停学の理由
「停学ってどういうこと? 何があったのか説明してちょうだい、佑馬」
家でお母さんが声を荒げる。
学校から連絡が来ていたらしい。
僕がしばらく登校禁止の処分を受けたと聞いて、怒っている。
「友だちがいじめを受けてた。それを止めに入ったら僕が殴られた。何人にも囲んで殴ってきたから反撃したら、僕が悪いことになってたみたいで停学になったんだ。僕は悪くない」
今日の学校であったこと。
それは、渚が同じ学校の生徒たち複数人に囲まれていじめられているのを見つけたことがきっかけだ。
校舎の裏の、人があまり来ないような場所に呼び出されていた渚。
前からガラが悪いという印象を受ける連中がいて、そういう連中に目をつけられていたようだ。
僕がその場所に出くわしたのは本当にただの偶然でしかなかった。
正直、ショックだった。
クラスメイトの渚がいじめを受けていたことを僕は今まで知らなかった。
いつからそういうことがあったのかはわからない。
最近始まったのかもしれないし、もっと前から続いていたのかもしれない。
だが、僕は今日、その事実を初めて知り、そしてそれを見過ごすことはできなかった。
渚は俯いたまま、何も言い返せずにいた。
拳を握っているのに、それを振り上げることすらできないように見えた。
僕は、周りを取り囲まれた渚に声をかけながら近づいていき、連れ戻そうとした。
だけど、その渚を囲っている連中の中で体格のいい奴が「勝手なことをするな」と言いながら僕を殴りつけてきた。
頬に衝撃が走る。
遅れて熱が広がった。
――殴られた。
それをほかの連中はニタニタと笑いながら見て、同調するように動き出した。
だから、僕は反撃した。
渚がいじめられていたこともそうだし、自分が殴られたこともあり、手加減はしなかったし、する余裕もなかった。
目の前の相手を一発殴り、それを見て、何かをわめきながら近づいてきた連中も殴った。
そのあとは、一人対集団での喧嘩だ。
そして、僕は学校を停学になった。
理由は相手をやっつけたことだそうだ。
向こうは多少喧嘩慣れしていそうな雰囲気はあったのだけれど、結果的に僕は最初に殴られた以外は後は数発目立たないところに攻撃を食らっただけで、ほとんど無傷で相手の集団に勝った。
それがよくなかったようだ。
同じような年頃の男子生徒の間で喧嘩が起こって、その結果集団で襲い掛かったほうが怪我が多く、たった一人の僕が無傷なのはおかしいのではないかということらしい。
そんなこと知らないだろうと思ってしまった。
僕が勝ったのはスーちゃんのおかげだ。
渚がいじめられているところに止めに入った時にも、僕の服の中ではスーちゃんが体に引っ付いており、それにより僕は超集中の状態にあった。
なので、油断していた最初以外は、高めた集中力で相手の集団の動きを観察し、可能な限り避けながら反撃していただけだ。
相手の拳が、まるでゆっくり動いているみたいに見えた。
その結果、僕はほぼ無傷だっただけで、悪いのは相手だ。
だが、僕が高い集中力を駆使して集団相手に勝利をしたという説明に学校にいる先生たちは耳を傾けず、暴力行為を複数の生徒に働いたとして僕が停学になった。
理不尽だと思う。
ただ、反論すればするだけ無駄に終わり、しばらく学校を休んで一人で反省しなさいということになってしまった。
途中から僕も先生相手にヒートアップしていたので、もういいと怒りながら帰ってきたというわけだ。
僕は渚を助けるために行動しただけだ。
自分が悪かったとは一つも思わないし、渚が僕をかばって証言してくれたことやお礼を言ってきてくれただけでも、十分行動した甲斐があったと思う。
ともかく、そういう事情で僕は明日から停学、自宅謹慎となった。
知ったことじゃない。
どうせならダンジョンに行こう。
僕はそう考えながらお母さんに事情を説明し続けた。
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