↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/7

7 溢れ出した心

ジータは十五歳になって貴族学校に通うようになった。


レナートはそれとなくジータの学園生活を探らせると、入学早々男子生徒から告白されたと知った。


そのときレナートは、自分の心にある嫉妬心を、はじめて感じた。ざわついた胸の奥が苦しい。


「駄目だ。ジータ、断ってくれ!」



その願いは叶えられた。


「告白? ことわりました。私には使命があるので恋は一生しません」


ジータの言葉にレナートはホッとしたが、同時に複雑な心境になった。



     ◇



レナート第一王子が椅子から降りてジータのもとにやって来た。


「ジータ、僕のお嫁さんは君しかいないよ。10年間見てきたんだ。楽しいときも悲しいときもいつもそばにいて支えてくれた。そんなジータを僕は愛してる」



──愛してる。



その言葉を聞いてジータは感極まった。



「僕の婚約者になってくれるね」

とてつもなく優しい声だった。


ジータは固まった。さまざまな思いが脳裏を駆け巡った。心の奥底に隠していた兄への《愛》が窮屈な箱から出ようとしていた。 


出ようとする心と、押し戻す心の葛藤。


バキバキと、その箱にヒビが入って、割れた。


《愛》が飛び出した。



「はい」



ジータはこっくりとうなずいた。顔を上げたジータは、晴れやかな笑顔を見せた。

 

レナート第一王子がジータを抱きしめた。


目を閉じたジータの目尻から、涙がひとしずく流れた。


ジータは嬉しさと恥ずかしさでこの場を逃げたくなったけど、レナートが背中に回した手はこれまで以上に力強かった。   



こうしてジータ王女はレナート第一王子の婚約者になった。






王の間の嵐が通り過ぎた。


メイドたちが掃除をしていると、王座のサイドテーブルには、ジータ王女が手渡した調査報告書が置かれたままだった。


それを新人のメイドが手にした。


(忘れ物だわ)


ふと中身が気になった。ジータ王女はローズとテレーザのどちらを選んだのだろうと。


周りをうかがいながら、そっとページを開いた。


「こら、何してる。さっさと掃除しなさい」

メイド長の叱責にメイドは背筋を伸ばした。


「はい、わかりました」

メイドは報告書をゴミ箱に捨てた。

慌てて掃除をし始めた。




最終ページがゴミ箱の中で開いた。そこに書いてある名前は、誰にも見られることがなかった。




お読みいただきありがとうございます。評価やブックマーク、ご感想をいただけるとうれしいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。