42話 強制労働ですの……?
ヨーロンス大陸、ケルディス鉱山協同採掘事業・アイル王国支部。
「……なに? 労働者の一部が国外逃亡?」
「はい。逃亡したのはドワーフ族の集団です」
「ああ……あの職人ギルドから連れて来た連中か」
「ええ、前々からケルディス鉱山での採掘作業には反対していましたが……」
「ふん、戦争が終わって武具の需要が激減したのだから、大人しくツルハシを握っていれば良いものを……」
「……それで? 逃亡者らの行方は掴めているのか?」
「それが、こっそりと作っていた船を使って海上へ逃げたらしく……しばらくは魔物使いに命じて後を追わせていたのですが、魔物島のある海域に行ってしまいまして」
「魔物島といえば、前に不要な傭兵どもを流刑にした所か」
「はい……魔物使いによりますと、魔物島付近の海域で巨大な魔物が現れ、船ごと消息不明になったと」
「まあ、魔物に襲われて十中八九難破したでしょうなあ」
「……我が国の貴重な人材を失い、残念だ。それで? 鉱山の人員補充はどうする」
「アージンス大陸から裏ルートで奴隷でも仕入れましょう。輸送に海賊を使うので少し金はかかりますが、ケルディス鉱山の採掘が上手くいけばタダみたいなものです」
―― ――
「なるほど、ケルディス鉱山は今そんなことになってんのか……」
「強制労働だなんて、酷いですわ……」
スコットの話によると、ギリス王国とアイル王国の戦争が終わった後、ケルディス鉱山の魔石採掘を進めるうえで人手不足になり、力のあるドワーフ族などの亜人が強制的にケルディス鉱山で働かされているという。
「オイラが所属していた職人ギルドで働くドワーフたちが突然鉱山へ連行されてな。それからはひたすらに鉱山の開発作業だ。大工のオイラを含め、武器や防具の職人として活躍していた者が、ただツルハシを振り下ろすだけの日々……これに耐え兼ね、オイラたちは鉱山から逃げ出したんだな」
「……それで、他のドワーフたちはどうしたんだ?」
「一緒に作った船でアイル王国から脱出したんだがね……ほれ、あの浜辺に打ち上げられてる船だ」
「……壊れてますわ」
ケルディス鉱山に連れ戻されないために国外へ逃げ出したスコットたちだったが、船で海上を彷徨っているうちに魔物に襲われ、壊れた船と共にスコットだけがこの島へ流れ着いたということらしい。
「あれは恐ろしい、巨大なタコの魔物だった……みんな海に投げ出され、おそらく、オイラ以外はもう……」
「スコット、落ち込む気持ちも分かりますが、今は強く生きなければなりません。散り散りになってしまった仲間の分も、あなたは生きるのです」
「アーシア嬢……」
「アーシアの言うとおりだ。オレもアーシアも同じような境遇だが、今はとにかくこの島でがむしゃらに生きている。自分に出来ることを、精一杯にやってな」
「そうか……うん、そうだな」
スコットは立ち上がり、海に向かって三回、左足を砂浜に叩きつけた。
これはドワーフ族がお葬式のときにやるお別れの儀式のようなものだと後でスコットが教えてくれた。
「改めて、オイラはドワーフ族の大工職人、スコットなんだな。これからよろしく頼んます」
「ああ、よろしくな、スコット」
「これから一緒に頑張っていきましょう!」
こうして本日、マージンス島にドワーフ族のスコットが新たな島民として加わったのであった。
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