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その少女は異世界で中華の兵法を使ってなんとかする。  作者:
第12話 殺士編=兵士に死力を尽くさせる
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その2(全3回) 助けてほしいから救難信号を出す

 ハナ皇姫とクリーの監禁された部屋は、四方が石の壁に囲まれており、ドアが1つと、小さな窓が1つあるだけだった。


 もちろん、窓には幅20センチ間隔の鉄格子がはめられている。ここから外には出られない。もっとも、たとえ出られたとしても、高いところにあるので、落下して大けがをするだけだ。


 部屋の中央には、テーブル1つとイスが2つある。部屋の片隅(かたすみ)には、洗面台と、トイレ代わりの(つぼ)があった。


 ベッドはない。ただ毛布だけが置いてあった。雑魚寝(ざこね)しろということなのだろう。


 そんな部屋に監禁されて2日目、ハナ皇姫はドアをドンドンと激しくたたきながら叫ぶ。


「あけろーっ!」


 次はドアをドカドカと激しく蹴りながら叫ぶ。


「出せーっ!」


 今度はドアにドスドスと体当たりしながら叫ぶ。


「解放しろーっ!」


 ハナ皇姫が騒ぐたび、見張(みは)りの男が外から「黙れっ!」と言う。


 もちろん逃がしてもらえるわけなどない。


 ともあれ、この日は一日中、騒がしかった。


 監禁されて3日目、室内は前日とうってかわって静かだ。


 見張りの男は、心配になってドアの(のぞ)き窓から室内を確認する。


 ハナ皇姫とクリーが、メソメソと泣いていた。


 食事が運びこまれても、2人とも食べようともしなかった。


(まあ、殺されるのだから、そうなるのは無理ないな)


 見張りの男は思った。


 だけど、かわいそうとか、そんな感情はわいてこない。世界平和のためにも、死んでもらうことが必要なのだから。


 そうして3日目が終わった。


 監禁されて4日目、ハナ皇姫がドアをトントンとやさしくノックする。


「なんだ?」


 見張りの男が覗き窓をあけ、室内を覗きこみながら言う。


「お願いがあります」


 ハナ皇姫は、しおらしく言った。


 そのうるんだ(ひとみ)が色っぽい。しめった唇はセクシーだ。見張りの男は、思わずドキンッとなる。


「な、なんだ?」


「どうせ殺されるのでしたら、せめて遺書くらい書かせてください」


「まて。博士(はかせ)に聞いてくる」


 博士のというのは、占い師の老人のことだ。本人は「わしは心術担当官じゃ」って言っていたけど、なんのことだかよく分からない。


 しばらくして食事の出し入れ口から、便箋帳(びんせんちょう)、羽根ペン、インクが差し入れられた。


「あのぅ、封筒とノリは?」


 ハナ皇姫が、うるうるしながら言う。


「ああ? それもいるのか?」


「申し訳ありません」


「まってろ。博士に聞いてくる」


 しばらくして、今度は封筒とノリが差し入れられた。


「すみませんが……」


 ハナ皇姫は、あわれみをさそうような涙目で言う。


「今度は、なんだ?」


 見張りの男は、あきれるように言う。


「暗いので、せめてランプか、ロウソクをお借りできないでしょうか?」


「まて。博士に聞いてくる」


 しばらくして、今度はランプが差し入れられた。


「ありがとうございます」


 ハナ皇姫は、しんみりとお礼を言うと、ドアに背を向けた。


 振り向きざまに思いきり舌を出し、あかんべえをする。もちろん見張りの男からは見えない。


 その頃、北部辺境守備軍では各所に偵察隊を派遣して、ハナ皇姫とクリーを必死に捜索していた。偵察隊は交代制で、昼も夜も関係なく駆けまわる。


 そして、ハナ皇姫が遺書を書きたいと言った日の夜のこと――。


「未確認飛行物体っ!」


 偵察隊員が叫ぶ。


 見ると、北西方向の森林の上空に、不思議な光がフワフワと浮いている。


「なんだ?」


 偵察隊長は、望遠鏡で確認する。


 なにやら提灯(ちょうちん)のようなものが浮いているのが見えた。


「とにかく、あちらへ行ってみるぞ」


 偵察隊は馬を駆り、森林に向かった。


 このとき不思議な光を見つけたのは、この一隊だけではなかった。他の偵察隊も見つけており、いずれの部隊も確認のため、森林に向かう。


 もちろんフミト皇太子たちも馬を駆り、ハナ皇姫とクリーの探索に出ていたので、不思議な光を見つけていた。


「あれは、わが一族に伝わる“コンミンデン”という連絡手段です」


 アルキンが言った。


「ということは、あちらの方向に妹と軍師殿がいるというわけか?」


「その可能性が高いと思われます」


「よし。では、行こう」


 フミト皇太子の率いる騎兵隊は、不思議な光の方向に急行する。


 森林の近くで、いくつかの偵察隊と遭遇(そうぐう)し、合流した。


「この近くには、なにかあるのか?」


 フミト皇太子が聞くと、偵察隊長のひとりが答える。


「地図によりますと、林の中に兵器工場の跡がございます」


「ならば、そちらに向かってみるぞ。――全軍、隊列を組め」


 フミト皇太子の指揮のもと、全軍が隊列を組み直し、森林に駆けこんでいく。


 まもなく工場跡が見えてきた。無人のはずなのに明かりが(とも)っている。だれかいるようだ。


 フミト皇太子たちは、下馬して小銃をかまえる。突入部隊と待機部隊に分かれ、待機部隊は工場跡を包囲した。


「突入っ!」


 フミト皇太子の号令一下(ごうれいいっか)、突入部隊がすべての出入口からドアを蹴破(けやぶ)り、一斉に突入していった。


 その後は、あっけなかった。


 テロリストたちはあわてて反撃したが、多勢(たぜい)無勢(ぶぜい)だ。勝てるわけもない。あっけなく制圧された。


 (とら)われていた臣民たちも無事に保護される。


 もちろんハナ皇姫とクリーも救出された。


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