表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

162/182

162.真実は形を変えいくつも存在する

 ガブリエルのテーブルには、隣にソフィーが座る。反対隣にシェンデル公爵夫人クラーラ、残る二つの席はリーム男爵夫人と令嬢に与えられた。これにより、リーム男爵家は和解済みと公言した形になる。リーム男爵家の名誉は保たれた。


 同じ席にソフィーが座ることで、メルテンス子爵に関する噂も立ち消える。


 噂に花を咲かせる貴族女性達も、このテーブルには持ち込まなかった。彼女らにできるのは、丁寧な挨拶と顔を繋ぐことだけ。王族や公爵家は、それだけの格式があった。


「オルフ侯爵家のお話はご存じ?」


 聞き覚えのある噂に、ガブリエルが聞き耳を立てる。その様子を見て、クラーラが隣のテーブルへ話を振った。


「オルフ侯爵の不幸なら耳にしたわ。なにやら投資に失敗なさったとか」


 クラーラから情報がもたらされたことで、わっと話が盛り上がる。オルフ侯爵家は鉱山開発に着手していた。宝石が出る予定だったらしく、かなりの資金をつぎ込む。まだ宝石が出ていない状態で、購入予約を取り始めたのだ。


 最初に出た宝石の権利を、次の宝石の権利を……そうやって大量の確約書をばらまいた。傘下にいた下位貴族の大半が買わされたその確約書を、一手に買い受けた貴族がいる。誰も直接は名を口にしないが、シェンデル公爵家だった。


「あれは酷かったわ」


「ええ、うちも断れなくて」


 伯爵家や子爵家の奥様達が、大変だったのと嘆く。爵位が上ということ、この街でそこそこ力があったこと。様々な要因が重なり、無理をして購入した家も少なくなかった。そのすべての債権を、シェンデル公爵家が集約する。家計のやり繰りに頭を悩ませた貴族夫人にしたら、救世主だった。


「シェンデル公爵夫人に被害はなかったのですか?」


「被害、というほどの額ではないと思うわ。そういった表向きは夫の仕事ですけれどね」


 遠回しに裏を探るなと伝える。損を回避した家は感謝して口を噤み、それ以外の家も興味本位で掘り起こすことはない。貴族社会では、上から下へと真実が流れていくのだから。それが事実と異なろうと、上位者が「真実」と断定すれば、真実になる。


 人の数だけ真実は存在し、貴族はその仕組みをよく理解していた。


「おばあ様、おじい様が損をなさったの?」


「ふふっ、実はね……得をしたの」


 こっそりと教えてもらい、ガブリエルは目を丸くした。詳しい内容は帰ってからと言われたが、その後の噂でおおよその輪郭が掴める。宝石の購入権をすべて手に入れた公爵家から、解約を求められたオルフ侯爵は返金できなかった。


 購入権で得た金を、採掘に回していたからだ。だが購入する権利であり、実物でない以上「ただの債権」に過ぎない。ゼークト王国の法では、求めに応じた返金義務が生じる。だから逆らえない下位貴族に売りつけたのだ。その仕組みを逆手に取ったエッカルトが、公爵家の名で返金を求めた。


 下位は上位に逆らえない。屋敷も領地も鉱山そのものも、すべてを支払いに充てるしかなかった。


 継ぎ合わせた噂の真実に、ガブリエルは「お気の毒ね」と心にもない言葉を口にする。ソフィーは何も言わず、ただ頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
貴族の恐ろしさは天井突破しますね。オルフ公爵どうするんだろ?無一文でポキュポキュンですよ。小人は優雅にティータイムします。
妻子のやらかしから始まって財産持ち出しての亡命まで考えてたのに亡命する前にケツの毛までむしられたわけだが、どうすんだろ?
 獲らぬ狸の皮算用をした結果、身ぐるみと家と土地を失う…『本物』の貴族の恐ろしさよ…( ´-ω-)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ