垂直落下
魔力を体の外に漏らさないようにするだけでなく、マイスコップへ送り込む際にも外へ漏れないように制御する。
その結果、僕の穴掘りは以前とは比べ物にならないほど強化され、入口から続く通路とは別に新しい通路を掘っているようなレベルにまで達していた。
ただ、壁を掘って穴を開けるだけではなく、奥へと続く通路のようになっていた。
そんなふうに穴を奥へ奥へと掘っていたら、急に底が抜けたようになった。
それまではダンジョンの壁は、いくら掘っても奥へと続いていた。
それが、急に真っ黒な壁が現れたのだ。
だが、それは黒い土ではなかった。
あえて表現するとすれば、ブラックホールだろうか。
それまであった土の硬さがその黒い壁には一切なく、僕がスコップを差し込んだ瞬間、そのまま黒い壁に吸い込まれ、体ごと中へと引きずり込まれた。
こんなことが起こるとは考えもしていなかった。
正直、完全に油断していた。
まさか、壁を掘っていたら穴に落ちることになるとは予想もしていなかったのだ。
僕は踏ん張ることもできず、体ごと漆黒の穴へと飲み込まれ、そのまま落ちていった。
あり得ない感覚だ。
壁に開いたはずの穴なのに、なぜか僕は真下に落ちている感覚だった。
ただ、それが本当にあっているのかはわからない。
夜よりも暗い空間を、ただ落ちていくだけの感覚しかなく、手足をばたつかせても何かに掴まれるような突起もない。
落ちている。
どこまでも。
どれくらいその状態が続いたのだろうか。
そんな垂直落下は唐突に終わりを告げた。
「いってー。って、どこだここ?」
真っ暗闇を落ち続けていたが、急にドスンと衝撃を感じ、目の前が明るくなる。
叩きつけられるような衝撃が全身を走った。
あまりの急な変化に、頭が全く追い付かない。
だって、そうだろう。
自分が今どんな状況にあるのか、僕は全く分かっていない。
目の前の光景を見てさえも理解が追い付かなかった。
「外、に出たのか? いや、そんなわけないよね」
ダンジョンの入り口から中に進むときは洞窟型の通路になっている。
その入り口を入ってすぐの場所で僕は穴掘りをしていた。
そこに開いた穴に落ちた。
そう感じて、落下した先が草原って、どういうことなんだろうか?
僕の目の前には芝生よりも少し長めの草が生え、ところどころに木々がある草原が広がっている。
上を見上げると空がある。
雲一つない青い空が広がり、地平線すら見えるほどの広大な大地が僕の周りに広がっていた。
どこだここ?
ダンジョンから出た、というわけじゃないと思う。
だって、僕は自宅から自転車に乗ってダンジョンに来ていたんだ。
周辺の住宅街の土地勘はあるし、こんな草原が広がる場所なんて絶対にない。
それに、上に広がる空だって違和感がある。
雲がひとつもなくて明るいが、その明るさのもとになる太陽がどこにも見当たらないのだ。
「もしかして、ダンジョンの階層を突き抜けて落ちちゃった、とか?」
この状況を説明するには、まず大前提として僕はダンジョンの外へ出たわけではないということ。
そして、ダンジョンの壁に開いた漆黒の穴から真下に落ちたと感じたあの感覚が正しかったとすれば、僕は本来ダンジョンにある階段などを使って下に下っていく正規のルートとは別にダンジョンの階層を下ってしまった、という可能性が頭によぎる。
やばくね?
だってそうなら、僕はどうやって地上に戻ればいいのかが全然わからない。
なぜなら、上へと戻る階段が周囲を見渡してもどこにも見当たらないのだから。
こうして僕は――漆黒の穴に落ちてダンジョンの奥深くで、完全に迷子になった。
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