317.自分がもらって嬉しい物
驚いた双子は顔を見合わせた。この中にない。つまり、宝飾品ではないと伝えているのだ。ネロとミロは頭の回転が速い。一瞬で意味を考え、判断した。
「宝石は違う……」
「人がもらって喜ぶものって、なんだ?」
いままで、王族である彼らに贈られる物は宝飾品が多かった。服や靴なども含まれる。身を飾るものばかりで、それ以外を貰った記憶がない。叔父ローマンから、本を貰った記憶が蘇った。あれは実用品だろう。
考え込んだ二人に、ラファエルは驚いた。他愛のない贈り物の経験がない? 姉と庭の花を贈り合ったことがある。互いの部屋に、それぞれを想って花を飾った。知らずに毒のある花を選んだり、棘が刺さったり。トラブルはあったが、贈り合うこと自体は嬉しい。
彼らはそんな温かい記憶がないのか。呪いと言われ距離を置かれたネロとミロに助言をしようとして、クラーラに止められた。
「自分で答えを見つけないと意味がないのよ」
だから言わないでね。クラーラにそう言われたら、ラファエルは口を噤むしかなかった。イグナーツと双子の距離は微妙だ。王族同士として淡々と付き合う距離を踏み越えている。だが親しく愛称を呼び、肩を叩き合う仲でもなかった。
知人以上友人未満。遠くて近い人になる。互いに王族であるため、庭のどんぐりを渡すのは周囲の目が気になる程度。僕なら……と思う贈り物が浮かび、ラファエルはちらちらと双子を見た。ヒントを与えたくなる。でもクラーラはそれを許さない。
意地悪でないことはわかった。ラファエルへ課題を出すように、双子にも自分で答えを見つけさせようとしている。それがネロとミロの力になるからだ。
「あのさ……自分がもらって嬉しい物、はどう?」
このくらいのヒントはいいよね。祖母の顔を見ながら、ラファエルは声を掛けた。エッカルトが後ろで笑みを深める。腕を組み、三人の子ども達がどのような結論を出すのか見守っていた。
「嬉しい……」
「確かに宝石じゃないな」
抽象的な表現のため、またもや悩んでしまった。だが宝石が間違っていた理由は、理解したらしい。自分達がもらった時も、嬉しいより先に「またか」と思ったからだ。気持ちが浮き立つ、嬉しい、そういった感情をネロとミロは探った。
兄に抱きしめられ「弟達を守るのは、兄である私の特権だ」と言われたとき。兄からもらった伝言の小さな紙を捨てられず保管して……。そこではっとする。
「手紙、はどうかな」
「また会いたいとか、友達になってほしいとか」
「迷惑じゃないといいな」
双子が出した結論に、クラーラは口元を緩めた。彼女が想像した贈り物ではないけれど、これも正解の一つだ。高価ではなく心の籠った、手元に置ける小さなもの。思い出の形をした手紙を双子は選んだ。




