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休日に向けて

 打ち合わせをした翌日から、学園内で私とヘリアン王子が重度のシスコンであるという噂が流れた。


 大食堂でのやりとりを見ていた者が大勢いたため、その噂の信憑性が増しているのだった。


 ちょっと解せない噂だ。

 確かに私の弟は世界一可愛いとは思うけれど、昨日の時のやりとりでシスコン全開だったのはヘリアン王子だけである。


 まあ、お役目にはあまり影響は無いと思われるので噂についてはノータッチでそのまま放っておくことにする。


 でも、この噂を面白おかしく口にしていた者が私に決闘を申し込んできた場合、情け容赦をかけるつもりは一切ない。


 本気で潰そうと思う。


 ちなみに、この噂を耳にしたヘリアン王子は、むしろ誇らしげな反応をしていた。


 嬉しそうに、「これがきっかけで、より多くの者たちがサフィーアの魅力に気付いてくれると嬉しい」と私に話してきたのだった。


 そういえば、私たちはいつも放課後に決闘をしているので、学園内ではそこそこ有名ではあるけれど、サフィーア王女に関してはあまり学園内で名前を聞いていない。

 弟は野郎連中に人気があるのでアレだけど、サフィーア王女については身分が王族な上、座学で優秀な成績を収めているのは確かなので、知名度はもっとあっても然るべきだろう。


 もしかしたら元々女性人気が高いのだけれど、単に私がそこら辺の情報に疎いだけだということかもしれないが。


 ……私、令嬢なのになあ。

 女子学生たちの中に混ざって一緒にお茶会とかしてみたいと思うことはある。


 でも、この状態でそのようなことを行えば、目の前で鼻血を出したり、倒れたりする学生が出てきてお茶会どころでは無くなるので、やるつもりは一切ないけれど。


 まあ、元に戻った時のための楽しみとしておいて、今は目の前のことに集中しよう。


 何はともあれ、弟とサフィーア王女の休日のことが最優先だ。


 無事何事もなくその日を過ごせるよう私も頑張らなければ。


 当日、弟とサフィーア王女は、王都の中央通りでショッピングを行う予定となっている。

 道沿いに立ち並ぶ沢山の店舗を二人で見て回る感じだ。


 あとは、歩きながら行うちょっとした王都観光だろうか。


 二人ともあまり外に出た経験がないため、当日をかなり楽しみにしているようであった。


 実のところサフィーア王女が弟を誘った理由はよく分からない。

 けれど、どうやらサフィーア王女は、学園で話すようになった同級生たちの話を聞いて興味を持ち、一度王都の街中に遊びに行ってみたいと思うようになったらしかった。


「その、後学のため、出来れば早いうちに行きたいなあと思いまして……」


 打ち合わせ中、若干恥ずかしそうな様子でサフィーア王女は、私たちに胸のうちを明かしてくれた。


 正直、全然構わないと思う。

 羽休めと勉強を兼ねているのだから、今回の一度だけではなく何度でも遊びに行けばいいのではないかと思う。


 どうやら彼女は、皆に迷惑をかけてしまうと思っているらしいが、そんなこと別に気にする必要はない。


 護衛には、選りすぐった騎士団員が着くだろうし、それに当日は私もそして弟もいる。もちろんヘリアン王子だって。


 だから、大抵のことは何とかなるだろう。

 もしも何かあれば、こちらに任せて欲しい。


 以前のような誘拐事件が起きれば、かなり大変ではあるがそれ以外ならば、十分余裕を持って対処が出来るだろう。


 だから、サフィーア王女には、心ゆくまで今回の休日を楽しんでもらいたい。


 そう打ち合わせ中に伝えたかったけれど、おそらくヘリアン王子の手によってテーブルの耐久度が削られる結果になりそうだったのでやむなく断念したのだった。


 それとあと、せっかく外出するいい機会である。


 なので、私と弟は少しばかり策を練ることにしたのだった。


 今回はあくまで元に戻るための準備である。


 私たちは、前回の夜遊びの失敗からきちんと学習して、今後必要となる物を買い揃えることにしたのだった。


 もちろん、怪しまれないように慎重に期す構えだ。


 今回は、従者二人がいないとはいえ、周りには王族二人と大勢の護衛がいるのだから。


 策としては、積極的に買い物を行なってその中に時折、本命を紛れ込ませるという手法を使うことにする。


 木を隠すなら森の中。


 大食堂で行なった打ち合わせが活きてきたのだった。


 当日が楽しみで仕方ない。この変わらない現状から一歩前進することが出来そうなのだから。


 今後のことについて思いを馳せながら私と弟は、二人揃って小さく笑みを浮かべたのだった。

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