一年前の過去を振り返る
水樹にとっての、ビューティーフラワーズ以外での親友。
それは、麻倉祐奈だけである。
中学入学式。
水樹と席が近かった祐奈は、友達作りに積極的なため、まず最初に水樹に話しかけた。
「はじめましてー。あたし、麻倉祐奈!なんて名前?」
「……蒼井、水樹ですぅ」
「水樹ちゃんって言うの!?すっごく響きがいい名前!どこ小から?」
「……河合小ですぅ」
「あたし、五田小!あたしと同じ小学校の子さ、ここの中学にはいないの!……せっかくだからさ、友達になろ!」
「……──」
水樹は沈黙をした。
だが、祐奈にとってはテンションが高すぎて引かれることもあるため、
(あー今日もだめかなー)
と底抜けに明るく考えていただけだった。
だから、次の言葉にも傷つかなかった。
「……嫌、ですぅ」
「あ、やっぱ嫌?ならいいよ!無理に友達になれ、なんて言わないしー。でも席が近いからなんかあったらよろしくね!」
「よろしくですぅ」
無愛想ながらも水樹は返した。
そして、特に祐奈はそれ以上干渉することがなく──といっても、相変わらずハイテンションで水樹に話しかけてくることが多いが、二人はあまり関わらずに過ごしていた。
そんなとき、水樹はクラスで一番目立っている男子に告白される。
水樹自身にも当時はよく分からなかったため、戸惑いながらも承諾し、付き合うことになった。
それを聞いた祐奈はいち早く、水樹のところへすっ飛んでいった。
「え、付き合うの!?え、あの人と!?おめでとー!友達としてこれ程嬉しいことはないよー」
「友達じゃ、ないじゃないですかぁ。って入学式の日、そんな話になったですよ」
「いいのいいの!とにかく友の祝いとして飛んできたの!おめでとー!」
「別に嬉しくないですぅ。自分自身も意味分からんのですよ」
「まあそうだろうねー。でも水樹がモテることは分かるよー。とにかくおめでとう!」
「……う、うるさいですぅ」
別に、水樹自身は友達と認めていなかった。
だが、何かあれば祐奈が飛んできて、褒めてくれて。
何回かそう繰り返すうちに祐奈とはまあまあ喋れるようになっていた。
だが、この時は水樹にとって「友達」とは思っていない。
一方で、付き合ってる男子とは。
良好かは、水樹には分からないのだが、二人で仲良く出かけることもあった。
だが、水樹にとって好きになることもないし、よく分からないまま進んでいた。
二人の仲は周りからはよく見えてたらしい。
「ねえ、蒼井さんって彼氏、いる?」
ある日、クラスメートの恋バナにふとしたことで巻き込まれ、そう聞かれた。
「……え、私ですかぁ?……いるっちゃいますよ、ですぅ」
「あーやっぱり!蒼井さんってモテそうな感じー!」
「可愛いもんね」
女子から褒められるが、水樹にとってはいつものことなので何も感じなかった。
そのため、水樹は照れ笑いもせずただそれを聞いていただけだった。
だが、これがいけなかった。
これを見ていた一人の女子が水樹の態度を「馬鹿にしている」と受け取ってしまったのだ。
しかもその子は水樹と付き合ってる男子に秘かに想いを寄せていて、元々水樹にはいい印象を抱いていない。
(なんなの、あの子。私は可愛いから当たり前って顔して!だから付き合うのも当たり前って感じじゃないの!なにそれ!)
怒りが爆発したその子は作戦を練り始めた。
水樹と付き合ってる男子を騙し、水樹をフラす計画。
男子の方はいとも簡単もその子の甘い誘惑にのって、水樹が悪い女だという言い分を信じてしまった。
そして、あろうことか、ついに男子が水樹をフッてしまったのだ。
「……何ですぅ?何が、したかったのですぅ?」
当然水樹は困惑する。
だが、がっかりはしなかった。元々、何が何だか分からなかったから。
だが、これもその女子の怒りを誘う行動になる。
フラれてショックを受けるかと思っていたのに平然としていたため、また男子を操って、水樹をクラスから孤立させることに成功した。
(思い知るがいいわよ……)
だが、水樹はただ困惑するだけ。
(……何ですぅ?みんなから無視されますけど、別に、こっちも無視して返せばいいですぅ。それにしても、告っておいてフるとか、子供ですか。このクズ男なのですぅ)
その日から、男にトラウマを持った、否、クズだと認識した。
そして、それがきっかけで水樹の毒舌な性格が現れることになる……。





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