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わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


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165/176

165.公爵閣下は忙しい

 様々な手配を終えて、エッカルトは一息ついた。妻クラーラ達の警護はアウグストに任せている。お茶会の会場を王家所有の別邸にしたことで、内部での安全も確保できた。さすがにあの場所で愚かな言動をする貴族女性はいないだろう。


 いないはず……だった。罪人の処分や彼らの財産没収、その後の領地管理に関することまで大量の書類を片付け、エッカルトは満足していた。久しぶりにこれほどやりがいのある仕事を得たと、やめたはずの葉巻を咥える。


「クラーラに叱られる」


 咥えただけで片付けた。葉巻の臭いがしたら、クラーラに叱られてしまう。だが捨てずに持ち歩くあたりが、エッカルトの未練を示していた。


 この状態で飛び込んだのが、お茶会に同行させた侍女からの報告だ。四人つけたのは、緊急時の連絡係としての役割を与えたから。その一人が大急ぎで戻り、エッカルトに報告を入れる。呼ばれていないピータック子爵夫人が飛び込んだ、と。


「なるほど。ピータック子爵は婿だったな……」


 ふむと頷いて侍女に休むよう伝えた。


 どう処理してやろうか、無言のエッカルトは情報を整理する。入り婿の子爵は愛人がいた。慎ましい生活を送る平民の愛人は、子爵夫人の嫌がらせを受けながらも子を産んで育てている。


 今回の騒動にかかわったすべての貴族家の情報は、頭に入っていた。逃げた婿は平民の女性と幸せになる。そうだな、彼に証言を頼むのも一つか。愛人を選んだ夫に裏切られれば、さぞかし堪えるだろうな。後押しで、新しい生活を始める婿に金を渡せば完璧だ。


 子爵夫人の言い分が通らなくなる。夫を取り戻そうとしても、後ろ盾に我が公爵家がついていれば……誰も相手をしないはずだ。あれこれ策を練るエッカルトは、明日の準備にピータック子爵家への対応も組み込んだ。


 明日、ソフィーが父親と面会する。保護してから手厚く面倒を見たため、ようやく話ができる状態まで回復した。医師の話では何らかの薬を盛られたのではないか、と聞いた。婚約前から病弱だったので誰も疑わなかったが、急に体調が悪くなった原因がハイモ・テンツラーなら?


 医師はエッカルトに「毒」ではないと断言した。好意的に解釈するなら、新薬で回復を願ったと取れる。だが、格上の子爵家を乗っ取ろうとする男爵家三男だ。あの悪辣なやり方から判断すれば……わざと強い薬を与え、弱った体にダメージを与えようとした可能性がある。


 こんな話は女性達の耳に入れたくない。エッカルトは自分が背負って終わらせるつもりだった。お茶会から帰ってきた妻が、寝室で「明日は私も同行しますわ」と言い出すまでは……。

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― 新着の感想 ―
まあ公爵夫人には閣下の考えなんぞまるっとお見通しでしょうからねぇ(笑) 私もいくからさっさと終わらせましょうか、てあたりですかねぇ?
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