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12.おっさんは再び助けを呼ぶ。

 スーパーガイガーは盾に似た外装で護られた両腕を振り上げ、ポニーテールの式霊(ファルーナ)の左右に振り下ろした。そしてその両腕をそのまま開いた。その一撃で、左右から式霊(ファルーナ)の残った身体を削り取ろうとしていた触手たちが大きく弾かれた。驚くほどのパワーだった。必死に戦ってなお押されていた式霊(ファルーナ)が信じられない、という表情をした。

 一本の触手にスーパーガイガーは大股で歩み寄ると、両腕で抱え込み、そのまま一気に絞り上げた。触手が膨れあがり破裂した。体液で汚れたスーパーガイガーに襲いかかってきた残った一本を両手でつかむと、こちらも握りつぶした。


「な、なんだ……これは……これはいったい……」


 ポニーテールの式霊(ファルーナ)が呆然と言った。

 箸口は聞いていなかった。地面に手を着け、新たな情報を脳内で構築しそれを地面にインストールしていたためだった。すぐにそれが構築された。ガイガーソード。スーパーガイガーの主武装であり、加速用のジェットが付いた巨大な剣である。今回構築したのは三回目でトリガーに安全装置を追加したマイナーチェンジ版だった。

 できあがったガイガーソードをスーパーガイガーは当たり前の様に受け取り、長さが三メートルに及ぶ長大なそれを右手だけで軽々と振るった。ぶぉんと風が吹いた。

 二体の触手がやられたことに触手たちは気づいたようだった。強敵と認識したのだろう。別の式霊(ファルーナ)と戦っていた触手のうち三本が一斉に式霊(ファルーナ)のことを無視してスーパーガイガーに向かってきた。

 そのすべてがスーパーガイガーの機械の身体に触れる前に両断された。ガイガーソードは驚くほどの切れ味を見せた。

 だが、触手もすぐに対応した。一対一では敵わないと判断したのか新たに亀裂から入り込んできた触手同士が複数本捻れながら上に向かって一体化した。

 太さは数倍になった。

 それが鎌首を持ち上げ数倍の高さからスーパーガイガーを見下ろした。凄まじい迫力だった。


「魔○柱みたいだ……」


 とあるスマホゲームで見た敵役に似ていて、思わず口から出た。

 その言葉に反応したように触手が捻れながらスーパーガイガー目指して液体のように一気に流れ落ちた。

 スーパーガイガーはガイガーソードを振るった。だがそれは大波に棒一本で抗うように無力だった。剣は触手を両断したが、それよりも大量の触手群がスーパーガイガーの頭上に落ちかかり、そのままスーパーガイガーを飲み込み、地面にぶつかって轟音を立てながら飛び散った。

 箸口は悲鳴を上げた。

 スーパーガイガーを完全に覆い隠す量の触手が、スーパーガイガーに取り付き蠢いていた。おぞましい光景だった。

 箸口は急いで地面に手を着けた。

 なんとしてもスーパーガイガー2号を救いたかった。自分が産み出したメカがひどい目に遭うのがとてつもなく辛かった。箸口に子供はいなかったが、子供がいたらこんな気持ちなのだろうと思った。

 2号を助けるために呼ぶ存在として箸口が最初に思いついたのはスーパーガイガー1号だった。

 そもそも1号は2号とはまったく異なる設計思想で作られたメカだった。

 2号はスーパーロボットの皮を被ったリアルロボットの思想で作った。一方、1号はよりスーパーロボットに近い、というよりもスーパーロボットそのものだった。

 2号がガソリンエンジンを搭載することを前提にして電気によって収縮する金属とブースト用の流体シリンダーを人工筋肉に見立てて搭載するというように内部構造もしっかりとデザインされているのに対して、1号は関節こそあるものの内部構造は一切不明、ゲッター○ボなみの未知のエネルギーと未知の金属と未知の設計によって作られていた。1号の左胸には心臓に似たガイガーハートという謎の動力機関さえあった。謎の動力機関であるからその動力ももちろん未知のエネルギーだった。

 スーパーガイガー1号には顔があり、口もあった。その口は戦闘時にはマスクで覆われるのだが、そもそもその口は「スーパーガイガー!!」と叫ぶ以外の機能は持っていなかった。なんでそんな意味不明なことになっているのかというと、メインのデザインが箸口が小学生の頃作り上げたものだからだった。だからなんの理屈も通ってなかった。3Dプリンターでプリントすることなど考えてもいなかった。そもそも設計上のサイズも二十メートルと超でかい。とてもプリントすることは出来ないし、プリントしたところで稼働も不可能だから意味がなかった。

 そんなスーパーガイガー1号だが、呼び出せば動くという確信が箸口にはなぜかわからないがあった。

 だから躊躇はしなかった。またスーパーガイガー2号の動きが鈍っていたので迷うだけの余裕もなかった。

 箸口はスーパーガイガー1号のデザインを細部に至るまで脳裏に思い浮かべた。

 次の瞬間、箸口は地面に触れた体勢のまま、ごそっと何かを吸い取られた感覚を味わい、腰砕けになりそうになったのをなんとか耐えた。

 顔を上げると目の前にはスーパーガイガー1号の太い脚があった。

 スーパーガイガー1号は叫んだ。


「スーパーガイガー!!!!!!」


 それしか話せないのだからそう叫んだのはある意味当たり前だった。

 

次回更新は今日か明日の予定です。

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