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廃ゲーマー、学校に通う。

偶数日の21:00付近を目安として更新していきます。

 鳥塚綾人は廃ゲーマーである。


 高校3年生でありながら学校にはほとんど通わず、日夜ゲームに入り浸っては数々のゲームでサーバーランキング一桁に到達している彼は、界隈で知らない人はいない超がつくほどの有名ゲーマーであり、ただの引きこもりとは違う圧倒的なプレイスキルと長時間作業を続けても少しもブレない集中力から、その正体は誰なのかという考察スレが立つほどなのである。もっとも、まさか学生だとは思われていないが。


 そんな俺は今、学校に向かっていた。寝る間も惜しんでゲームをする俺が一体何故学校なんかに通っているのかというと、


「どうしてわざわざ学校で話をしなきゃならんのだ、、、」


要するに呼び出されたから、という至極単純な理由であった。一応補足しておくと、俺は廃ゲーマーであって引きこもりではない。学校に行くとゲームをするための時間を確保するのが難しくなるから登校していないだけで、フットワークは軽いし、人とも普通に話せるし、来いと言われたら嫌な顔ひとつせずに五分前には待ち合わせ場所で待ってるくらいには人当たりがいいのである。そんな俺でも待ち合わせ場所が学校というのには、苦虫を噛み潰したようなしかめっつらになる。


 なんとか表情を戻すと、自分のクラスの扉の前まで来ていた……ん?俺、3組で合ってたよな?いや、違う。確か自分が3組だったのは2年生の頃の話だ。あれ?そういえば3年生になってから今日が初めての登校だったか、どうしよう…自分が何組なのかわからん。というか、ここは2年生のクラス前だ。危ない危ない、とりあえず後輩にバレる前にさっさと3年生のフロアまではさっさと上がってしまうか。

 出鼻を挫かれたような気持ちになりなががら、3階から4階へと階段を上っていく。さて、どうや

って自分のクラスを確認しようかと考えていたが、直後その必要がなくなった。


「いい加減認めなさいっ!ヘブカタで魂魄ぶっ放すのがアンドラドラ周回の結論でしょう?他の武器にこのDPSは出せない。メイジに八つ当たりするのは今日で最後にしてもらいます。」

「言ってろ、この劣等職業使い!何を言われようが何を持ち出されようが、古今東西どんなゲームでもマルチならともかくソロでメイジが周回効率最高はありえねぇんだよっ!大体、俺のチャートと26Fしか討伐速度変わらねぇじゃねぇか。」


 とりあえず呼び出した奴ら(騒がしい奴ら)のもとへ向かいながら、さてどうしたもんかと考えていると、肩をポンポンとたたかれ声がかかる。


「鳥塚くん、お久しぶり。早速で申し訳ないんだけど、」

「止めてこい、ってことだろ?分かってるよ。とりあえず聞きたいことはたくさんあるけどあれを止めてくるわ。」


 俺が教室に入っても一向に気づく気配のないあいつらは、このクラスで一つだけ引き出しが空っぽの机をバンバン叩きながらギャーギャーと騒いでる。十中八九その机が俺の机だろう。


「私が劣等職業使いならあなたは劣等ゲーマーですね(笑)。今のあなたより私の方がアンドラドラを速く倒せる、という事実を棚に上げて机上の空論で他人のプレイスタイルを批判するとか、あなたは自分のことを哀れだとは思わないんですか?」

「てめぇこそ、哀れでしょうがねぇんじゃねぇの?ぼっちメイジさん(笑)。」

「でも、月照(つきてら)のランキング1位はソロメイジだろ?」

「そうよ!いい加g……」


 ようやく俺の存在に気づいたらしい。


「おい陽昇(ひのぼり)、人を呼びつけておいて来たことに気づかないのはひどいんじゃないか?」

「いや、違うんですよ、師匠。小鳥遊(たかなし)くんがいきなり突っかかってきたせいであって、」

「俺のせいかよ!んなこといわれても俺は師匠が来るのが今日って知らなかったんだからしょうがねぇだろ。今日師匠来るよ、って言ってくれなかった陽昇も悪いだろ。」

「あー、とりあえず用件は昼休みに聞くから、それまでに二人とも頭を冷やせ。」


  〜4時間後〜


「朝は騒いで悪かったよ、白南風(しらはえ)。」

「ごめんね、京ちゃん。」


 昼休みになり俺、小鳥遊、陽昇と、陽昇の親友である白南風の4人が俺の机に集まっていた。白南風に対しては二人揃って謝罪をするのに俺に対しては一言もないというのは舐められているのだろうか。


「で、わざわざ俺を学校に呼び出したのは別に喧嘩の仲裁をしてもらうためじゃないんだろ?」

「それは、俺もよく知らないんだよね。鳥塚を学校に呼び出したいから家の住所教えろ、としか聞いてなかったからさ。」

 すごく雑に個人情報が売られていたことが判明したところで、陽昇が口を開いた。

「それなんだけど、実は夏に幕張で開催されるWGNCの優待チケットを2枚貰ったんだよね。」

「さっきは舐めたこといってすいませんでした。」


 正式名称を、『World Game News Championship』というそのイベントは、ゲームに関する様々な新情報を発信し、それがどれだけ凄いものかを競う、まあ簡単にいえばそんな感じのイベントである。景品が豪華なのもあって数多くのゲーム会社が参加し、新作発表はもちろん、裏設定、秘蔵資料、隠しアイテムやコマンドの公開など、もはやなんでもありなその大会はゲーマーにとって行かないこと自体がプレミだといわれるレベルのイベントであり、世界中からゲーマーが詰めかけ大変なことになるので、優待チケットを持っていなければほとんど何もすることができずに帰宅することになるのである。


 その優待チケットを2枚持っている陽昇が俺を呼び出して話したいこととはつまり、

「あー、俺もだ。親父から2枚貰ってる。」

 陽昇の聞きたいことというのは、俺も優待チケットを持っているのかどうかということだ。決して小鳥遊をハブって二人で行こうという相談ではないだろう、多分。俺の親父はゲーム会社のプロデューサーなので当然持っている。


「じゃあ4枚だね!私と鳥塚くんと小鳥遊と京ちゃんで4人で行こうよ。」

「おいなんで呼び捨てなんだ」

「え!?なんで私が!?」


 白南風から当然ともいえる疑問の声が上がる。それに対して陽昇は、


「いいじゃん、せっかくだしもう二度と行けないかもしれないんだよ?高校最後の夏、世界で一番大きなゲームのイベントに行きたい。だめ?」

「い、いや。だって私たち高3だし、受験も控えているのに夏休みにゲームのイベントなんて…」

「なぁ、小鳥遊。おまえ大学受験すんの?」

「いや?しない予定ではある。鳥塚、は聞くまでもないか。しないよな、絶対。陽昇は?陽昇は受験するんじゃないの?」

「お母さんは、受験しなさぁぁい、っていうけどお父さんはむしろ受験なんかしなくていいっていう感じだから、多分受験しないかな。」

「まあ、俺らはこんなだけど白南風には白南風の人生があるからな。」

「……私も行く。」

「陽昇は親友の受験を応援………なんて?」


 なんか今幻聴が聞こえた気がしたので一応聞き返すと、顔を真っ赤にしながら鋭い目で睨みつけてくる白南風と目が合った。


「い、いいでしょっ!ちょっと気になるから一緒に行きたい、っていうそれだけよ。なんか文句ある?」

「いや、別に文句とかはないけど、お前ゲームとかしたことあんの?」

「あ、あるわよ!ちょっとくらい。」

「やったー!ありがとう京ちゃん!」

 なんだかんだで陽昇に甘い白南風。…いや、意外と白南風もゲームやるのか?


 突然だった。最初に気づいたのは小鳥遊だった。

「ん?」

 教室の中央がほんのり明るい…ようなそうでないような。じーっと見ても、気のせいか、と思ってしまう程度でしか違わないそれを、しかし溢れて止まらない不穏な予感から視線を外すことができないでいた。

 次いで、鳥塚が警戒心丸出しで教室の中央を注視するという異常行動をとっている小鳥遊に気づき、その視線の先を追ってそれに気づく。その瞬間だった。

 視界が一面真っ白になる。その強烈な光の中で、体中から力が抜けていく感覚に死を覚悟して…

「鳥塚ぁ!」

 視界の端で微かに小鳥遊のこちらに伸ばした手が見えた。しかしその手が届くことはなく、あまりに咄嗟のことだったので小鳥遊に手を伸ばすのも間に合わず、そこで意識が途絶えた。

 教室を満たす光がすっかり弱まったころ、その教室に残されたのは小鳥遊ただ一人であった。


 その日、和島高校3年2組の生徒32名は行方不明となった。

なんか色々端折りすぎた気がしないでもないですが、なんとか転移するまでは一話で切り上げられました。

転移するまでの学校での関係等は考えてはいますが追々ということで。


鳥塚綾人:廃ゲーマー

陽昇らい:廃ゲーマー

小鳥遊翔:廃ゲーマー、2組ではなく3組在籍のため日本に置いて行かれた

白南風京子:剣道部員、実はゲームも少しやっていたりやっていなかったり?


余談ですが、らいという名前は作業ゲー大好き陽昇パパが、自分の好きなゲームの好きなキャラの名前をもじってつけたとか。イッタイダレナンダ(棒)。

ちなみにゆみと迷ったらしい。

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