現場の状態
「わぁ、本当に佑馬お兄さんだー。ちっちゃい。かわいいー」
渚と話をした次の日。
僕はさっそく、渚の仕事を見学することになった。
掃除の仕事現場は毎回違う場所になる。
なので、そこまでは車で移動するということで僕の家まで迎えに来てくれた。
が、その迎えの車から降りてきたのは渚ではなく女性で、僕を見てはしゃいだ声を上げながら近づいてくる。
「……もしかして、楓ちゃん? 久しぶり。元気そうだね」
「うん、元気げんき。佑馬お兄さんは変わってないねー。お兄ちゃんに聞いたときには信じられなかったけど、本当に昔のままでびっくり」
車から降りてきたのは渚の妹の楓ちゃんだ。
だが、「楓ちゃん」と呼ぶのが違和感あるくらい成長していて、一瞬誰だか分からなかった。
渚だけじゃない。
楓ちゃんまで――もう完全に大人の側にいる。
楓ちゃんは今は大学生か。
以前までの小柄でおとなしく小さいイメージとは裏腹に、成長し美人でありつつ可愛らしい大人のお姉さんに変貌していた。
正直、思うところはある。
同じ年代だった知り合いが気が付いたら僕よりもはるか先を歩く大人の姿になっているというのはくるものがあった。
「今日は三人で行くの?」
だが、そんな感情はいったん脇に置いて話を進める。
先に飛び降りてきた楓ちゃんと違い、運転席にいる渚に尋ねる。
三人で現場に向かうのか確認しつつ、楓ちゃんとともに後部座席へと乗り込んだ。
「佑馬君のことを楓に話したら自分も行くって言いだしてね。かまわないかな?」
「もちろん。っていうか、渚が運転するんだ。免許を持っているってことだよね? いいな」
「あはは。僕はもう何年も前に免許を取ったけど、ダンジョンから帰ってきたばかりの佑馬君からすると驚くポイントなのかもしれないね。年齢的には佑馬君も免許は取れるけど、その見た目だと、いろいろ言われそうだね」
そうなんだよな。
先日の渚との話で僕は実年齢だけならすでに成人していることに気が付いた。
なので、今日のバイト見学で実際に仕事を手伝ったら、その働き分に応じてお金をもらえることにもなっている。
そして、成人しているならば他にもいろいろできるはず。
車の免許も取れるだろうし、やろうと思えばお酒やたばこだって買えるかもしれない。
ただ、確実にこの中学生ボディーではあれこれ言われると思う。
車の中では渚とも話をしながら、楓ちゃんとも話をして現場へと向かう。
やはり、楓ちゃんは大学生のようだ。
普段は学業優先で、時間があるときに渚の会社の仕事を手伝っているのだとか。
しかし、渚の会社の業績にはその楓ちゃんの働きが大きく反映されているのだとか。
なぜなら、彼女はスイちゃんというスライムだけではなく、ほかにも数体のスライムと仲良くなっており、普通の人の何倍もの速さで片づけられるからだ。
なので、大船に乗ったつもりでいてよ、と成長した胸をポンと叩きながら、仕事終わりについての話をしている。
楓ちゃんの中では今日は僕の仕事見学よりも、それをさっさと終わらせてどこかに行こうというつもりらしい。
「ついたよ。今日の現場はここ」
だが、そんな楓ちゃんの思いとは別に、今日の現場はかなり大変そうな場所だった。
隣でニコニコ笑顔だった楓ちゃんの顔も実際の現場を見て凍り付く。
僕としてもこのあいだ聞いていた話と違って驚いた。
仕事のストレスで物を片付けられなくなった人がいた部屋があるマンションにでも行くのかと勝手に思っていた。
――どうやら、違ったらしい。
そこは一軒家だった。
大きな家ではなく、住宅街にあるごく普通の一軒家。
すぐ隣には塀があり、両隣にも普通の家があり並んでいる。
けれど、目の前の家だけが異様な状態になっていた。
家から玄関までの小さな庭。
そこを通って玄関の扉にまでたどり着くことすら困難なのではないだろうか。
小さな庭にはイスやテーブルが積み重なり、その隙間を無数のゴミが埋めている。
なぜこんな状態になっているのか、理解できない。
ここはまさしくゴミ屋敷だ。
閑静な住宅街に突如現れたゴミだけの家が今日の仕事現場として登場し、一目でわかる。
――これは、一日じゃ終わらない。
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