313.呪いの連鎖の終焉
アードラー王国の使節団は、迎えの騎士が到着したので帰国した。そう聞いても、ラファエルは特に思うことはなかった。ユーディットとの別れは、即位式の後の夜会で終わっている。彼女と結ばれる未来がない以上、気持ちを残してもつらいだけだ。
ラファエルはそう切り替えた。なんとなく察しているネロとミロは、その件について口にしなかった。こういう場面で、他人の感情を揺さぶる方法は叔父ローマンに習った。だが、傷つける方法としてだ。ならば大切にしたい友人に使うべきではない。
この判断は、双子の根幹が腐っていない証拠だった。どうでもいい相手は傷つけても、大切な人は守る。その考えは王族として間違いではない。敵対する貴族がいれば、傷口を抉るだろう。王族はそうした醜い争いに巻き込まれることも多い。
「なあ、ラファエル。俺らはずっと友人だからな。お前を裏切らない」
「覚えておいてくれ。何かあったら頼ってほしい。国が動けなくても、僕達は動ける」
ネロとミロの気持ちを嬉しく思う反面、ラファエルは同じ約束が出来ない自分が歯がゆかった。公国の敵になるなら、二人と対峙する可能性がある。エッカルトとクラーラの教育で、それを知るラファエルは口を開いて閉じた。
「わかってるって、お前はそう簡単にいかない」
「国王と王弟じゃ、全然違う。兄上と僕達で立場が違うのと同じだ」
理解を示す双子に、ラファエルは飛びついた。一緒にベッドに転がり、笑い声を立てる。ひとしきりじゃれ合ったあと、顔を上げたラファエルに迷いはなかった。
「僕もさ、全力で二人を信じる。だって、ロイスナー公国に迷惑になること、しないだろ? そう信じてるからさ、僕も頼ってほしい」
もし国を傾けるような話を持ち込むなら、友人ではない。気遣ってくれる二人が困っているなら、頼ってほしいと思う。譲歩できる最大限で、ラファエルは双子に信頼を示した。血の繋がる兄がもたらす信頼と違う感覚は、二人の気持ちに変化をもたらす。
「また、押しかけるよ」
「ネロ、今度は事前に連絡しないと」
「わかってるって」
軽口に混ぜながら、再会を望む。王族として立派に振る舞えたら、ラファエルの即位式に立ち会えるかもしれない。王となった兄テオパルトが、国を空けて他国へ向かうことはないだろう。ならば王弟の二人にチャンスが回ってくる。
わずか数日の再会のために、王族らしく振る舞う。国を傾けようとした叔父ローマンの計画は魅力的だった。それ以上に、友人との時間が大切だから。
「絶対だよ。僕、待っているから」
頷いた双子とまたベッドに転がる。擽り合い、笑い合って、疲れるまで話して。ウテシュ王家に漂っていた呪いを吹き消すように。




