35話 焼きヘビパーティーですわ!
「ふう、さっぱりしたわあ」
ジャングルバイパーの返り血でスプラッターなことになっていたマヨルカと『ミロスの泉』に寄って服と身体を綺麗にする。
「マヨルカのローブはまっ黒だから、返り血が目立たなくて良いですわね」
「なあにアーシアちゃん、その暗殺者目線の感想みたいなのは」
「な、なんとなくそう思っただけですわ」
マヨルカが作ってくれたわたくしのローブは淡い空色だから、汚れが目立ってしまうのが欠点ですわね。汚さないよう大切に扱わないと。
「いい? アーシアちゃん。本物の暗殺者っていうのは返り血で汚れたりしないのよ」
「そうなんですの?」
「基本はやっぱり毒殺かしらねえ」
「…………」
そういえばマヨルカは元ギリス王国軍の毒薬調合師だった。
「ジャングルバイパーくらい大きな魔物だと毒殺も難しいですの?」
「やろうと思えばやれるわよお。この島だと使える素材や器材に制限があるから、あまり強い毒は作れないけどねえ。長い間苦しませて殺すことになっちゃうわあ」
「それはちょっと、嫌ですわね……」
「それに、毒殺したお肉は食べられないしねえ」
「それはかなり嫌ですわね!」
―― ――
「ただいま戻りましたわ~……って、なんですのこれ!?」
「なにって、ジャングルバイパーの鉄板焼きだが」
「めちゃめちゃ炎上してますの!」
「ヤシの実の油、かけて焼いてるから……」
浜辺に戻ると、ミロスとトゥーイが捌いたジャングルバイパーをグルグル巻きにして大きな石の上で焼いていた。
とぐろを巻いたヘビというか、大きなソーセージみたいですわね……
「ジャングルバイパーを倒したマヨルカには一番美味いヤツをやろう」
「いや、別にいらないわあ……」
「ヘビの舌と目ん玉だ。食え」
「絶対無理。アーシアちゃんにあげるわあ」
「わ、わたくしだっていりませんわ!」
「そうか? 美味いんだが……」
ミロスがジャングルバイパーの目玉に塩を振りかけて一口で頬張る。
す、すごいワイルドですわ……
「舌、食べていい……?」
「おう、食え食え」
「やった……ガーちゃんにもあげよう」
「ギィィ!」
トゥーイはジャングルバイパーの細長い舌をガーちゃんと分け合って食べている。
本当に美味しいんだろうか……? ちょっと興味が湧いてくる。
「さあ本体も焼けたぞ。ジャングルバイパー、というかヘビ型の魔物の肉体は人間でいう所の背骨と肋骨がずーっと連なっていて、腹側から骨は出ていない。だからこうやって背中側を持って、腹側の肉にかぶりつくんだ」
ぶつ切りにしたジャングルバイパーを裏返してお腹辺りにかぶりつくミロス。
ヘビを食べたことがないからちょっと躊躇してたけど、こう見るとけっこう美味しそう……かもしれない。
「ジャングルバイパーはどんな味ですの?」
「もぐもぐ……そうだなあ、前に食った鉄骨ウミガメに近いかもしれない」
「あらあ、二人ともそんなの食べてたのお?」
「カメ肉は美味しかったですの!」
勇気を出して、わたくしもジャングルバイパーのお腹にかぶりつく。
「もぎゅ、もぎゅ、もぎゅ……ちょっと、噛み応えがすごいですわね……」
「全身がほとんど筋肉みたいなもんだからな。かなり淡泊な肉質だから、塩を多めに振ってある」
「もぎゅ、もぎゅ……でも、あっさりしてて思ったよりも食べやすいですわ。なんだかお魚みたいな風味もありますの」
「そうねえ、案外悪くないわねえ」
様子を見ていたマヨルカも一口食べると意外といけることが分かったのか、その後は普通に食べ進めていた。
「ヘビ肉、美味しいですわ!」
「アーシア、目ん玉もう一個あるけど食うか?」
「それは遠慮しますわ」
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