その3(全3回) 孔明灯は飛んでいく
話は少しさかのぼる。
ハナ皇姫とクリーは、自爆兵器の「工場」から再び部屋に戻されて監禁された。手錠はつけられたままだ。
「どうしたら、いいと思う?」
さすがのハナ皇姫も、不安な顔をしている。
今にも泣きだしそうだ。
「とにかく救援を呼ぶといいと思う」
クリーは、クールに言った。
「まあ、そうなんだけど……。方法とかあるの?」
「うん。わが一族に伝わる話だけど――」
クリーは、こんな話をした。
ものすごく昔のこと。かつてミン族の故郷の地が、3つの国に分かれて争っていたとき、蜀国に天才軍師の諸葛孔明が現れた。
諸葛孔明は、城を包囲されて困ったとき、“孔明灯”を飛ばして、応援を求める。かくしてコンミンは、危機を脱した。
孔明灯は、大きな紙袋の口のところにロウソクなどの燃料をぶらさげて作る。燃料に火をつけると、その熱で紙袋の中の空気が暖まり、紙袋が上昇するというしくみだ。
「これを作って、夜、そこの小窓から飛ばせば救難信号になる。わが一族では今でも使っているから、作り方も分かる」
「そうなんだ」
ハナ皇姫の表情は明るい。希望が見えたからだろう。
「でも、見張りとかに見つかるんじゃない?」
「うん。だから、相手の動きをさぐってから、作成する」
かくして2人は、見張りがどういった感じで自分たちのことを見張るのか、そのパターンをさぐることにした。
それと並行して、2日目に騒ぎ、3日目にへこみ、4日目にあきらめたように見せかけるという手順ふんで、相手をかんちがいさせ、材料をせしめるという段取りも決めた。
その結果、見張りは食事を差し入れるときくらいしか、室内を覗かないことが分かった。「どうせ逃げられない」とタカをくくっているらしく、あとは近くの待機室で居眠りとかしているみたいだ。
あと、遺書を書くと言ってあざむき、材料を手に入れることにも成功したことは、すでに紹介したとおりだ。
幸いにして老人たちが2人のことを「ただの女の子」と思って油断したから、成功したのだろう。まさか15歳の少女――クリーが天才軍師だとは、普通ならだれも思わない。
「まず便箋をはりあわせ、大きな紙袋を作る」
ハナ皇姫とクリーは便箋帳の便箋をバラバラにして、はりあわせていった。はりつけた紙は、毛布の下に隠すなどして見つからないように工夫する。
「それから紙袋の口のところを補強する」
2人は見張りの目を盗みながら、便箋用紙を巻いて棒を作ると、それを輪にして紙袋の口のところに張り付けた。
「口のところに燃料をぶらさげるための部品を作る」
2人はブラジャーをはずす。
もちろん2人とも手錠をつけられているので、ハナ皇姫のブラはクリーがはずし、クリーのブラはハナ皇姫がはずすことになる。
「女子どうしだから恥ずかしがらないでいいのに、クリーったら真っ赤になってカワイイよね。うふっ」
「……と、とりあえず、これからワイヤーをとる」
クリーは照れを隠すように下を向き、作業を続けた。
ブラジャーからワイヤーを抜き取ると、それを紙袋の口のところに取りつける。上から見ると紙袋の口が○になっているわけだが、そこに×の形になるようにワイヤーを張りつけた。
「あとは燃料をつけたら、できあがり」
クリーは、服を破って布きれをつくると、それにランプの油を染みこませた。十分に染みたところで、×の真ん中にグルグル巻きにして結びつける。
これで完成。
あとは夜になるのを待ち、改めて布切れに燃料を染みこませた。そのうえで小窓の鉄格子の間から紙袋を折りたたんだ状態で外に出す。
そこで落とさないように注意しながら紙袋を広げ、燃料にランプの火をつけた。
2人で鉄格子の間から手を出したまま紙袋をしばらく支えていると、中の空気が暖まり、浮力が出てくる。2人がそっと手を離すと、紙袋は煌々と光を発しながら、夜空に上昇していった。
この“孔明灯”が救難信号となり、ハナ皇姫とクリー、そして多くの臣民が救われたわけだ。
ハナ皇姫は、青い目をした武器商人――ビゼン・アルスタットのトラックに同乗して帝都に戻っているとき、この話を武器商人に教えた。
「それは、なかなかの奇策でございましたね」
「でしょ!」
ハナ皇姫は、自慢げに言う。
「で、あのときの紙風船を大きくしたら、人間も空を飛べるんじゃないかしら?」
「なるほど!」
武器商人の青い目も輝く。
「――それは、おもしろいアイデアでございますね!」
さすがは遠く西の彼方から、わざわざ東の端まで冒険してきた商人だけのことはある。チャレンジ精神にあふれ、まるで子どものような好奇心にもあふれている。
だから、ハナ皇姫とも気があい、その「お抱え商人」になっているのかもしれない。
ちなみに、かつて三国時代の天才軍師・諸葛孔明も、若いとき、大きな灯籠をつくり、その中に100本のロウソクを入れて燃やすことによって、熱気球のようにして空を飛んだという伝説もある。
このことをクリーたちミン族の人間が知っているかどうかは不明だ。
◆ ◆ ◆
ちょうど、そのころ、西部の海港都市・ゴトーの沖合いには、帝国の連合艦隊が停泊していた。
「右舷に船影っ!」
マスト上にいた見張員が叫んだ。
その声は、伝声管を通じて、艦橋に届く。
提督が望遠鏡で右舷を見ると、小型ボート3隻が猛スピードで向かってきていた。
「高速艇!?」
このままでは連合艦隊とぶつかる。
しかし、小型ボートは減速も、方向転換もしない。
「警戒っ!」
提督が急いで指示を出すが、間にあわない。
その瞬間、3隻の小型ボートは、それぞれ3隻の軍艦にぶつかり、大爆発した。
爆薬でも積んでいたのだろうか。小型ボートの爆発は、尋常なものではなかった。
激突された軍艦では、艦上の水兵たちが吹き飛ばされ、大参事だ。
爆発の衝撃は船体に穴をあけ、装甲に亀裂を走らせた。とめどなく浸水していく。火災もおきた。
――沈没はまぬがれない。
全文訳『孫ぴん兵法』殺士
孫子は言いました。
爵位と給与の体系を明らかにして~
~兵士は必死になります。賞罰を明らかに~
~兵士は必死になります。~を立て~
~必ず考察してから実行することで、兵士は必死になります~
~必死~。おさえて従わせることで、兵士は必死になります~
~することで、兵士は必死になります。~して~伝~
~勉の喜び~。場合によっては、州~に必死になります~
~の親しみ~。場合によっては、祖先の墳墓~に必死になります~
~の憎しみ~。場合によっては、飲食~に必死になります~
~所の安全~。場合によっては、疾~に必死になります~
~病の間~。場合によっては、~に必死になります~




