要練習
年中無休で二十四時間開いているのか。
平日の朝六時過ぎにたどり着いたダンジョンのそばの建物はすでに人がいて開いていた。
館内に入り、受付で手押し車を借りる。
土嚢袋も受け取り、ダンジョンへと向かう。
スーちゃんだけじゃなくギルドにも感謝しないといけないな。
そんなことを思いながらダンジョン入口に相変わらずいる監視員のおじさんに挨拶し、入口を入ってすぐの定位置へ向かった。
やはり、ダンジョン内部に修復力があるけれど、あまり時間を空けすぎずに穴を掘ることで現状維持はできそうだ。
僕が昨日まで掘っていた穴はそのまま残っている。
ダンジョンの壁に掘った大きめの穴もそのままだし、床に掘った穴も一緒だ。
あとは平日の朝、学校へ行く前にダンジョンへと来られる時間でも掘った穴が元通りにならなければどんどん掘り進めていけそうだ。
まあ、掘ること自体が目的だから、別に戻っても構わないんだけど。
ただ、達成感があるのは穴が広がり、深くなっていくほうだ。
なので、できるだけ毎日掘りに来よう。
どこまでできるかわからないけれど、どんどん穴を深くしていってみよう。
そう思いながら、穴掘り作業を開始する。
昨日に引き続き、スーちゃんの力を借りて超集中を行う。
昨日も午後の間はずっと自分の体の動かし方に注意し、修正を行ってきた。
そのため、昨日よりは体の動かし方に違和感は少ないと思う。
だけど、昨日修正したはずの部分がまた気になったり、一部を修正したら別のところが今度は気になるなんてことはザラにある。
なので、高めた集中力を使って、体の最適な動かし方を模索し続ける。
超集中は肉体強化とセットだ。
むしろ本来は同じものだと思う。
魔力を使って正しく肉体を強化すれば身体機能だけではなく集中力も高まるものなのだろう。
だが、その魔力操作が未熟で不完全な状態で肉体強化を行っていた。
それは、今でも同じだ。
僕はスーちゃんの力を借りなければ超集中を使えていない。
体の動かし方も重要だけれど、魔力の操作も重要だろう。
穴を掘り続けながら、そのことが気になった。
試しに、スーちゃんに僕の魔力を食べないようにしてもらうと途端に集中力が落ちてしまう。
これではいけない。
スーちゃんに助けてもらえるのはありがたいけれど、本来は自分でできなければいけないはずだ。
魔力を使って体を強化する際に、体外に漏れないように保つ。
これも練習が必要だろう。
そう考えた僕は、まずはイメージトレーニングをすることにした。
今、僕の魔力はスーちゃんのおかげで体外への漏出がない状態である。
これが普通なのだと脳に意識づけを行う。
魔力とは体の外を薄皮一枚分のところでピタリと止まる表面張力みたいなイメージを植え付ける。
スーちゃんがいなくてもそれが当たり前なのだと認識できるように、僕の中の常識を改める。
スーちゃんがいなければできない技術ではなく、当たり前にできる魔力のあるべき姿だと思いながら体を動かし続けた。
そして、アラームが鳴る。
ダンジョン朝活の短い時間だが、それでも適宜休憩を取ろうとセットしておいたスマホのアラームが鳴ったので、スコップを持つ手を止めてダンジョンバーを食べた。
そのタイミングで、スーちゃんに魔力を食べるのをやめてもらう。
「む、むっず。薄皮一枚で止めるってかなりむずいよな、これって」
結果、まだまだ未熟ではあるけれど、以前のように魔力がどんどんと漏れ出ていくようなことはなく、一定程度体表で保つことは自分の力だけでもできた。
だが、完全じゃない。
じわじわと外ににじみ出ていく感じがする。
まるで袋に小さな穴が開いているみたいに、体のあちこちからわずかずつ魔力が漏れていっている。
……これは、ちゃんと練習しないと無理だな。
当面の目標は体の使い方と同時に、魔力操作の上達も必要そうだ。
短い休憩時間でそう感じた僕は、再びスーちゃんに魔力を食べてもらいながら穴掘り作業を再開しつつ、イメージトレーニングも続けることにした。
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