第24話 侍の末裔
風魔忍軍が遂に城内で戦います
【2001年8月30日PM20時32分】
天守閣に辿り着いた風魔忍軍を待ち構えていたスーツ姿の1人の男が既に日本刀を鞘から抜いて城外の満月を眺めていた。小太郎達を背にしているのにも関わらず、一切の隙がない。その男が持っている刀にテムジンが
「おい、あれ村雨じゃねーか?」
と気付く。
【村雨】
妖刀であり、抜けば刀のなかごから露を発生させ、寒気を呼び起こす。使い手の殺気が高ぶれば水気を増し、人を斬れば刀身に帯びた水気が勢いよく流れ刃の鮮血を洗い落とす。振りかぶれば切っ先からほとばしる水のありようが、あたかも葉先を洗う村雨の如く血を洗い流す。
そんな村雨を既に抜いている男が背を向けながら
「私は里見ファイナンス総帥、里見幻之丞。城下にいた侍の末裔である八犬士をよくぞ倒した。だが、この金山はこの真の侍である里見ファイナンスの所有物だ。」
と名乗ると、テムジンが
「ん?里見ファイナンス・・・あー!オメー!昔俺の一族から現金を騙し取った悪徳詐欺師の!」
幻之丞は
「何を人聞きの悪い・・・あれはあなたの一族から譲渡した物ですよ?」
だがテムジンが
「嘘つくな!俺は今でも忘れてねーぞ!オメーが口巧みに現金せしめたんだろーが!」
だがそれでも
「ふふふ・・・騙した等と人聞きの悪い・・・」
小太郎がテムジンに
「どーいう事だよ?」
と尋ねると、テムジンが
「こいつは昔、俺の一族が軍事資金を調達しようとした所にやって来たんだ。ところが金を払った途端にドロンしやがった!おかげで俺の一族は銃火器を手に入れられず落ち武者となって周りの奴らに次々と狩られてった。残った俺達は山賊に成り下がっちまったんだ!そいつらも全員餓死しちまってよ。生き残った俺だけが先代に拾われて育てられたって事だ!おい!小太郎!こいつの首は俺がもらうぞ!」
と怒りに燃えるテムジン。そして、満月の光をバックに幻之丞が振り返る。
「抜けば玉散る氷の刃。邪を退け、妖を治めるこの村雨の切れ味、とくと見るがいい!」
振り向いた幻之丞を見てサリーがゲラゲラ笑い出す。
「ぷっはハハハハハ!あんた、さっきから何で後ろ向いてるのかなって思ってたけど、ぶっ細工な顔!半魚人みたい!」
釣られてロボやモーゼス、ビリーも笑い出す。ダグラスと小太郎も笑いを堪えられず、更にヘレンまで口に手を当て
「貴様等あ!そんなに殺されたいのかあ?」
とこめかみに血筋を見せる幻之丞を見た小太郎が笑いながら
「こ!殺されたくないよお!こ!こんな不細工な顔の奴にー!」
と大爆笑している。そして小太郎はゲラゲラ笑いながらテムジンに
「ほら!お前倒していいよ!何ならこの大蛇丸使うか?」
と差し出すと
「いらねーよ。それより後何分で21時なんだ?」
と時間を尋ねると
「さ!3分だよ!だーはっはっはっはっは!」
と一同笑いが止まらない。
【2001年8月30日PM20時57分】
「貴様等あ!いい加減にしろ!」
とキレる幻之丞だが
「おい!半魚人!3分で仕留めてやる!こっちは時間ねーんだよ!」
とテムジンが言い放ち、他の風魔忍軍達は
「た!頼むからこれ以上笑わすなー!」
と笑い転げている。幻之丞は堪忍袋の緒が切れ
「いい加減にしろ!食らえ!南総里見剣術・氷裏一体!」
と村雨を振り下ろす。
《ザアー!》
と土砂降りのような雨が城内を襲うが、テムジンが二刀流を構え、1本を天にかざし、もう1本を振り下ろす。
《ビカッ!ドーン》
「風魔秘奥義・雷土招来の術!」
《バチン!ビリビリバリバリ!斬!》
「風魔剣法・二刀雷迅斬!」
と稲妻を帯びた二刀流で村雨を叩き折り、幻之丞を真っ二つにする。
「1分余ったな。まあ、いいや。不味そうな魚の開きだぜ。」
と真っ二つになった幻之丞を城外へ蹴飛ばす。その瞬間、幻夜城はゆっくり消滅し、山頂の一部と化した。
【2001年8月30日PM21時00分】ミッション完了
ダグラスが
「どーやらこの城は村雨の妖力で作り出した幻だったみてーだな。」
と推測する。そして、山頂のすぐ下で血まみれになって倒れている荘助の懐から何かが落ちていた。発見したロボが
「・・・これチョコ(大麻)だろ?」
と気付く。そして城の石垣だった辺りに立てられていた「幻夜城」の表札の裏にBCSの文字が書かれてあった。小太郎が
「・・・ここもかよ?」
と漏らすと、テムジンが
「こいつら金づるだったんだろ。やっぱ悪徳業者だったか!」
と怒り出す。更に橋があった場所から次々と巻物のような物が谷のような深い堀に落ちていく。その1つをサリーが拾うと
「これって・・・闇帳簿だよね?」
と全員に見せる。そして、山頂に刺さっていた村雨の鞘から、SRSCの指令が届く。
『風魔忍軍に告ぐ!妖刀・村雨と全ての巻物を回収し、特殊行動センター(SAC)へ引き渡せ!その巻物には国家や企業の情報が記載されている!紙切れ一つ残らず拾うのだ!尚、このミッションに制限時間は設けていない!直ちに取りかかれ!』
風魔忍軍達は
「サービス残業かよ?ちょっとは休ませろ!」
とぼやくが、テムジンが
「時間気にしなくていいんだからよ、取り敢えず飯食いにいこーぜ!」
と提案する。先程倒した幻之丞の財布をせしめていたテムジンがニヤニヤしながらキャッシュカードを取り出す。
「よっしゃ!でかした!テムジン!」
とモーゼスが喜ぶが
「でも魚だけは食う気しねーな。半魚人の金だろ?」
と小太郎がぼやく。そしてロボが
「それよりこの金鉱はどーすんだよ?バリケード張るのも時間かかるぞ?」
と疑問を持つ。その点はSRSCからは指令が届いていない。テムジンが
「ちょっとくれーもらっていってもい・・・」
と話している間に再びSRSCの指令が届く。
『そこの金山はCIAを通じて政府が管理する!決してくすねるでないぞ!以上!』
テムジンは
「ちっくしょー!何でもお見通しかよ!」
と残念がるが、ヘレンに
「あの半魚人立ちが触った金塊よ?汚らわしい!」
といつも金目の物に目がないヘレンが珍しく拒絶する。
小太郎が村雨を鞘に収めようとすると、余りの冷たさに一瞬手を放した。
すっかり夜になっていたので、下山せずに一旦山頂で眠り、朝になったら山を下りがてら巻物を探そうと決めた風魔忍軍は、大木を燃やし、暖を取りながら仮眠を取る。3日3晩休まずアパラチア山脈南東部からこのカリフォルニア州北部のシャスタ山へ陸路で辿り着いた風魔忍軍は完全にバテて泥のように眠る。
【2001年8月31日AM5時45分】
朝陽を浴びて目覚めた風魔忍軍は下山する。通ってきた山道を通っていると、犬の死体が8匹転がっていた。ドーベルマン、レトリバー、ダックスフンド、ハスキー、プードル、ブルドッグ、ポインター、シェパード。全て八犬士が名乗っていた犬達だ。この犬達が村雨の妖力で人の化身になったと推測する風魔忍軍。
「俺達はこんな犬と戦っていたのか?そりゃ弱いよな?」
と嘆息する。道すがらで巻物を拾って歩いた風魔忍軍は、SACの協力の下で回収していった。彼らの行為で
「ここは我々が手伝うから休め。」
と促され、近くのレストランで食事を摂り、ホテルで各自休む。サリーとヘレンは
「やっとシャワー浴びれる!」
と長めの湯に浸かる。他もベッドで休み、ぐったりしていた。
【2001年9月1日AM10時12分】
再びシャスタ山へ戻った風魔忍軍であったが、金鉱は全てCIAが抑えており、残るは巻物の回収作業のみとなった。時間制限のない地味な役回りにテムジンが
「あの金塊の1つでもあればなあ・・・」
と思いながらも
「仇は取ったぞ。オメーら!」
と一族に心から報告するのであった。
日本式の城がなかったので、幻の城にしました




