三日天下
自分はセンスや才能がない。それでも好きなってしまったから努力し続けた。1年生の彼が来た日。自分が弱者だと自覚した。
部長が学祭で彼と手合わせして「彼はかなり強い」 と絶賛していた。ハンドボール部に入ってる彼が兼部という形で入部してくれた。初日で部長、副部長、私に圧勝した。札幌5位を獲ったぐらいで慢心していた自分が恥ずかしい。当時は私が部内でも最強格だったが、彼には手も足も出なかった。培ってきた経験、才能、勝負勘。何一つ勝っていなかった。1年しかやってなかったら勝てない。そう言ってしまったらこれ以上高みに行けない気がした。今でも覚えている。壁は無くならないと。
月日は流れ、私たちは三年生になった。目前に迫っている全道大会。団体メンバーは3人。私は団体に入れると思っていた。部長には勝てるし、副部長は圧勝。だが、副部長は強くなった。三連敗、それが意味するのは個人に行くこと。全道大会の個人は魔境。後輩ですら勝てない奴らがうじゃうじゃいる。全国を目指すなら団体。私は言い訳ができなかった。副部長も私と同じく未経験から始めていた。一時期は私が彼に圧勝していた。故に彼を「弱者」だと侮った。彼は強い。新しい戦法で部長と私に勝ち、さらには後輩にも一回勝った。あぁ、惨めだな。慢心する時間があるなら努力すればよかった。
お前は何だ。弱者だよ。敗北から学びを得る諦めの悪い弱者だよ。副部長に勝つ。副部長との戦いを繰り返す程に負けは遠のき、勝ちは近づく。強者の対義語は弱者。いや、弱者とは強者の類義語。「強さ」という指標で評価した二つの言葉は同一直線上にある。やっと追いついた。俺の憧れたもう一人の強者に。
全道の団体メンバーは部長と後輩、そして私か副部長。正式なメンバーを決める戦いの前に副部長は団体メンバーを辞退した。私は副部長とは互角ぐらいだったから正直ホッとした。だが、彼には申し訳なかった。直前の春季大会で部長、副部長、私の3人で優勝した。だが、私と副部長の負けた相手は勝てる相手だった。本番に弱かった私たちは敗北によって全道大会で負けるのを極端に怖がった。それ故か副部長は私に託してくれた。もちろん、私も本番は怖い。だが、栄誉が欲しい。誇れる自分になりたい。その一心こそが私の心を守ってくれた。
皐月時。季節は移ろい。春と夏の境目に。慣れ親しんだ井戸を去り、大志抱いて大井戸へ。為せば成る、為さねば成らね何事も。大海へ行くは我が蛙。
え〜!?波乱万丈のお通夜祭り!?全道大会で勝つのは誰だ〜?!
次回「大井戸の蛙大海に行く」




