一話 悪魔が復活するみたいです
初投稿です、拙い部分もありますがご容赦ください。
のんびりと続いて行く予定ですのでたまに思い出したら覗き見て頂けると幸いです。
月明かりに照らされた真夜中に、ボロボロの和服を纏った、自分より遥かに背の高い傷だらけの男が神々しい光を纏い、膝をつき、こちらを見つめていた。
全身に刻まれた傷が、その壮絶な戦いを物語っている。だというのに、男の顔にはそれを感じさせないほど穏やかな笑みが浮かんでいた。
「俺はいつだってお前の側にいる。御守り代わりだ。昔から欲しがっていただろう?」
男は腰に差していた、白い刀身の刀を静かに差し出す。
「さぁ……名残惜しいが、そろそろ時間だ。それはきっと、お前がピンチになった時に役に立つはずだ」
それだけを言い残すと、男は何も語らず、ただ優しく笑った。
そして、目も眩むような光に包まれながら、何かへ語りかけるように口を開く。
しかし、その言葉は何かに遮られ、聞き取ることはできない。
ただ――その表情だけは、どこか寂しげだった。
話を終えた瞬間、男の身体は光の中へ吸い込まれるように消えていく。
視界を埋め尽くす純白の光。
それを切り裂くように、耳障りな金属音が鳴り響いた。
重い瞼はなかなか開かない。
苛立ったように音のする方向へ手を振り下ろすと、ようやく不快な金属音は止まった。
ぼんやりとした視界の中、天井からぶら下がった蛍光灯を見上げ、ぽつりと呟く。
「あ〜ぁ……またこの夢か」
⸻
狭く古びたアパートの一室。
部屋の真ん中に敷かれた布団の上で、ぼんやりと天井を眺める、なんとも冴えない青年。
それがこの俺――成神日向、二十一歳。
フリーター、友達なし、彼女なし、親もなし。
救いようのない三拍子が揃った男である。
渋々身体を起こし、大きく伸びをして欠伸を一つ。
そのまま洗面台へ向かい、冷たい水を顔へ何度も打ちつける。
「しっかし……最近、あの変な夢ばっか見るなぁ……」
濡れた顔を鏡越しに見ながら、ため息混じりに呟く。
「医者にでも診てもらった方がいいんだろうか〜? いや、医者にかかる金もないなぁ……」
少し考え込んだ後、小さく付け加える。
「……多分、あれ親父だよな」
あの夢の男は、俺の父親――成神斬武。
……とは言っても、親父が居なくなったのは随分昔だ。
顔だってもう曖昧で、本当にあれが親父なのか確証なんてない。
考えても答えは出ない。
そう思い、気を紛らわせるようにテレビの電源を入れた。
『さぁ始まりました! とんでも鑑定隊! 前回は江戸時代の名刀が、なんと五千万円の価値を――』
「……」
日向の視線が、部屋の隅に立てかけられた白い刀へ向く。
「……あれ、いくらすんだろ」
少し考え、ニヤリと笑った。
「姉貴に売りつけてみるか〜?」
しかし、脳裏に先ほどの夢がよぎる。
『俺はいつだってお前の側にいる』
「……いやぁ、さすがに……」
そこでふと、もう一つの言葉を思い出した。
『お前がピンチになった時に役に立つはずだ』
「……うん」
日向は深く頷く。
「きっと、こうなることを見越して俺に寄越したんだろう。優しいなぁ、親父は!」
そうして、部屋着から急いで着替えると、刀を背負い、勢いよく外へ飛び出した。
――数分後。
「だからさぁ、困った時に役立てろって親父も言ってたんだよ!」
ゴンッ!
「いっっってぇ!?」
鈍い音と共に頭を押さえる。
「なにすんだよ、姉貴〜!」
場所は変わり、古びた雑居ビルの一室。
そこは、怪しげな何でも屋の事務所だった。
「お前なぁ……」
呆れた声を漏らす女性。
指には煙草。
身体には隙のないスーツ。
日向よりも背の高いその女性の胸元には、『三神刻』と書かれた名札が付いている。
「それ、斬武さんの形見だろ?」
煙草を口元へ運びながら、鋭い視線を向ける。
「それを何だ? 親戚でもない女に売りつけようってのか?」
「えぇ〜!? いいじゃんかよ〜! ほぼ家族みたいなもんじゃん!」
刻は大きくため息をつき、長い髪を揺らしながら首を振った。
「そもそも、その刀はあまり外に出すと――」
その瞬間。
ズン――。
建物全体が沈み込むような衝撃に包まれた。
地震とは明らかに違う。
続けて、二度目の激しい振動が襲う。
「なっ……地震……なのか、これ……? 姉貴……?」
日向が刻を見る。
だが、その顔は今まで見たことがないほど険しかった。
肌を刺すような殺気。
逆立つ髪。
無言のまま、事務所の扉の近くに立てかけてあった長い袋を掴む。
中から現れたのは、一振りの槍。
「チッ……もう使いたくなかったってのに」
低く吐き捨てる。
日向はただ困惑することしかできない。
「お前はここで、その刀を守っていろ」
刻は背を向けたまま言う。
「奴らの手に渡れば、大変なことになる」
「な……なんなんだよ……奴らって……」
返事はない。
刻はそのまま、事務所の扉を蹴り開けて外へ出た。
その瞬間。
――ガシャァン!!
窓ガラスが二枚、同時に砕け散る。
割れた窓の向こうから、人間とは到底思えない、禍々しい悪意に満ちた声が響いた。
「ギャハハハハ! 久々の地上界じゃが、忌まわしき気も薄くなっておるのう!」
日向は恐る恐る窓の外を見る。
そこにいた。
本能が、理解する。
――悪魔だ、と。
一体は巨大な翼を持ち、頭はフクロウのように歪んだ異形。
もう一体は子供の姿をしながら、両腕は双頭の龍となり、龍の尻尾と翼が生えていた。
子供の姿をした悪魔が口を開く。
「任務に集中しろ、アンドラス。耳障りな声をさらに荒げるな」
それを聞いたフクロウの異形――アンドラスは、不機嫌そうに笑った。
「まあ良いではないか、ウァラク。すぐ近くに、あの忌まわしき刀の気配がある」
その目が、事務所へ向く。
「それを奪い去れば、この地上に二度と上がることもないだろう? 少しくらい、はしゃいだって構わんだろう!」
「忌まわしき刀……」
日向は、自分の手にある白い刀を見る。
「っ……! 奴らの狙いは……これなのか……!?」
慌てて事務所の奥へ逃げようと背を向ける。
――その瞬間。
肌が焼けるような邪悪な気配が、すぐ背後に現れた。
「ほうら、見つけたぞ!」
巨大な梟の翼が、日向の頭を叩き潰そうと振り下ろされる。
――バキィン!!
鋭い金属音。
日向は腰を抜かしたまま、震える目で前を見る。
そこには火花を散らしながら翼を受け止める、一振りの槍。
そして、それを握る人物。
三神刻だった。
新出のメインキャラクターは後書きに詳細を置いていこうと思います
成神日向
21歳フリーター
お気楽人間で人脈がびっくりするほどありません。
容姿は少し細身で父親譲りの白髪、髪色については本人は割とコンプレックスらしく、何回か染めては見たが手間がかかりすぎて割り切ってしまったよう。
三神刻
年齢不詳何でも屋
基本スーツ姿、かなり若く見え、短髪で身なりがちゃんとしている。
重度のヘビースモーカーで事務所の灰皿には大量の吸い殻が残っています。
言葉通りの何でも屋で配管工事からペット探しまで何故か何でもできるみたいです。
なんでも日向の父である斬武には恩があるようで、日向に世話を焼いてやってるのはそのせいだそう。
成神斬武
日向の父親、かれこれ17年近く姿を消しており、死亡したと考えられている。
日向に白い刀を遺して消えてしまった。
刻とは日向が小さい頃からの付き合いらしいが、当の刻はその話を日向にしたがらない。
一話いかがだったでしょうか、次回以降も応援していただけると喜びます




