第10話 クラス対抗戦のその後
勝手ながら申し訳ございません。次の章の準備の為に1週間更新を休止します。(17/06/01)
「ねぇ!!クーちゃんあの翼といい、詠唱無しといいどういうことなの!?」
「あー、うん…ちょっと静かにして…」
「クレア…」
「詠唱無しについてはアッ君もだからね!!」
二人を囲むように双子を中心にDクラスのメンバーが囲う。
クラス対抗戦から四日が経つ。
クレアは魔力の消費、内臓に受けたダメージの回復によりその三日間、一度も目を覚まさずそして今日で四日目にようやく目を覚ますまでの回復をするもその身は先に魔力の回復を最優先にした為か体はまだ全快までとはいわなかった。
その為、この様に質問攻めのような形は傷に響く。
「そこまでにしなさい、二人とも。二人が喋れないでしょう」
ようやく助け舟を出したはレレスだった。
それに合わせる様に「そうです!!それにまだクーちゃんも昨日ようやく目が覚めたんですから!!」と双子よりも少し大きいニーアが二人を抱きしめる形で二人から引き離す。
「その、言いたくないなら言わなくてもいいけど…その…」
「テト先輩!!ここはビシッといわないと」
「そうそう、そうじゃないとこの三日間疑問を浮かべ続けた私達の身にもなってよ」
足をバタつかせるテーゼをニーアは「こ、こら!!大人しくするです!!」と全体重をかけ静止をさせようとする。
だが、一緒に抱き抑えられているグーテはそのニーアの立派な片胸がその背に押付けられその柔らかな感触に顔を赤面させ違う意味でもがけば「グーテも大人しくするです!!」とさらにその柔らかい感触が押付けられる。
はたから見ていたアルマは可哀想な者を見るような視線を向けるも助ける気はまったく無く動く気は無く視線は自然とその輪の中心であるクレアとアルマを向ける。
「で、質問を戻しますわ。とりあえず二人の種族を聞かせて下さいませ」
その回答を聞き逃さないように静まり返るその空間にクレアは一つタメ息を零す。
「…僕は人族と神族とのハーフ」
「俺は幻獣族」
その回答に驚愕するも、質問したレレスが先に我に戻り「それなら無詠唱での魔法の発動に納得するわ」と答え、その発言に他の者も納得する。
それもそのはずだろう、この世界で省略詠唱、無詠唱が出来るのは神族と幻獣族であった。
だが、一応はそれ以外の種族もまた幾数十年、幾百年、幾千年の修行をすればもしかすれば出来るだろう。
何せ、現にこの大陸に過去数人、それを成し遂げた者がいたのであった。
「その二人の種族は他言無用だ」
前の、黒板側の扉が音を立てて開きながら、現れたヴァールがそう答える。
「二人はアンシュみたいにまだ所属国家がない」
「所属国家?」
「何それ?ていうか何でアンシュが出てくるの?」
ヴァールの言葉に双子が首をかしげながら尋ねる。
クレアもまた、その話は聞いてなかった為に視線をヴァールから離す事はなかった。
「この大陸には他にも幻獣族や神族はいるが、公に種族をばらすような者はいない」
「そうでしょうね。バレれば他国に狙われてしまいますものね」
「あぁ、だが神族や幻獣族ならばここの大陸の軍一つぐらい一人で何とか対処できるだろうが、狙われ続ける日々は神経をすり減らす」
「じゃ、じゃぁ、何でアンシュはあんなにどうとうと?」
テトは恐る恐る質問をする。
「あぁ、あいつの家族は人族、エンビディア国に保護を申し立てて、実質上あいつはエンビディア国民なわけ。だから、アイツに何かあればエンビディア国の軍が動くわけさ」
その説明に、そんな仕組みが合ったのかとクレアは思う。
だからと言って、他の国に保護される気など毛頭無く、またそれはマーレも一緒であり、保護される気があるのならここ、中立都市であるラーネン都市ではなく他の二ヶ国に行っていたはずだ。
「もし他の者にばれたりしたら」
「どうなるの?」
「ばれたりすれば、三ヶ国が軍を放つだろうな」
「そうすればここの関係のない生徒、教師に被害が行くだろう」と最悪な事を言っているはずなのにその声音は先ほどと同じように冗談を言っているように聞こえたのであった。
「だから、こいつ等の事は他言無用だ」
「ん!?それなら、キャロルさんやマーレさんもですか!?」
ニーアはある事に気がついたかのように質問をする。
その言葉に「あー」と誰も突っついてこないだろうと思っていたのかその声音はめんどくさいと言わんばかりであった。
「キャロルは違う。キャロルはここに来たばかりの僕らに宿を貸してくれた人」
宿を貸してもらい、そのまま一緒に暮らし血は繋がってはいないが家族に似たような、アルスとはまた違う大切な人の一人である。
「まぁ、それはいいんだが、良くないんだか…」
先ほどとはうって変わってヴァールは頭を抱え出す。
「まぁ、今のところここには関係ないんだがさっきな職員室で聞いた話なんだがな…」
「もうエンビディア国のせいで頭が痛い」などと呟く。
「本当にどうしたの?」
「何か悪いことでも聞いたの?」
「あぁ、そうだな。もしかすればこっちにまで余波が来るだろうな…」
双子の言葉にヴァールはそう返す。
本当に何を聞いたのかとその場にいた者達は気になり、皆、聞き逃したくない為か口を閉ざす。
そしてようやく考えがまとまったのか、
「現状のエンビディア国とパシオン国の戦況を知っているか?」
その問いに、周りの者は首をかしげたり、不確かな回答を口にするもそれ以上を言うものはいなかったが、「…パシオン国の有利なはずだ」とアルマが答える。
「あぁ、その通り。エンビディア国とパシオン国の国境付近での抗戦はパシオン国が勝利し、そこからどんどんとエンビディア国に侵攻している」
「そこまでならば、私わたくしも入学する前に知っております」
「現状、エンビディア国は追い詰められていな、何を思ったのか国王様は最後の切り札を俺達がクラス対抗戦の最終日にやってくれたようでな」
その言葉に誰しもが口を開いて驚愕する。
「…勇者召喚」
クレアの言葉に周りの生徒の目が驚愕に見開かれ、自然とみんなの視線はヴァールへと集まる。
「あぁ、しかも今回の召喚は大当たりのようだ」
そう答えたヴェールは、先程職員室から聞いた話をDクラスのメンバーへと話し出す。
それから半年後、エンビディア国とパシオン国の戦争が大きく動いたのであった。
劣勢であったはずのエンビディア国は勇者召喚儀式によって召喚された勇者のおかげか侵略されていた土地を取り戻しそして再び、戦場は国境へと押し返したのであった。
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2019.10.04:本編修正・追加




