↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/366

お誘い

「遊びに行くだと……? 貴様と誰が?」


 私はヘリアン王子の言葉が信じられず、思わず聞き返してしまう。


「いや、君と僕と、でだが。もしかして君の方で何か問題でもあるだろうか?」


 いや、ない。

 ないけれど、ちょっと待って欲しい。


 一度、頭と心を落ち着かせたい。

 あなたの言葉を嚥下する時間が欲しい。


 えっ、えっ、いきなり何? どういうこと?


 何でヘリアン王子が、私を遊びに誘ってくるのだろうか。

 分からない。彼が一体何を考えているのか。


 普通は、別に友達でもない相手を遊びに誘う?

 絶対、誘わないだろう。少なくとも私は誘おうとは思わない。


 でも、現にヘリアン王子は私に対して「おい、レイン! 暇なら遊びに行こうぜぇ!!」と声をかけてきているのだ。


 つまり、これはあれだ。

 ヘリアン王子は、私を友達だと認識しているということなのだろうか。


 それって、とても重要なことでは……?

 何故なら、半年以上孤独に学園に通い続けた私が、今ようやくそのぼっち生活から脱出出来るのかもしれないのだから。


 ……いや、まだだ。まだ騙されない。

 私の思考はそこまでハッピーではない。

 絶対裏があるはずだ。人生そんなに甘くはないのだから。


「目的は何だ。言え、白状しろ」


 私はヘリアン王子に詰め寄ると、彼はばつの悪そうな顔になる。


「やはり君には見破られてしまうか……」


 ほらぁ、やっぱりぃ。

 絶対何かあると思った。


 ぼっちの直感を舐めるんじゃない。分かったか。ちくしょうめぇ……。


 正直かなりショックだった。

 ヘリアン王子から受けた攻撃の中で、今までで最も私に対して有効な一撃だったと思う。


 もしかしてヘリアン王子、剣より言葉での攻撃の方が得意なんじゃないの? うちの弟みたいに。


 そんなことを考えていると、ヘリアン王子は私に対して説明をするためか、おもむろに口を開く。


「騙そうとしてすまない。もちろん、君に対して第一騎士団の団員たちと行った王都の街中にある店とか場所とかを自慢したい気持ちも多分にあるのだが、それ以外にも僕たちにとって重要なことがあるんだ」


 僕たち? え、どういうこと?

 私も何か関係あるの?


 そう思いながらヘリアン王子の話を聞く。


「実は、サフィーアが今週の休日に王都の街中に遊びに行く予定らしい。だから、その心配なんだ。サフィーアは今まで箱入りだったから」


 まあ、確かにあまり外を出歩く経験がなかった妹を心配になる気持ちは分からないでもない。

 だから出来るなら付き添いたい、もしくは迷惑にならないよう遠くから見守りたいという気持ちも。

 正直危ない目に遭ったらどうしようとも思うだろう。


 もちろん当日は騎士団辺りが護衛に着くだろうけれど、時には頭で理解していても、心の部分ではどうしても割り切れないことだってある。


 彼自身、先日誘拐されたばかりでもあるし。


 けれど、彼の様子を見ていると、到底それだけではないように思える。


「まだあるだろう。簡潔に言え」

「そうだな、実はサフィーアと一緒に遊びに行く相手は、君の姉君なんだ」


 え……? レインがサフィーア王女と……?


 あれ、二人ってそんなに仲良かったっけ。

 確か、弟自身の話を聞いていると、そこまで親しいわけではなかったはずだけど……。

 これは一体どういうことなんだろうか。


 というか、従者のマリー的に遊びに行くのオッケーなんだ。

 まあ非行に走るわけでもないし、相手が王族ならばお役目も十分果たせるだろうし、おそらくそういう考え方なのだろう。


「レイン・メアリクス、君は気にならないのか?」


 ヘリアン王子が、同意を求めてくる。


 気になる。

 かなり、いやとても、いや超気になる。


 どういった経緯で二人は王都の街中に遊びに行くことになったのか、後で弟に教えてもらうことにしよう。


 それと、私も段々と心配になってきた。


 弟は、あまり外に出たことが無いのだ。


 私の場合、乗馬の訓練で時折外に出ていたが、対して弟の移動範囲は基本屋敷の中で終始している。


 不安だ。

 おそらくマリーは護衛が着くから問題無しと判断したのだろうけれど、結局のところ箱入りお姫様と箱入りお嬢様が二人揃って街中へ遊びに行くということなのだから。


 それを聞いて不安にならない方がおかしい。


 もしも外で危ない目に遭ったら……。

 とても気が気ではない。


「君を誘った理由は二つある。一つは、サフィーアが誘ったのは他ならぬ君の姉君であること。もう一つは、王族である僕が外を出歩くことになった場合、万が一の時君が側にいればとても心強いからだ」


 ヘリアン王子は、私に向かって手を差し出す。


「人選は君以外考えられない。どうか協力して欲しい。頼む」


 そこまで言われたら、到底断ることなど出来ないし、するつもりもない。


 私は了承する。


 ――けれども、ぼっちの私を騙そうとした話は別だ。大罪である。


「良かった。ありがとう、引き受けてくれ―― アアーッ!」


 私は悲しみに暮れながら、仕返しとして差し出してきたヘリアン王子の手を払い除け、そのまま再び思いっきり足払いをかけたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。