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その少女は異世界で中華の兵法を使ってなんとかする。  作者:
第27話 将失=将軍が失敗する理由
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その4(全4回) ロジスティクスに失策があると失敗する

 その日の朝議では、緊張が走った。


「これから連邦と戦うにあたり、タケト宰相に後方支援業務を一任します」


 ハナ摂政が大広間に居並(いなら)ぶ文武百官を前にして、そう話した矢先のことだ。


「お言葉ながら、タケト宰相は逆賊であります。どのような業務であれ、はたして業務を一任してよろしいものでありましょうか? それに第一、そもそも宰相の地位にふさわしいと言えましょうか?」


 とある臣下がタケト宰相の面前で批判した。


 文武百官の視線がタケト宰相に集中する。


(あの血の気の多いタケト殿下のことだ。刃傷沙汰(にんじょうざた)に及ぶのではないか?)


 文武百官は、だれもが思う。流血の事態を心配してヒヤヒヤしている者もいれば、やじ馬的にケンカを期待してワクワクしている者もいる。その反応はさまざまだ。


 しかし、タケト宰相はピクリとも動かない。まるで托鉢僧(たくはつそう)のように立ったまま瞑目(めいもく)している。


 タケト宰相は、かつて皇子派の領袖(りょうしゅう)として帝国の政治を牛耳(ぎゅうじ)っていた。


 独断で好き勝手なことばかりしていた。そのせいで知らぬ間に多くの怨みを買い、臣下たちから憎まれていた。


(だから、なにかにつけ非難されるのだろう)


 タケト宰相は自覚していた。


(あのとき、やつらは文句1つ言わなかったが、面従腹背(めんじゅうふくはい)してたってわけか。オレも見る目がないというか、ともあれ今回のことは「身から出た(さび)」ってやつだな。当然の結果だ)


 だから目をとじて黙っていた。


「ふつうなら、ふさわしくないわね――」


 ハナ摂政は、あっさり言う。


「――だけど、これから連邦と戦うにあたり、後方支援業務を担当してくれる人はいる?」


 文武百官は黙って目をそらす。


 連邦に遠征したとして、その領土は広大だ。まちがいなく補給線がのびる。こうなれば後方支援も大変になる。成功はおぼつかない。


 もし遠征軍が敗北したら、どうなる?


「後方支援が不十分だったから、武器弾薬が不足して、戦いたくても戦えなかった。だから負けたのだ」


 このように現場から言われ、敗戦の責任を押しつけられかねない。そうなれば、おそらく処刑されるだろう。よくて永久追放か。


 だから、後方支援業務を引き受けるのは、まさに「火中の栗をひろう」ようなものだ。日和見(ひよりみ)主義者がそろっている今の政府には、みずから志願する者などいない。


「だれか、いないの?」


 ハナ摂政が改めて問う。しかし、沈黙がその場を支配する。


「だったら、やはりタケト宰相に任せるしかないわ――」


 ハナ摂政は、きっぱり言う。


「――タケト宰相は、たしかに皇太子だったフミト元帥とケンカして“逆賊”とか言われているけど、西部の開拓や治安の維持で成果をあげているわ」


 タケト皇子(当時)が主導して行った西部の大規模な開拓によって、雇用が生み出され、失業者も少なくなった。臣民の生活も改善され、結果として「衣食足りて礼節を知る」の言葉どおり、治安もよくなった。


 西部の開拓が始まる前に比べると、税収だって増えてきている。


「おかげでだれもが生活しやすくなったわけだから、その帝国に対する功績の大きさは、その罪を相殺(そうさい)して余りあるわ。今の帝国に、これくらいの成果をあげられる臣下はいる?」


 文武百官はあいかわらず目をそらしたり、うつむいたりしながら黙っている。


「タケト宰相は、すぐれた政治手腕をもっている。どんなに大変な後方支援業務でも、うまくやってくれるはずよ。だから、業務をスムーズに行ってもらうためにも宰相の地位を与えるの。本人がふさわしいからじゃなくて、帝国が必要だからそうするの。わかった?」


 摂政とは、皇帝の代理人だ。その摂政からここまで言われても反論する気骨ある臣下は、今の政府にはいない。


 結局のところ、ハナ摂政の鶴の一声で、今回もまたタケト宰相を非難する声はかき消された。


 その後、ハナ摂政が朝議を終え、奥御殿に向かっているときのことだ。


「おい、ハナ」


 呼びかけられてふりかえると、タケト宰相がいた。


 さっきまで朝議の場で一緒にいたが、そのときは一言も話していない。タケト宰相は、ハナ摂政と文武百官たちとのやりとりを脇で聞きながら、最初から最後まで黙ったままだった。


「ちょっと、タケトお兄様、ここは宮殿よ。あまり呼び捨てとか、なれなれしく呼びかけないでよね。人目とかあるでしょ?」


 ハナ摂政がたしなめるように言うと、タケト宰相は軽く鼻で笑った。


「ふふん、オレは“平民”だからな。平民はやんごとなき殿上人(でんじょうびと)の皆様方の洗練された礼儀作法など理解できない」


「なにかの皮肉のつもり?」


 ハナ摂政はムスッとなる。


「そんなことより、おまえに――“摂政殿下”に1つ伝えたいことがある」


 一転してマジ顔になるタケト宰相。


「なによ?」


「無理をしてまでオレを宰相にしておく必要などないぞ。さっさと解任してもらってかまわない。オレはオレが人の上に立つ器ではないことを知っている……。てか、あいつに思い知らされた」


 ハナ摂政は、あっけにとられたかのようにキョトンとした。


「それにオレは“逆賊”だ。そんなオレを重用すれば、“摂政殿下”もやりにくくなるだろう?」


「え? あたしのことを気づかってくれるの?」


 ハナ摂政の顔つきがみるみる明るくなっていく。


「気づかうと言うか、帝国の安定を考えたら、当然そうなるだろ」


 ハナ摂政はほほ笑んだまま、マジマジとタケト宰相の顔をみつめている。


「……な、なんだよ?」 


 とまどうタケト宰相。


「タケトお兄様も変わったなぁって」


「は?」


「これまでのタケトお兄様だったら、そんなしおらしいことは言わなかった」


「バカにしてんのか?」


「ううん――」


 ハナ摂政は大きく首を横にふる。


「――あたし、うれしいの。これでやっと家族みんなが仲良くできるかなって思うと」


 ハナ摂政は、笑顔だけど涙目だった。


「はい?」


 あっけにとられているタケト宰相。しばしの沈黙。


「ふん、くだらないことを言うな――」


 タケト宰相は、照れ隠しでもするかのように顔をしかめる。


「――そんな家族のことより、今は政治のことが大事だろ」


「あ、うん。そうね。で、なにか“進言”とかあるわけ?」


 ハナ摂政は、うれしそうに問いかけた。


「……ったく、なんか拍子抜(ひょうしぬ)けして、話しにくいな。――ともあれ、オレがいることで、おまえが迷惑するなら、オレも困る」


 タケト宰相は、吐き捨てるように言った。


「迷惑じゃないわ。いてくれないと、あたしが困る。これから帝国の富国強兵を実現していくためにも、どうしてもタケトお兄様の政治手腕が必要だもの」


「……」


 タケト宰相は、さぐるような目をしてハナ摂政を見つめた。


 ハナ摂政は、ささっと目をそらす。目が泳いでいるようにも見える。


「おまえ……、もとい“摂政殿下”、それってフミトの受け売りだろ?」


「え?」


 ハナ摂政は、どぎまぎしながら苦笑いした。


「な、なんのことかしら? ち、ちょっと変なことを言わないでよね。あたしの意見に決まってるじゃない。そう。あたしの意見よ」


「図星か――」


 軽くため息をつくタケト宰相。


「――さしあたり、フミトから言われたんだろ? あいつとオレの仲がしっくりいっていないから、おまえが仲介しろみたいに」


「うう……」


 たじろぐハナ摂政だったが、すぐにひらきなおった。


「そうよ。悪い?」


 ハナ摂政は、一転して勝ち気な表情になり、強気に言う。


「――でも、あたしだって、そう思ってる。だから、あたしの意見であることには変わりないわよ。それに今回、あれだけ広大な連邦を戦場として戦うなら、なにより後方支援が大切になってくるし、大変になってくる。こんな大切で大変な仕事を信じて任せられるのって、やっぱり家族しかいないでしょ?」


(こいつはまだ15歳だし、この前まではキャピキャピな女の子だったくせして、どうして軍事に詳しくなってんだ?)


 タケト宰相は意外に思い、不思議そうにハナ摂政を見つめる。思いあたる(ふし)がないでもないが……。


「……まあいい。ともあれ、あいつもオレに(ちょく)で言うより、だれかを通じて言ったほうが、あいつの言うことをオレが信じやすくなると思ったんだろうが、まったく姑息(こそく)なことをしやがるぜ」


 タケト宰相は口では悪態(あくたい)をつきながらも、その目は笑っていた。


「でも、まあ、オレが悪いんだけどな」


 言いながら、姿勢を正してハナ摂政に“臣下らしく”深々と頭を下げ、丁寧にお辞儀した。


「ともあれ、オレが必要と言うなら最善を尽くす。しかし、“摂政殿下”の負担になるなら、遠慮なくオレを切り捨ててほしい」


「ありがとう」


 ハナ摂政は、今にも泣きそうな笑顔で応じた。


 ◆ ◆ ◆


 クリーがハナ摂政から呼び出された日のことだ。


 ハナ摂政との話も終わり、クリーが帰宅するために宮殿の正面玄関に向かっていたところ、廊下でタケト宰相とばったり出くわした。


 いや、出くわしたと言うより、人気(ひとけ)の少ない廊下でタケト宰相がクリーのことを待ち伏せていたと言ったほうが正解だろう。


「ちょっと話がある」


 そう言ってタケト宰相は、近くの小部屋にクリーをいざなった。2人きりで話したかったのだろう。


 クリーは警戒しているようすだったが、おとなしく従った。


「悪いな。すぐ終わる」


 タケト宰相は小部屋に入るや、ドスッとソファーに腰かけ、クリーにも座るようにうながす。


 クリーはタケト宰相と向き合うような形で、すなおにちょこんと腰かけた。


「聞くところによると、おまえがフミトやハナにいろいろと()知恵(ぢえ)しているそうだな」


 クリーはクールな表情のまま、黙ってタケト宰相の目を見つめている。


「オレもフミトといろいろあったが、今は反省している。だから、安心しろ。おまえを逆恨みして、どうこうするつもりなんてない」


 やはりクリーは黙ったままだ。


 タケト宰相は、「まいったな」と言わんばかりにため息をつき、苦笑いした。


「ともあれ、教えてほしい。オレを宰相として後方支援を担当させるというのも、おまえが入れ知恵したことなのか?」


「タケト殿下を宰相にしたいと言ったのはフミト殿下。タケト殿下に後方支援を担当してもらうというのは、わたしがアドバイスしたことだけど、決めたのはやはりフミト殿下」


「そうか……。で、どうしてオレに後方支援を担当させようと思った?」


「そうすれば帝国も助かるし、タケト殿下も助かるから」


「助かる……? よく分からないが、どういうことだ?」


「わが一族に伝わる教えだけど、戦争すると、国民は苦しむし、兵隊は疲れる。こうなったら負ける」


「だろうな」


「とりわけ遠征するとなると、兵士は望郷の念が強くなるし、場合によっては逃げたりする。こうなったら負ける。そのようにも教えられている」


「そりゃそうだろうが、でも、まあ、あいつの場合、人心掌握(じんしんしょうあく)がうまいからな。これからの連邦との戦争では問題ないんじゃないか?」


「はい。そう思う。だけど、それでも人はだれしも死ぬのがこわい。だから戦場では、軍隊がおびえたり、びくついたりすることもある。こうなったら負けるとも教えられている」


「まあ、同じ帝国軍の兵士でも、勇敢な者もいれば、臆病(おくびょう)(やつ)もいる。ピンキリだ。こわがって戦いどころではなくなる兵士も出てくるだろうな」


「はい。だからこそ後方支援(サポート)が必要になる。人は人からサポートされると心強くなるから、がんばれるようになる」


「ははは。おもしろいレトリックだな――」


 タケト宰相は、愉快そうに言う。


「――まあ、“腹が減っては(いくさ)はできぬ”とも言う。空腹だと元気も出ない。元気が出ないと気分も落ちこむ。そうなると当然、士気も下がるだろうな。そう考えると、後方支援は大切だ」


「はい。それに武器や食料の補充がないと、帝国軍は戦いたくても戦えなくなる。その点でも大切だと思う――」


 そう言えば、クリーが学んでいるかどうかは不明だが、『孫子』にもあった。


 軍隊に補給がないときには壊滅する。軍隊に食料がないときには壊滅する。軍隊に物資がないときには壊滅する。


 ちなみに、クリーの学んでいる『孫臏兵法(スンピンビンファ)』には、「見威王」篇に「城が小さくても、守備が堅固なのは、物資を有しているからだ」とある。


「――だから、タケト殿下が後方支援を担当してくれたら、帝国も助かる。タケト殿下は、政治手腕に長けているから、後方支援もうまいはず」


(こいつも言うか……)


 タケト宰相は、フッと軽くため息をついた。


「オレには、おまえが期待するほどの政治手腕はないぞ。だいたいオレに政治手腕があれば、今頃フミトに負けていない」


「はい。だけど、わがもの顔で帝国を牛耳(ぎゅうじ)り、あれだけムチャクチャな政争ばかり続けながら、それでも帝国を傾けなかったのだから、やはり政治手腕はすぐれていると思う。ムチャな戦争をしても経済が破たんしないように、じょうずにきりもりしてくれるはず」


「おまえは言うにことかいて……、ともあれズケズケと言うな――」


 タケト宰相は思わず苦笑いする。


「――まあいい。今の説明でよしとしよう。とにかくオレが後方支援を担当すれば、帝国が助かるという理屈は分かった。だが、それでどうしてオレが助かる?」


「後方支援での活躍は、勲功(くんこう)第一に値する。わが一族の故地に伝わる話だけど――」


 かつてシーハン国をつくりあげたリウパンは、臣下たちの功績を評価するとき、シャオフを勲功第一とした。


 これに対して、歴戦の武将たちから反論が出る。


「われら武将は、命がけで戦ってきました。しかし、シャオフは安全な後方にいて、書類をみていただけです。それなのに、どうしてシャオフの功績が、われらよりも上だとおっしゃるのですか?」


 たしかにシャオフは、後方支援が担当だったので、戦場で戦っていなかった。


 しかし、前線で兵士が不足すると、すぐに兵士を補充した。物資が不足すると、すぐに物資を補給した。しかも、リウパンが遠征に出かけて不在でも、その領地をうまく経営して守りぬいた。


 こうしたシャオフの後方支援がなければ、リウパンも安心して遠征できなかっただろうし、武将たちも戦えなくなっていたことだろう。


 リウパンは、そういう理由で()()る武将たちを黙らせ、シャオフを勲功第一とした。


「――これと同じような理由づけを使えば、今回の戦争に勝利したあと、タケト殿下を勲功第一にできる。勲功第一になれば、だれもタケト殿下のことを“宰相にふさわしくない”なんて言えなくなる」


「すでに勝った気でいるのも驚きだが……、まあ負けるつもりで戦争をはじめるバカはいないか……。ともあれ、フミトは今回の戦争を利用して、オレに名誉挽回(めいよばんかい)のチャンスを与えようとしているわけか?」


「はい」


「だいたいあいつは、どうしてそこまでしてオレにこだわる? オレくらいの能力のもちぬしなら、探せば巨万(ごまん)といるだろう。オレが兄弟だからか? 家族だからか? 情にほだされたのか?」


「たぶん違うと思う。フミト殿下は、タケト殿下の研究に関心をもち、それを実現したいと思っている。そのためにもタケト殿下の名誉回復が必要になるのだと思う」


「は? オレの研究……?」


 はじめは「意味不明」と言わんばかりにポカンとしていたが、思いあたる(ふし)があったのか、すぐにハッとした。


「あれを実現する……となると、帝国のありよう自体が変わってしまうぞ」


 タケト宰相は、思わず慄然(りつぜん)とした。背筋に冷たいもが走るのを感じ、表情をこわばらせる。


 ◆ ◆ ◆


 この縦に長い大広間は、どのくらいの高さがあるだろうか。


 両脇にある縦にまっすぐ並んだ荘厳(そうごん)な列柱が天井を支えているが、室内が薄暗いせいで見上げても天井がよく見えない。高いところにシャンデリアらしきものがうっすらと見えるが、よく分からない。


 壁面を飾っているいくつもの大きなステンドグラスからは、やわらかな光がさしこんでいる。その穏やかだがカラフルに変換された光が、室内に神秘的な雰囲気をかもしだす。


 だが、室内に響きわたる歯車の音が、その場の神聖さをぶちこわしていた。多くの歯車の回転音がガリガリと耳障(みみざわ)りだった。


 ここは教会本部跡にある大聖堂だ。教会は、かつてハン王国で唯一の宗教団体で、大きな影響力をもっていたが、革命と同時に迷信として否定され、徹底的に弾圧された。公式報道によると、今や信者は皆無である。


 この大聖堂も革命政府に接収され、今は資本家(ギルド)倶楽部(クラブ)として利用されている。つまり、資本家(ギルド)の本部みたいなものだ。


 かつての祭壇には、なにやらタイプライターのようなキーボードが置かれていた。その脇にある装置からは、ときおりパンチングされた長い紙がカチカチカチと流れるように出てくる。


 その前には白衣をまとった白髪の人物がいて、パンチングされた紙を読み、うなずいていた。口元には不気味な笑みを浮かべている。


『ギルド長が参上されました』


 手元のインターホンから声がした。


「なかに通しなさい」


 白髪の人物は、そっけなく言った。


 しばらくすると、ギギーっと大聖堂の重たい扉の開く音がした。カツカツと足音が響いてくる。


 まるでビジネスパーソンのように正装した中年の男性が大聖堂に姿をあらわした。ギルド長だ。なにごとかあったのか、ちょっと慌てたようすにも見える。


「博士の言われたとおりでした。わが連邦に対して、シン帝国が宣戦を布告しました」


「そうか。だが(われ)の計算より、ギルド長の到来はわずかばかり遅れている」


「あ、報告が遅くなり、申し訳ありません」


 恐縮するギルド長。しかし、白髪の人物には気にしたようすがない。


「いくばくか調整が必要だな」


 白髪の人物は、見上げるようにして祭壇の奥を見やる。薄暗くてよく見えないが、祭壇の奥には空間があって、大小さまざまな歯車がかみあって回転しているようだ。


人工知能(コンピュータ)……のことですか?」


 ギルド長が感心したようすで言う。


「――しかし、さすがは異端の高級技術官僚(マッドテクノクラート)と言われただけのことはありますな。こんなカラクリなど、だれも思いつかないでしょう。まさに神業(かみわざ)としか言いようがありません」


「神の力ではない。科学の力だ。この力さえあれば、未来を予測することさえ可能となる。従って最後に笑うのは、我らだ。これまでも、これからも、これは不変の真理だ」


 連邦が先進的な科学技術をもっている国であることは、シン帝国にも広く知られている。


 しかし、よもや人工知能(コンピュータ)のような超高度技術(オーバーテクノロジー)をもっているなど、シン帝国ではだれもが夢想だにしていないだろう。


全文訳『孫臏兵法』将失


 将軍が失敗するのは、次のような場合です。

 第一に、行動の目的を見失って迷走しているなら、失敗します。

 第二に、ならず者を徴兵して使ったり、敗走します。兵士を押し止めて戦わせたりし、実力がないのに、あるようにとりつくろっているなら、失敗します。

 第三に、意見が対立し、計画がまとまらないなら、失敗します。

 第四に、命令が守られず、みんなが一つになっていないなら、失敗します。

 第五に、

 第六に、人民が戦争で苦しんでいるなら、失敗します。

 第七に、軍隊が疲れているなら、失敗します。

 第八に、兵士が故郷に帰りたがっているなら、失敗します。

 第九に、兵士が逃げているなら、失敗します。

 第十に、兵士が~で~しないなら、失敗します。

 第十一に、軍隊がなにかにつけビクビクしているなら、失敗します。

 第十二に、兵士の通る道が足を取られるほどぬかるんでいて、みんなが苦しんでいるなら、失敗します。

 第十三に、軍隊が堅固な陣地を構築して、みんなが疲れているなら、失敗します。

 第十四に、~備え~なら、失敗します。

 第十五に、日が暮れたけど、目的までの道のりはまだ遠くて、みんながイライラするようになっているなら、失敗します。

 第十六に、~なら、失敗します。

 第十七に、~みんなが恐れているなら、失敗します。

 第十八に、命令がころころ変わり、みんなが心底からイヤに思っているなら、失敗します。

 第十九に、軍隊に不和が生じ、みんなが将軍や管理職をダメだと思っているなら、失敗します。

 第二十に、えこひいきが多くて、みんながやる気をなくしているなら、失敗します。

 第二十一に、上官がうたぐり深くて、みんなも疑念をもっているなら、失敗します。

 第二十二に、上官がまちがいを指摘されるのを嫌うなら、失敗します。

 第二十三に、無能な人材を採用するなら、失敗します。

 第二十四に、従軍のために野外での生活が続き、意気ごみが弱まっているなら、失敗します。

 第二十五に、戦いを前にして、みんなの心がバラバラになっているなら、失敗します。

 第二十六に、(努力もしないで)敵が不運にもダメージを受けるのを期待しているなら、失敗します。

 第二十七に、好戦的で、権謀術数をたのみとしているなら、失敗します。

 第二十八に、軍隊の乗りもに~がないなら、失敗します。

(第二十九に~)下級の兵士~、みんなの心が(戦うことを)憎んでいるなら、失敗します。

 第三十に、ろくにフォーメーションも組めず、そのまま狭いところに出ていくなら、失敗します。

 第三十一に、軍隊の前列と後列の兵士の配置が、布陣する前に機能的に整理されていないなら、失敗します。

 第三十二、戦うとき、前方の敵に気をとられて後方がおざなりとなったり、後方の敵に気をとられて前方がおざなりになったり、右の敵に気をとられて左がおざなりになったり、左の敵に気をとられて右がおざなりになったりするなど、戦うときに気をとられているなら、失敗します。



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