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第8話 悪評

 シオン達がアクセルを追放してからしばらくして、シオンの周りに不穏な空気が漂い始めた。

 まず、シオンらに追放されたアクセルが、強大な魔物を何体も討ち、優秀な戦士として急激に名を上げ始めた。

 加えて、なぜかシオン達パーティの連携が乱れるようになり、冒険の失敗が続いてしまう。

 そして、妙な風評が立ち始めた。


 曰く、今までのシオンたちの活躍は、実は全てアクセルのお陰だった。アクセルがいてくれたから活躍する事が出来ていた。

 ところが、シオン達はそのことに気付かず、逆にアクセルを無能者と思い込み、実際にはパーティに対して最大の貢献をしていたアクセルを、愚かにも追放してしまった。

 その結果、シオン達は今までのように活躍できなくなり、逆に自らの為にその力を使い始めたアクセルは、本来の実力に見合う活躍をするようになったのだ。

 と、そのような事が語られ始めたのである。


 全くありえない話だ。

 本当にアクセルのお陰で活躍できていたなら、共に戦っているメンバーがそのことに気付かないはずがない。まして、逆に無能と思い込むなどありえない。

 或いは、素人同然の者なら、何かの拍子にそんな思い込みをする事もあるかもしれない。だが、シオンは10年以上の経験と実績を持つ冒険者だ。今更そんな極度の思いこみをするはずがないのだ。


 しかし、アクセルを追放した後、シオン達は失敗が続き、アクセルは大活躍するようになったのは客観的な事実だった。その為、風評を信じてしまう者も少なからず生じ、その者達はシオン達を嘲った。

 シオンもまた、このような状況となった切っ掛けであるアクセルの追放について考え、それなりに悩んだ。


(何をどう考えても、実はアクセルがパーティに貢献していたなんて事はない。彼はサブの攻撃役で特殊な役割を負ったりしていなかった。雑用を人よりもこなしていたのは事実だが、別に彼だけにやらせていたわけではないし、他の者も出来る程度の事しかしていない。事実雑用に支障など生じていない。

 少なくとも、客観的に見る限り、彼に依存していた部分などない。


 なら、外からは見ることが出来ない、他人からは察する事ができない能力でパーティを助けていたのだろうか? 確かに、俺たちが失敗するようになったのは、最近連携が上手く行かないからだ。アクセルが、何らかの方法で俺たちの連携に貢献していたとでも言うのか? しかも、何らかの理由でその事実を誰にも告げていなかった、とか。


 それは、ありえないことじゃあない。俺だって仲間にも教えていない秘密の能力がある。切り札は誰にも知られずに取っておくべきだからな。アクセルが同じことを考えているということもありえる。

 その能力を応用して、1人で強力な魔物も倒せるようになったという事なのだろうか?


 だが、もしそうだとしたなら、追放されても仕方がない話だ。何しろ、他人からは察する事はできないし、本人も語らないのなら、そんな能力があることなど誰にも分からないのだから。

 せめて、俺にだけでもそういう能力があると主張してもらわなければ、追放を止めることは出来ないじゃあないか。だから、少なくとも今更俺を非難するのは筋違いだ)


 シオンはそう考える。

 アクセル本人が露骨にシオンを非難していたからだ。あの追放は不当なものだったのだ、と。

 それは、どう考えても言いがかりの類だった。


(いや、こんな事を気にしても意味はないな。

 今は、これ以上失敗を重ねないように気を配ろう。悪評は気になるが、失敗がなくなれば自然に消える。それに、アクセルが成功しようがどうしようが、もう俺たちには関係がない。筋違いの非難も無視するしかない)


 シオンは、結局そう判断した。


 だが、その後事態は、そのような対応を許さない状況にまで進行する。

 アクセルが、戦神トゥーゲルの神殿にシオンを訴えたのだ。

 訴えの内容は、シオンが教義に反する不当な行いを成した、というものだった。

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