表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたくしは何も存じません  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

154/184

154.大人びているのに子供のまま

 窓から様子を見ていたガブリエルの腰に、ソフィーの細い腕が回っている。


「危ないです。万が一にも落ちたら」


「叔父様が受け止めてくれるわよ。それより、ソフィーお姉様もご覧になったら?」


 凄いと連呼するガブリエルの無邪気な声に誘われ、ソフィーも窓際に近づく。代わりに侍女達がガブリエルの腰のベルトを掴んだ。これで落ちるまでに猶予ができる。


「見て、犬の躾みたい」


 例えがどうかと思うが、見える光景は言葉のままだった。突進する砂だらけのオルフ侯爵を、掴んで投げるアウグスト。よほど頭に来たのか、冷静さを失ったオルフ侯爵は何度も突進した。


「どちらかといえば、闘牛ですね」


 聞いたことのない単語を口にしたソフィーに、意味を尋ねた。興奮させた牛に赤い布を振って、襲い掛かるところを躱す競技と聞いて頷く。


「本当、そっくりだわ」


 ゼークト王国とカペル共和国では、闘牛は娯楽の一つとして受け入れられていた。放牧を主産業にするロイスナー公国では、あまり流行りそうにない。大切な牛がケガをしても困るし、乳の出ない牛を養う気もないからだ。


 国の違いをあれこれ話しながら、二人は窓際を離れた。侍女が丁寧に窓を閉める。外の音が遮断された中、届いたばかりの服を引っ張り出して体に当てた。鏡の前で「こんなに上質な服はもったいない」と恐縮するソフィーへ、ガブリエルは子供らしくない意見を口にする。


「これは、私とおばあ様がソフィーお姉様に選んだの。サイズも調整してもらったから、ほかの人は着られないわ。着てくれないと無駄になるでしょう? だから、もったいないと思うなら積極的に袖を通してね」


「はい」


 さっそくラベンダーのワンピースに袖を通す。腰を絞らなくても着られるほど痩せたソフィーに、侍女は化粧を施した。顔色が明るく見えるよう、色を選んでいく。加えて艶の足りない髪に香油を塗って結い上げた。


「素敵!」


 並んでお茶を飲む二人は、隣の部屋が少しばかり気になり始めていた。先触れを出して訪れたのは、リーム男爵家のみ。ほかは押しかけて追い返されたり、外でアウグストに転がされていたり。どちらにしても礼儀がなっていない! とエッカルトはお(かんむり)だった。


 公爵夫人であるクラーラが隣室に移動したので、ガブリエルは好奇心から壁際へ近づいた。止めるソフィーを手招きし、壁に耳を当てる。


「こらっ! 何をしている。義姉上に言いつけるぞ!」


 がちゃっと扉が開き、入ってきたアウグストに叱られる。


「やだっ、内緒にして」


 母に言いつけられたら困ると訴えるガブリエルの様子に、ソフィーは安堵を覚えた。不思議な感覚だが、背伸びした妹が実はまだ子供だったことに安心するような……。


「叔父様、埃っぽいわ」


「ああ、野良犬と戯れたからな……さすがに着替えるか」


 頷きながら追い出し、扉を閉めて寄りかかる。ガブリエルは「叔父様は単純だから、これで忘れてくれるわ」と肩を竦めた。わずかに口角を上げて、舌先をほんの少し見せて。叱られた子供のような仕草に、ソフィーは声を立てて笑った。何も悩まない心からの笑顔は、頬が痛くなるほど……幸せだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ホノボノ!外では駄犬(闘牛まがいw)が投げ飛ばされてwプライドが無駄に高いのに頭が悪いから、こうなるんですねw情けない!wガブリエルさん、楽しそうで良かった!ソフィーさんも、このままホノボノが続いてほ…
小人騎士団もオラフ侯爵を追い払います。火の玉、水の鞭、風の刃、重力剣で追い払ったので大丈夫でしょう。小人は転がります。猫作者さんのブラッシングは寝てからやります。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ