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暗中模策

主人公が未成年だとは書いてませんが、一応・・・未成年者の飲酒は法律で禁止されています

・・・とか言っても環境次第ですけどねぇ、安全な水が簡単に手に入る日本での決まりごとです、日本に居る時は守りましょう

基本、禁酒なイスラム圏じゃ年齢関係無しにアウトですし、原理主義なんかのトコじゃ、罰も(鞭打ちとか)厳しいですしねぇ・・・

 無人島・・・帰りの手段がきちんと確保された上で、下準備をしての到着ならばちょっとした冒険気分を味わえるし、リゾート地ならば貸切で素晴らしい自然を楽しめる場所だが、遭難などのやむにやまれぬ状況でその場に追い込まれた人間にとってみれば絶望の同義語であろう。


 こんな所、しかも異世界らしいというダブルパンチを食らった俺はというと・・・・・・生まれて初めてビールかっくらっていい気分になって、全裸水泳を夜の海で行うという、後から考えると(海中や周囲にどんなヤツが居てもおかしくないしな)蒼褪めるしかない行動をかました挙句、真水のシャワーなんてものもない状況で、それでも物置に戻って眠った挙句、体のかゆさに目が覚めるという、なかなかに辛い、しかし間抜けな一日のスタートを決めていた。


 パンツ一丁の体の肩には、何故か砂まみれの肉片がこびりついていて、擦っても取れない。


 ・・・ってか、これ、最初にメッセージで装備するかどうかって聞いてきたよな?

 これが装備した状態ってこと?


 装備解除っていってもゲームみたいなステータス画面とかないし、見覚えの無い腕輪とか、それっぽいリアクションを起こしそうなものも無いし、どうすればいいんだ、これ?


 「装備解除!」


 ・・・やっぱダメだよな。

 

 なんかヘルプとか無いの?


 重量無視のアイテムボックスとかあれば移動とかも楽になるのに・・・。


 変なメッセージの紙でもいいよ、なんかリアクションくれよ!


 


 仕方ないので俺は肉片を貼り付けたまま、体にこびりついた砂を払うと服を着た。


 ミネラルウォーターで体流すかなんかしようかとも思ったが、飲める水の範疇って体流せる水の範疇より狭いし、で諦めたのだ。



 まあ、これで今日の目標は決まったな、水源の確保、これっきゃないだろ。

 これまで歩いた範囲の中で川やそれに類するものは無かったとは言え、これだけ植物が繁茂しているんだ、きっとある筈。


 方向性は2つ、昨日の海岸沿いの捜索を更に続けるか、これまでとは逆に内陸部に足を向けるかだ。


 あのヘンテコな地図が正しいものだとするとこの島はそれなりに広い。

 物置に戻らず、その場で眠れる様な手段なりなんなりを見つけない限り海岸線の踏破は難しいだろう。


 それに昨日歩いた範囲ですら結構時間がかかっているのだ、そこまで辿り着くのに時間がかかり、更にその先とか言ってもどれだけ時間がかかるか見通しすら立たない。


 物置、及びその中身をかついで持っていくというのも難しいのだから、ここからそれほど移動しない範囲で必要なものを見つけるのが理想だ。


 という訳で、俺は前日の装備-刈払機という装備で物置から更に内陸部へと足を進めることにした。



 ◆

 ◆




 森の中の比較的歩きやすい所を、それでも一定の方向に進んだ俺の目の前に姿を現したのは、海岸を西に進んだ時に行く手を遮ったトコとつながってるんだろうなあ、っていう切り立った山肌とそこにぽっかりと穴を開けた洞窟(?)だった。


 ここまで、途中で遭遇したのは例の「そいつ」と木に人間に嫌にそっくりな手でぶら下がって、ふんどしに良く似たひらひらとしたものをこちらに伸ばしてくる「あいつ」、それにまるで木の蔓の様に木々の間に伸びていて、どこが端なのか全く分からない「どいつ?」だった。


 あの歯の付いた植物も出てきたがモンスター扱いでは無いらしく、倒してもメッセージも経験値も入らなかった。

 他の「そいつ」や「あいつ」や「どいつ?」は、倒す(ってよりジャマだから排除しただけの超弱だったが・・・なにせ「どいつ?」なんて普通の蔓と排除するまで全く区別が付かないのだから)とメッセージの紙が降って来たのに植物は降って来なかったのだから、システム(?)的にはその辺の木と変わらない存在なのだろう。


 「あいつ」のドロップは「あいつのふんどし」、「どいつ?」のドロップは「どいつ?の縄」、共に装備品と主張している。

 肉の時と同じに「装備しますか?」と紙が降って来た。


 ドロップは常にある訳ではないらしく、法則性も全く無かったが、物置からわずか2時間弱のこれまでの道のりで、時間にしてはかなりの数に遭遇した為、レベルも3つ上がった。


 HPはなんだかんだで最初の倍近く、力と素早さも「上がった」と実感出来る程度になっている。

 魔法も『かんしゃく玉(ほとんど現実のかんしゃく玉と同じ様な音と多少の火花が出る玉を投げられる)』、『コンパス(方向が分かる)』を覚えた。

 有り難い事ではあるが、なんで上がってるのか良く分からないのが不安だ。

 この調子で上がっていけば、その内物置を背負って歩けるレベルになるだろうが、そうした恩恵に慣れてから唐突に失われるとかなり厳しいだろう。

 訳の分からない状況で手にしたものは、突然失われる可能性がある。


 さて、装備の選択とかしてない筈なんだが「あいつのふんどし」も「どいつ?の縄」も何故か俺に装備されている。

 ふんどしは腰に、なわは右手に装備されているんだが、俺自身の肉と溶け合ったみたいになっていて「これって装備じゃなくて寄生だろ!?」と返事も返ってこないシステムに抗議の声を上げてしまった。


 というのも、この「装備」経験値と共に成長するのだ。


 最初に肩に貼りついた「そいつの肉」は徐々に侵食面積を増やしている。

 今では背中を回り込んで両肩をまるでプロテクター(なんかカッコいいって? 現実逃避だよ!)の様に覆っている。

 硬くはないんだが、俺の筋肉とは別の弾力で衝撃を吸収してる所からプロテクターっぽいものと認識してる。

 「あいつのふんどし」は外気に触れたがる性質があるのか、紐部分にあたる箇所が俺の腰にベルトの様に巻きついている他は外にヒラヒラと漂っているが、オートガードなのか、まるで牛の尻尾の様に蚊っぽい虫を(森の中に入り込んでく内に纏わり付かれる様になった)ペシペシと叩いている。

 これも最初は短かったものが、少しずつ大きくなってきており、伸縮性も向上している様だ。

 恐れていた股間への侵食は無いのには心底ほっとした。


 「どいつ?の縄」はこの望まぬ装備品の中では気に入っている部類に入る。右手の掌側の付け根から生えていて、自分の意思で伸び縮みし鞭やロープの様に使えるっぽい。まあ主武器のスコップが強力なので武装としては余り意味が無いが・・・。


 エロゲ世界なら触手プレイ用装備だろうが、エロスなどエロ本しか無いこの状況では純粋に補助武装兼便利アイテムだろう。触覚は感じるものの痛覚は無いみたいでペシペシとその辺の木を叩いても痛くない。

 「その内成長して空間機動に使えないかな?」とちょっとワクテカしている。


 ただ、なんだろう・・・この調子で装備解除の手段も見つけていない(最悪、装備解除の存在自体が無い可能性すらある)のに、どんどん装備と言う名の寄生をされまくっていくと、俺が人間とは呼べない存在になっていってしまって、元の世界に戻る手段を見つけても帰れないなんて事になるのではないだろうか?

 「ウル○ラマン」に出てきたジャ○ラの悲劇が他人事ではない今の俺である。


 

 さて、現実に戻ろう。

 目の前の洞窟、ジュブナイルなら「海賊のお宝」、漂流ものなら「大型動物の巣穴」、ファンタジーなら「モンスターの巣穴」なんだが、この場合、どれが一番近いのだろうか?


 俺としては何も居なくて何も無い天然の洞窟(出来れば湧き水有り)が理想なんだが、この世界はヌルくはあるものの甘くは無い(モンスターこそ弱く、強い猛獣なんかも居ない代わりに、探していた水は全く見つからず、期待していた木の実や果物も無い)。


 それにだ・・・変な紙のメッセージとか考えると、周囲の草や木が押しつぶされたり傷つけられたりしていないという、大型の危険なもの不在のサインすら怪しく感じるのは考えすぎだろうか?


 まあ、考えていても仕方ない。

 俺は懐中電灯を取り出すと洞窟へと足を踏み入れた。




 ◆

 ◆




 「ヒャッハー、水だぁ!」と駆け出した俺は目に見えぬ壁に阻まれた。





 洞窟の中は、光源が全く無いにも関わらずそれなりに周囲が見える不思議時空だったが、これまでの不可思議体験でその辺が麻痺していた俺は大して気にもせずに奥へと足を進めた。

 

 床は多少凸凹してものの、歩き辛いというレベルには達しておらず、さして苦労もせずに辿り着いたそこには「如何にも」といった扉と「なんか久々にまともっぽいものを見たなぁ」と思いたくなる綺麗な女神か精霊の石像が持つ瓶から水が溢れ出る、噴水というかファンタジー的な泉というか、そんなものがあった。


 思わず駆け寄りたくなっても無理はないだろう?

 

 後から考えれば怪しさ大爆発だが、その時の俺の頭には「まともそうな水」しかなかったのだから・・・。


 そうして行く手を阻まれた俺の前に降って来たのはまたしても紙。


 「貢物を捧げよ、さらば道は開かれん・・・要はなんか寄越せや、ゴルァ! そうすりゃ先に進めるようにしてやんよ! ってこった!」


 相変らず腹を立たせる事を狙っているとしか思えないメッセージである。 

 まあ、あの石像の女神だか精霊だかに捧げると考えればなんとか押さえ込める程度だ。


 さて、何を捧げるか?


 手持ちのモノは必要だと思われるものだ。

 物置に戻って何か取ってくる事になる。


 エロ本や漫画は流石にダメだろう。


 灯油や燃料も補充手段が無い状況で、効果があるか分からないトコで使いたく無い。


 ビールかジュース。


 お神酒とかあるし、ビールかな?

 昨日、飲んで醜態さらしたし、俺には酒は合わないみたいだし・・・。






 ビールを6本、それに水が飲める様なら汲ませて貰おうと空き瓶を4本荷物に追加したが、増えた力の関係かそれほど重く無かった。


 道中さらにレベルアップして『暗視(初めて役に立ちそう&ファンタジーっぽいものが手に入った)』の魔法を手に入れた俺は、洞窟を進んで見えない壁の前に着くとビールを6本床に置き、スススっと壁に向かって押していくとその壁のあるらしき辺りでビールが消えて行った。


 「貢物は捧げられた、『無人の迷宮』の攻略へ乗り出すが良い!」


 降って来た紙はこれまで以上に偉そうで・・・だが、俺は目の前で開いていく無意味に荘厳な扉を前に「水が欲しかっただけなんだけどなぁ・・・ダンジョン攻略とかマジ勘弁!」とうなだれていた。




長期不在の為、間が開きました

申し訳ありませんでした^^;

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