかにキングリザードはエメラルドドラゴンを倒そうとしているというより、どうにかして奪おうと様子を伺っている感じだった。
「ドラゴン、弱ってる」
「長い期間、飲まず食わずでタマゴを守っているのかもしれないな……」
「ど、どうしましょう……」
「これも自然の摂理だ。こちらに害が及ばない以上は手を出さない方が良い」
「ミロス……」
タマゴを守るドラゴンも命がけだが、キングリザードだって食事にありつくために命がけなのだ。
わたくしたちが介入するべきことではないのだろう……
「シュルルル……!」
「ギャオオオオオウ!!」
タマゴを身体の下に隠し、身体を丸めて威嚇するドラゴン。
しかし、動きはどこか鈍いように見える。
「シュ~……ッ!!」
「あっいきましたわ!」
素早い動きで壁を登り、背後からドラゴンのタマゴを狙いにかかるキングリザード。
しかし、それを見たドラゴンは頭を上げて口を開き……
「っ!! まずい!! 急いで洞窟から脱出するぞ!!」
「わ、わかりましたわ!」
「てっしゅ~」
何かを察したミロスに促されて洞窟から走って逃げる。
「ミロスッ、ど、どうしましたの?」
「いいからとにかく全力で走れ! このままだと……」
「このままだと?」
「オレたちまでキングリザードと一緒に丸焼きにされるぞ!!」
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