71話 山岳エリアですわ!
ロドス海賊団が出航してからしばらく経った。
マージンス島から他の地域を行き来して取引するには中々時間がかかりそうだから、彼らの手腕に期待して気長に待とう。
あ、今はもう彼らではなくて彼女たち、でしたわね。
「さあミロス、チャンドラ、行きますわよ……山頂アタックですわ!」
「おー」
今日からわたくしたちマージンス島調査隊は、草原エリアの背後にそびえる巨大な火山の調査を開始する。
隊員はわたくしとミロス、そして派遣隊員の地元民チャンドラ。たまにシャンドラが増えたり増えなかったり。
「なあアーシア、山頂は危険じゃねえか? チャンドラの話によるとドラゴンがいるんだろ?」
「そういえばそんなこと言ってましたわね」
チャンドラが前に話していた、山に棲んでいるというエメラルドドラゴン。
ガーちゃんに掴まって上空から島を確認したときは、山の周りにそれらしき魔物は見つけられなかった。
「エメラルドドラゴン、ちょっとピリピリな雰囲気」
「チャンドラはドラゴンに会ったことがありますの?」
「あるけど、最近は見てない。赤ちゃん生まれるらしい」
「どこかに篭ってタマゴを守っているのか……」
わたくしたちが島に来てからもう少しで半年が経過するが、ドラゴンを見た人はいない。
どうやらタマゴを孵化させるために山のどこかに隠れてじっとしているらしい。
「それならば今こそ調査するチャンスですわね! ドラゴンに見つからないようにこっそりと山を探索いたしましょう」
「なんだかコソドロみたいだな」
「アーシア、コソドロ」
「わたくしはなにも盗んでませんわ!」
―― ――
「はあ、はあ……つ、疲れましたわ……」
「まだ半分も登ってないぞ」
「アーシア、もっとこっそりしないとドラゴンに見つかる」
「こ、呼吸音は無理ですわ……」
山岳エリアの調査を始めてしばらく経った。
わたくしは登山自体ほとんど経験がなく、道の無い山の中を登るのでもうヘトヘト。
島暮らしを始めてそこそこ体力がついたと思いましたが、山はまた違いますわね……
「まあ、一旦この辺りで休憩にしようか。色々と収穫もあったしな」
ミロスが背中に抱えた荷物をおろす。
ここまで山を登りながら採取した果物や討伐した魔物なんかの食材だ。
草原エリアの湖に続く川も発見し、魚を獲ることもできた。
これで食料確保の手数が増えたので、本日の調査の収穫としては十分だろう。
「ミロス、チャンドラこれ食べたい」
「ん? ああ、さっき倒したキングリザードか」
果物を採取していたときに襲いかかってきた、チャンドラより一回り大きいトカゲ型の魔物。
ミロスによるとキングリザードという魔物らしく、このサイズでもまだ子供らしい。
「自分を食べようとしてきた相手なのに、チャンドラはよく平気ですわね」
「食べて、成敗」
なるほど、中々見習いたい考えですわ。
でもチャンドラの場合はアルラウネ族の天敵であるヘビやトカゲが好物だから、ちょっと襲われ待ちみたいなところもありますが。
「子供がいるということは、近くに親もいたりしますの?」
「爬虫類型の魔物は子育てをしない種類が多い。生まれたばかりの幼体ならまだしも、このサイズであれば既に巣立って単独行動をしていたのだろうな」
成長しきった大人のキングリザードは、ミロスでさえも丸呑みにできてしまいそうなくらい大きいという。
今のところ遭遇してはいないが、この山のどこかには生息しているのだろう。
「ばったり出くわさないように注意しませんとね」
「出食わす? デカいといっぱい食べられるな」
「出会ってすぐに食べるという意味じゃありませんわ」
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