第28話「直会」
深夜。
宿前の屋台。
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さっきまでの喧騒が、嘘みたいに静かだった。
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炭火には、まだ赤い火が少し残っている。
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鉄板の熱も、もう弱い。
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空になった木皿。
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使い切った串。
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そして。
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銀色のビールサーバーだけが、静かに置かれていた。
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源太:
> 「……終わったねぇ」
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ロジャーは椅子へ座ったまま、大きく息を吐く。
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ロジャー:
> “What a night…” (なんて夜だ……)
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マルコは、完全に机へ突っ伏していた。
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マルコ:
> “Morto…” (死ぬ……)
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源太:
> 「まだ死なんばい」
> 「ネバーエンドたい」
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マルコ:
> “…Neba?” (……ネバ?)
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その時。
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石畳を歩く靴音が聞こえた。
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コツ、コツ。
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ジェームスだった。
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いつもの外套。
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腰には剣。
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そして疲れた顔。
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ジェームス:
> “I heard the whole district was noisy.” (地区中うるさかったぞ)
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ロジャーは笑いながらジョッキを掲げた。
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ロジャー:
> “Too late.” (来るのが遅い)
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源太:
> 「今日は祭りやったけんね」
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ジェームスは、屋台の空気を見回した。
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空の皿。
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炭火。
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そして、みんなの疲れた顔。
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ジェームス:
> “…Successful?” (上手くいったのか?)
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ロジャー:
> “Completely.” (完璧だ)
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マルコ:
> “Troppa gente…” (人多すぎた……)
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源太は、小さく笑った。
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そして。
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銀色のサーバーへ手を伸ばす。
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源太:
> 「まだ残っとるばい」
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ジェームスの目が光る。
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ジェームス:
> “…Beer?”
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源太:
> 「最後たい」
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サーバーの蓋を開ける。
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中には、少し小さくなった氷。
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足元では、スライムがぷるぷる揺れていた。
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源太:
> 「今日は助かったばい」
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スライム:
> ぷるっ
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ジェームスが、不思議そうにサーバーを見る。
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ジェームス:
> “You actually cooled it?” (本当に冷やしたのか)
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源太:
> 「キンキンたい」
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コックを倒す。
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ブシュッ――。
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黄金色のビールが、静かにジョッキへ注がれていく。
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しゅわわ……。
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細かい泡。
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冷えた水滴。
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四つのジョッキが並ぶ。
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源太:
> 「今日はみんな頑張ったけんね」
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ロジャーは、嬉しそうにジョッキを持った。
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マルコも、半分寝ながら持ち上げる。
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ジェームスだけは、少し呆れた顔をしていた。
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ジェームス:
> “This stall is becoming dangerous.” (この屋台、どんどん危険になってるぞ)
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源太:
> 「褒め言葉たい」
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ジョッキがぶつかる。
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カンッ。
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冷えたビールが喉を通る。
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炭火の香り。
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祭りの疲れ。
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夜風。
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全部が、ゆっくり身体へ染み込んでいった。
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しばらく誰も喋らない。
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ただ、静かな夜だけが流れていた。
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そして。
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ロジャーが、小さく笑う。
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ロジャー:
> “…Tomorrow too?” (明日もやるのか?)
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源太は、空になった鉄板を見つめた。
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源太:
> 「当たり前たい」
> 「屋台やけんね」
「源ちゃん」の現代からの材料の在庫
黒胡椒 残量十分
調味料一式
炭酸水1000ml 20本
焼酎十分
ウイスキー十分
レモン酎ハイの素4/5




