避難所
「ん? ああ、起きたのか。大丈夫かい?」
再び目を開けると、さっきとは違う場所にいた。
一度目に目覚めたときは、僕の視界に太陽の光が差し込んでいた。
あれは屋外だったはずだ。
だが、今は違う。
室内で天井についているライトの光が視界に入る。
どうやら、ここまで運ばれてきたらしい。
「えっと、はい。大丈夫、だと思います。っていうか、ここはどこですか?」
「ここはギルドが所有している建物だ。ダンジョンの近くは今使えなくなっているから少し離れた場所にある。重傷者は病院に救急搬送されたが、君のように外傷がない者たちは一時的にこちらに移動してもらっている。もちろん、現場で医師が判断しての対応だよ」
目覚めたときにそばにいた男性の話を聞きながら、周囲へと視線を巡らせる。
ここはどうやら広い講堂みたいな場所で、僕以外にも意識を失ったらしき人たちが運ばれてきているようだ。
災害時の避難所、あるいは野戦病院のような光景だ。
床には簡易マットが敷かれ、人が並べて寝かされている。
ベッドに寝かされている人もいるところを見ると、ベッドの数が足りないくらいに人が運ばれてきたんだろうか。
「ありがとうございます。でも、これ……いったいどうなってるんですか? なにがあったのか、全然わかってなくて」
「そうだね。まだ現状ではわかっていないことが多いんだけど、とりあえず説明しておこうか。どうやら、あそこにあったダンジョンが消えたみたいなんだ。なぜ、どうやって、誰がそんなことをしたのかは今のところ不明。だけど、その時にダンジョン内にいた人たちが、次々と地上にはじき出されたらしくてね。おかげで、今はどこも混乱状態なんだよ」
ダンジョンが消えた?
崩壊したってことなんだろうか。
で、ダンジョンが崩壊したらその中にいた人は外に出される。
これはもしかしたらその人の意志とは関係ない強制的なものなのかもしれない。
そして、それによって僕も地上に放り出されてしまったというわけか。
よかった。
なんにせよ、地上に戻ってくることができた。
右も左もわからない状況から帰ってくることができたんだ。
本当に助かった。
「そうだったんですね。助けていただいてありがとうございます」
「ああ、君も無事でよかった。で、どうする? 気がついた人はしばらくここで休んでいってもいいが、まだまだ人が運び込まれてくる可能性ももちろんある。こう言っちゃ悪いんだけど、歩けるならば自分で帰ってもらえると助かる。後日、改めて病院で診てもらうことをお勧めするよ」
「あ、そうですね。分かりました。えっと、体が痛いとかそういうのはないので帰ろうかと思います。あ、お金とかお支払いしないといけないですかね?」
「いや、それは大丈夫だ。ギルドは公的な機関が運営しているから、こういうときのために備えているんだよ。なんにせよ、大丈夫ならばよかった。気を付けて帰ってくれよ。一応、君が見つかった時にそばにあった荷物はそこに置いてあるから中身を確認して帰ってくれ」
「はい、ありがとうございました」
お、ちゃんとスコップもリュックもある。
中身をみると白龍の革袋もある。
やっぱあそこであったことは夢じゃなかったってことか。
……ん?
スーちゃんは革袋の横で小さくなって丸まっていた。
なにをしているんだろうと思いながら、スーちゃんを手のひらで優しく包み込む。
そのままリュックから取り出し、僕はもう一度お礼を言ってから建物を後にした。
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